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12月27日──橋本徹のGood Mellows×Hamon Radioスペシャル・インタヴュー

2017年もありがとうございました。例年になくコンピを少ししか作ることができなかったのは残念でしたが、毎月楽しくやらせてもらっているdublab.jpでのsuburbia radio(アーカイヴ放送もぜひ)が始まったり、「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」や各種空間BGMのクライアント・ワークス、毎週のDJパーティーや去年からSONY(PlayStation Music)の依頼で始まったSpotifyプレイリストなど、選曲の仕事にはいつも携わっていられましたし、何よりも一緒に楽しみ支えてくれる音楽仲間に恵まれて、それなりに幸せな日々を送っていたような気がします。Suburbia RecordsやApres-midi Recordsのリリース作品、UNIVERSALでの7インチ・リイシュー企画レオン・ウェア追悼コンピへの温かいご支援にも、心から感謝しています。

 

最後に、12/17に由比ヶ浜のOcean Harvest Cocomoで行われた『Good Mellows For Afterglow Meditation』リリース記念パーティーの模様をインターネット・ラジオHamon RadioのYouTubeライヴ・ストリーミング映像でお楽しみください(よろしければコンピCDのYouTube試聴用トレイラーも)。年明けにHamon Radioウェブサイトで公開される僕のインタヴューもひと足早く掲載させていただけることになりましたので、併せて読んでもらえたら嬉しいです。それでは、来年も素晴らしい音楽とたくさん出会い、皆さんと楽しく分かち合えますように。

 


Hamon Radio 橋本徹(SUBURBIA)スペシャル・インタヴュー


90年代初期に伝説のレコード・ガイド「Suburbia Suite」を送り出し、その後も「Free Soul」や「Cafe Apres-midi」、「Mellow Beats」や「音楽のある風景」といった、数々の人気コンピレイション・シリーズを選曲、その幅広く深い音楽への見識と愛情が音楽ファンの間で絶大な信頼を得ている橋本徹。Hamon Radioへのシンパシーや、2017年からスタートした「Good Mellows」シリーズのこれまでや、その最新作について語ってもらった。

 

──今回、Hamon Radioというインターネット・ラジオがスタートするんですが、それについて橋本さんの感じるところや、「Good Mellows」の始まりなどについて簡単に話していただけますか。

 

橋本/Hamon Radioのコンセプトというか、考えていることやめざしていることと「Good Mellows」は共振する部分があって、すごくシンパシーを感じるんです。波紋(Hamon)っていうのは、波そのもの、つまり海辺での気持ちよさみたいなところもあるし、水面に石が落ちて円が広がっていくように、共感できることや音楽を通してつながりが広がっていくという意味でも、僕が「Good Mellows」を通してやろうとしていることにすごくフィットするメディアだな、と思っています。「Good Mellows」のコンピCDやDJパーティーを始めるきっかけは、2014年の夏に由比ヶ浜の同名のハンバーガー・ショップでパーティーを開いたんですが、それまではクラブだったり都会のカフェだったりでDJや選曲をする機会が多かったんだけど、そのときの海辺ならではの心地よさ、音楽とミックスされてとても幸福な時間が流れていたっていうのが自分にとっては大きくて。ちょうどその頃、レーベルを始めませんかっていうお誘いを受けていて、翌年の春から始めることになって。

 

──「Suburbia Records」ですね。

 

橋本/そう。そのレーベルの看板シリーズというか、メイン・コンテンツとして「Good Mellows」は始まって、CDが今回通算10作目になるんだけど、コンピレイションを出したり、湘南だけでなくいろいろなところで「Good Mellows」のパーティーを開いたりしていくことによって、共感する音楽好きの方に波紋が広がるように伝わっていった、というのがこの2年半の流れですね。

 

──「Good Mellows」のDJパーティーに行くと、オープンエア的な開放感だったり、風通しのよさを感じる瞬間があって。

 

橋本/そうそう。今年の8月の最後のウィークエンドに、DJをしながらBBQパーティーを由比ヶ浜のGood Mellowsのルーフトップでやったんだけど、そのときのすごくピースフルないい雰囲気が今でも心に残っているな。気の置けない仲間との本当の意味でのチルアウトというか、あれこそが「Good Mellows, Good Fellows」という感じで。そういう気持ちよさがHamon Radioのフィロソフィーにも反映されてるように思うけど、寄せては返す波にも通じる、心地よいメロウな揺らぎっていうのが、今「Good Mellows」を通して僕が求めてる感覚なのかな、って気がします。

 

──なるほど。僕の中では「Hamon」っていう言葉と「Mellows」という言葉は、どちらもある種のヴァイブレイションというかフィーリングという感じで捉えていて、それを両者が共有しあっている部分を感じますし、サウンド的な気持ちよさ、揺らいでいるダビーな感じや音響だったりというのと、それがみんなに広がっていく感じ、バタフライ・エフェクトという言葉もありますけど、小さなさざなみが次第に大きく広がっていくというか。

 

橋本/本当にそうだね。音の揺らぎの気持ちよさと、ゆらゆらとしながら気持ちのいいものや気持ちのいい人たちとつながっていくっていう両方の意味で、共感できる同じヴァイブレイションがあるなと思います。カフェ・アプレミディももちろんそうなんだけど、由比ヶ浜のGood Mellowsや今回(12/17)パーティーをやるOcean Harvest Cocomoっていう場所だったりも、共通する感覚があるんだよね。

 

──だから、「Good Mellows」を契機に「Sunset Lounge」や「夕陽と海の音楽会」といったイヴェントがつながっていったような印象を受けます。

 

橋本/「Sunset Lounge」だったり「Sunset The MARINA」だったりは、僕はゲストとして呼んでもらってるんだけど、そういう素敵なパーティーをオーガナイズしてる人ともどんどんつながって心地よい時間を過ごさせてもらってるっていうのが、ここ数年のありがたい流れなんだよね。江の島・シーキャンドルサンセットテラスでの「夕陽と海の音楽会」のレジデントDJを務めさせてもらってることも、ここ数年の僕の最も大切にしている歓びだし。そういう中での最近の大きな変化っていうのは、当初はオンシーズンの夏に東京からパーティーをやりに行って、すごく楽しかったというところからスタートしてるんだけど、続けていく中で、それだけじゃないことを継続的に「Good Mellows」はやっていきたいな、って思うようになって。

 

──確かに、放っておくとどうしても「夏だ! 海だ! サンセットだ!」みたいになりがちですよね(笑)。

 

橋本/それよりもっと大切なことがあるなと。コンピレイションが出てから2年半経ったけど、夏やシーサイドやサンセットという魅力と消費的に関わるのではなくて、例えば地元の方との信頼関係だったり、人生の中でずっと続いていくような関係性や心地よさ、あるいはオフシーズンならではの心地よさやメロウネスを分かち合えないかな、っていうのをコンピレイションにもパーティーにも反映させようとしている、っていうのが今の気持ちで。だから今回も年末の忙しい時期で、夏ほどはたくさんの方が湘南まで集まってくれるのは難しいかもしれないけど、冬ならではのささやかな幸せを分かち合いたいと。

 

──とてもいい話ですね。湘南の方に行く回数が多くなると、夏だけじゃないタイミングで訪れることが必然的に増えると思うんです。海とか本当にそうだと思うんですけど、四季折々、あるいは天候や時間帯によっても表情を変えていくっていうのがあって、さっき橋本さんがおっしゃったような夏の良さだけではなく、秋には秋の、冬には冬の良さがあるっていう、それを表現するようなところに来てるのかな、という気がします。

 

橋本/やっぱり、とてもいい時間を過ごさせてもらっている場所への感謝みたいなものが募っていく中で、海辺の陽の当たりづらい季節の良さっていうのも発見して共有していきたいなと思って。夕陽だって四季折々に美しさがあるし、僕らはそれに相応しい音楽を選ぶのが楽しいわけだしね。

 

──「Good Mellows」コンピは、最初は「Seaside Weekend」や「Sunset Feeling」といった、ある種王道的なところから始まってきてるんですけど、その後は陽光の季節とか月夜とか、作品ごとに新しい側面を出していますよね。

 

橋本/季節でも時間帯でも本当にいろんな表情があるので、そういう部分に毎回テーマを決めてフォーカスしてみようっていう。

 

──今回の『Good Mellows For Afterglow Meditation』は、冬っぽい感じのジャケットですよね。

 

橋本/そうだね。そのへんはデザイナーのFJDにコンセプトを伝えて、アートワークの雰囲気ってのもすり合わせながら作っています。

 

──とてもいいデザインだと思います。あと「Afterglow」っていう単語を調べてみたりすると、陽が沈んだ後の時間帯というか。

 

橋本/まあ、後光とか残照、残光だったり、余韻だったり。逆光感に通じるような雰囲気。

 

──うんうん。辞書だと「余韻」とか出てきますよね。

 

橋本/そうだね。余韻というのが一番伝えたいイメージかな。音楽から伝わる情感の余韻みたいなものを味わえるコンピレイションになったらいいな、っていうのがありました。

 

──僕自身はアートワークとかタイトルもあって、音源を聴いていて冬の海を見ているときのような気持ちになる瞬間が多かったですね。冬の空気の澄んだ感じとかですね。

 

橋本/冬は空が澄んでいるから、星や月がきれいに見えたりするよね。

 

──冬の海特有の色合いとかもありますよね。

 

橋本/僕自身は海の印象と共に、夜空みたいなものを途中からはイメージしていたんだよね。星空を眺めていると穏やかな気持ちになる、メディテイション的な感覚と言えばいいのかな。それと最初、コンピレイションのタイトルに使おうかと思ったのは「Floatin’」という言葉だったんだ。

 

──なるほど。さっきの揺らぎの話じゃないですけど、浮遊感は今回の大きな特徴だと思います。

 

橋本/最終的には「Afterglow」にしたんだけど、「Floatin’」というのが選曲の上でのキーワードだったんだよね。

 

──今回、エスニックな要素というのがけっこう入ってるな、というのも印象的でした。エスニックと言ってもそれはあくまでシタールの音色や親指ピアノだったりで、最終的にはメディテイティヴというか、音に身を任せる感じの世界に入っていくんですけど。

 

橋本/そういう要素は意識的に増やしました。それはスピリチュアル〜メディテイティヴな音の桃源郷ってことだよね。「Good Mellows」を始めたきっかけっていうのは、現在進行形でたくさん買っている12インチを選曲に反映させていけるようなコンピ・シリーズがあったらいいなと個人的に思っていたことなんですが、最近のシーンの流れとしてMusic From Memoryというレーベルとかがわかりやすいけど、オブスキュアだったりレフトフィールドだったりエスニックなフレイヴァーだったりというものが、よく感じられる傾向が強まっていると思うんだよね。いわゆる爽やかだったり、綺麗で気持ちいいっていうタイプの曲ではなくて、ちょっと変なものや気持ち悪い気持ちよさみたいなもの、あるいは抽象的なものっていうのが世代的にも時代的にもフィットするようになってるんだな、と思う経験が最近多くて。

 

──去年、「usen for Cafe Apres-midi」の15周年のインタヴューをさせていただいたとき、ファラオ・サンダースのフリーキーなソロが入っている曲は15年前だったらカフェ・ミュージックとしては選ばなかったけど、今はそのくらいの方がちょうどいいといった話もされてましたよね。

 

橋本/そうだね。どんなものが心地よいと感じるかっていう基準が明らかに変わってきていると思っていて、そこを捉えたい気持ちはあります。「Good Mellows」は常に現在進行形の感覚を扱っているシリーズだと考えているので。

 

──その意味では、今回はTranceの「Ambiente」やMsafiri Zawoseの「Malugaro」がキーになっている曲だと思います。どちらも浮遊感やメディテイション感がすごくあって、心が穏やかになりますよね。

 

橋本/そうそう、「Ambiente」のシタールや「Malugaro」の親指ピアノ、チャントが入ってる感じが非常に重要なんだよね。以前だったら地味に感じられたかもしれないダビー・アンビエントなMelbaの「Phantasea」とか。「心の調律師のような音楽」というのは、2010年に僕が『美しき音楽のある風景〜素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』っていうコンピレイションを出したときにキャッチフレーズにしたんだけど、その基準が変わってきているなと。BBNGの『LateNightTales』やDJ Kozeとかムーディーマンの『DJ Kicks』があれだけ支持されたりというのは、みんながさっき言ったような感覚になってきている証左だなと思うんだよね。

 

──7曲目のUnderground Systemの「Bella Ciao」も、アフロ・ビートですけど普通にルーム・リスニングで聴いてても気持ちいいタイプの曲だし、むしろそういう場面にフィットすると思いました。

 

橋本/12インチで出たときは、陽光系のジャケということもあってすごくオープンエアというか開放感のある曲だと思って、ちょっと今回は浮くかなとも思ったんだけど、さすがGigi Masinが絡んでることもあって見事にハマったなと。

 

──そういう現在進行形の感覚を大切にするというのが、よく反映されていますね。

 

橋本/例えばUyama Hirotoくんの曲は、アナログを聴いているときのようなノイズを入れているんだけど、それが肌に合うというか、ああいう感覚がすごくわかるんだよね。綺麗なままにしないで、わざとざらつかせるっていうか。

 

──どこかしら引っかかりみたいなものがあったほうが気持ちいい、という風になってきていると。そこで「10作目を迎え、現在までを振り返ってどうでしたか?」というのもお訊きしたいんですけど。

 

橋本/僕がこのシリーズで最初にやりたかったことっていうのが「Seaside Weekend」「Sunset Feeling」でできて、それがすごく支持されて、3作目の「Moonlight Rendezvous」以降は、ヴァリエイションを広げながら「Good Mellows」が魅力的な連続体として見えていくように、コンピの選曲とDJパーティー、そこのゲストという部分でいろいろ考えてきました。海外なら最初はAndras Foxに始まり、Cantoma〜Gigi Masin〜Paul Murphy〜Chris Cocoといった人と関わったりして。日本だとCalm〜chari chari(井上薫)〜Chee〜DJ YOGURTだったり。そういう、チルアウトという分野でそれぞれの表現をしている人たちを呼んで。

 

──僕もパーティーに遊びに行かせていただくことがありましたが、世界中に同じ感覚を持っている人がいるんだなあと感じましたね。

 

橋本/東京らしさをどこかで意識してきた今までの僕のコンピレイションに比べると、「Good Mellows」はインターナショナルなフィーリングが強いのかもしれないね。自分の感覚にただ忠実にやってるだけなんだけど、ヨーロッパからウエストコーストまでインターナショナルに支持されているという部分も強くて。インターネットが普及して、いろいろと可視化されやすい時代になったせいもあると思うけど。

 

──橋本さんのコンピレイション・シリーズは核がしっかりあるから、どれを買っても最終的には「ああ、この感じだよね」というところに落ち着くんですよね。

 

橋本/80分ちょっとの時間で、メロウ・チルアウトな音楽旅行をするっていうのが「Good Mellows」の根本のコンセプトだからね。そこは変わらない。

 

──Hamon Radioも、そういう意味では核の部分がしっかりとしていてぶれない、アクセスしたくなるインターネット・ラジオになっていきそうですね。

 

橋本/名前とかロゴにポリシーがよく表れているよね。「Good Mellows」以上にカジュアルというか、いい意味でユルい感じで、さりげなくそういうアティテュードを提示している気がするな。

 

──インターネット・ラジオのメディア特性も活きそうですね。海外の人も容易にアクセスできるっていう利便性は、音楽チャンネルにとってはメリットだと思います。

 

橋本/「Good Mellows」は今まで僕がやってきたことに比べると、言葉の壁とか東京ならではの文脈を越えやすいところもあるからね。メロウ・チルアウトというキーワードは、今や世界共通だから、こういうメディアを通して文脈の壁も越えられるんじゃないかと思っているよ。「Good Mellows」は「こんなのあったらいいな」くらいの感じでふんわりと始まったから(笑)、アナログ・オンリーでもこんなにいい曲があるし、普段DJパーティーや海辺のパーティーに来られないリスナーともそのドキュメント的なものを共有したいなということだよね。心地よさのおすそ分けという感じで。

 

──橋本さん自身が好きなものをCDに、というのは昔からずっと変わらないところだと思うんですが、「Good Mellows」はすごく自然体というか健康な感じですよね。やっぱり環境とか周りにいる人とかのヴァイブスが大きいのかなと感じています。

 

橋本/そうそう、ライナーにも書いたけど、今回はマスタリングも終わったところで急にTrackheadzの「What's For Dinner?」を外さなければいけなくなったんだけど、その代わりに入ったのが、由比ヶ浜の夕暮れをイメージして作ったというUyama Hirotoくんの「Magicnumber」なんだよね。実際、7月にCocomoでUyamaくんとMarterがライヴで一緒に演ったゆかりの曲なんだけど、その曲を新録のサックスをメインにしたヴァージョンで結果的にエクスクルーシヴ収録できて。トラブルさえも人と人のつながりでいい方にひっくり返せるんだ、と感じたできごとだったよ。本当にUyamaくんには感謝しかないね。

 

──ものごとがうまくいくときって、そういうものですよね。ファンの人には本当に嬉しいプレゼントだと思います。

 

橋本/そこに物語が生まれるからね。由比ヶ浜はNujabesの家で僕とUyamaくんが出会った場所でもあるし、7月のパーティーに来てくれた人が、何ヶ月かしてこのコンピレイションを聴いてくれたら、特別な感動があるんじゃないかな。カフェ・アプレミディの18周年パーティーでも披露してくれたしね。

 

──音楽は、それ自身とその周辺にまつわる物語や記憶を呼び覚ましてくれたり、周囲の人とそれを共有したりすることができるのが、かけがえのないことですよね。では、最後に今後の展望をお願いします。

 

橋本/そうですね。繰り返しになってしまうんだけど、自然体で続けていって、日本国内も海外も、同じような音楽が好きで、同じような感覚を心地よいと思う人たちとつながって、幸福な音楽体験を分かち合える時間が増えたらいいなと思います。Hamon Radioを通してもね。

 

──はい、今日はどうもありがとうございました。

 

橋本/こちらこそありがとうございました。

 

2017年12月9日 カフェ・アプレミディ(渋谷)にて
構成・文/waltzanova

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