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1月31日──橋本徹のFree Soul20周年&コンピ情報etc.

2014年が始まりました。ご挨拶が遅くなりましたが、今年もよろしくお願いいたします。個人的には何となく、リスタートの年にしたいなと考えています。
Free Soulが20周年を迎えるアニヴァーサリー・イヤー、今日さっそく僕の新しいコンピレイション『Urban-Mellow FM 77.4』がアプレミディに入荷しました(全国発売は2/6)。昨年末にリリースされ、嬉しい感想をたくさんいただいている『Free Soul ~ 2010s Urban-Mellow』(セールス的にもこれほど大きな反響を感じられるのは“メロウ・ビーツ”以来です)の、アプレミディ・レコーズにおける兄弟作となる一枚です。
詳しい内容については、HMVウェブサイトの“橋本徹の『Urban-Mellow FM 77.4』全曲解説”、僕のUNITED ARROWSウェブサイト連載コラム「音楽のある風景」、ホリイマサアキが書いてくれたマガジンハウス「ダカーポ」の“都市生活者の心象風景を描く『Urban-Mellow FM 77.4』”を、ぜひ読んでみてください。このアプレミディ・ホームページのブログには、草野圓によるライナーを転載しておきます。

今後のリリースについても簡単に触れましょう。今週は3/12発売予定の『Free Soul ~ 2010s Urban-Mellow Supreme』(まさに僕にとってのベスト・オブ・2010sという感じになっています)と『Free Soul. the classic of Terry Callier』(20年越しの念願かなってという感じです)、それに4/2発売予定で特設サイトが本日オープンの『フリー・ソウル・キリンジ』の3作の曲順を組むと共に、デザイナーの小野英作(NANA)がジャケットを完成させたところです。どれも本当に最高なので(キリンジはFree Soulシリーズ初のカタカナ縦組みタイトルとしました)、これも曲目リストと一緒にいち早く、このページに掲載しておきましょう。週末には、遊びに行きたい気分を抑えて、それぞれのライナーを書くつもりです。
そして、ディスクガイド「Suburbia Suite; Welcome To Free Soul Generation」発行からちょうど20年目の4/9リリース『Ultimate Free Soul Collection』も、現在アプルーヴァル申請リストに挙げた楽曲の使用許諾が続々と届いているところ。特にこれまで一度もOKが来ていなかったThe Brady Bunch「I Believe In You」やJoey Heatherton「The Road I Took To You (Pieces)」といった大好きなナンバーの吉報は嬉しい限りです。ユニバーサル制作&営業ミーティングから生まれた、ただただひたすらこれでもかとキラー・チューンを満載するというコンセプトのこの3枚組(しかも2,750円!)、当初は僕が選曲しなくても、とも思っていたのですが(実際、Free Soulファンの人気投票を募って収録曲を決めては、というアイディアを出しましたが、スケジュール的に実現しませんでした)、俄然モティヴェイションが高まっています。あとはミシェル・ルグラン「My Baby」とレスリー・ダンカン「I Can See Where I’m Going」を祈るばかりですね。5〜6月にFree Soulリイシューされるオリジナル・アルバム100枚のダイジェスト・サンプラーとしても楽しめますので、ご期待いただければと思います。


『Urban-Mellow FM 77.4』ライナー(草野圓)

早いもので、もう4作目を数えることになったこの『FM』コンピレイション・シリーズ、今回のテーマは「アーバン・メロウ」。ジャズ、ソウル、AOR、ブラジリアンからビート・ミュージックまでを、都市の音楽=アーバン・ミュージックとして解釈した一枚になっています。都市で暮らしている中で訪れる、幸せな気持ちにもブルーな気持ちにも寄り添ってくれる音楽。そして、それは移り変わる時間と景色の中で、より輝きと陰影を増して息づきます──。

写真の勉強のために彼女がニューヨークに旅立ったのは、半年前のことだ。彼女がそのことを告げたのは夏の終わりだったが、自分の選択に対するわずかながらの不安も見えかくれしていた。僕たちは二人で食事をし、その帰りに海岸沿いをドライヴしていた。トンネルを抜けて由比ヶ浜にほど近い場所に差し掛かったときのことだ。ループするギターに情感をたたえたリリカルなピアノ、そして心臓の鼓動のようなビートのサウンドが車内に広がっていく。奇しくも、亡くなった友人がフルートを演奏している曲だった。海から数分の彼の家のテラスで、親しい仲間たちと花火を見たあの夏の宵がよみがえってくる。才能あるミュージシャンだった彼は、彼女のセンスを評価していて、彼女が撮影した写真をレコードのジャケットに使ったこともある。目の前に広がる、134号線沿いの光と江の島の灯台が作り出す美しい夜景。曲の後半、祈りにも似たフルートの旋律が胸を打つ。それを聴いていた彼女は、「偶然のめぐり合わせって、きっとあるんだね」としみじみとした表情で言った。僕は、彼女の決断を後押しするために、彼がこの奇跡のような瞬間を差し出してくれたのだと思った。

湾岸線を横浜方面に向けてクルマを走らせていると、ベイブリッジが近づいてきた。走り慣れた道だが、この季節の夕暮れどきに見る、ウィンドウ越しの景色は格別だ。雨上がりの冬の澄んだ空気の中、遠くに見える街の灯火がときおり星のような瞬きを見せている。

I see the crystal raindrops fall
And the beauty of it all
When the sun comes shining through...

ちょうどFMから流れている「Just The Two Of Us」の歌詞にも通じるような眺めだ。それに続くのは“You gave me the kiss of life”と歌われる、ハスキーなヴォーカルが切なくも優しい「Kiss Of Life」のカヴァー。僕はふと、空港に彼女を送っていった帰り道のことを思い出していた。二人の部屋で過ごすとき、彼女がよくターンテーブルにのせたお気に入りが「Kiss Of Life」の入ったシャーデーと、「Look For The Silver Lining」の入ったチェット・ベイカーのレコードだった。彼女がニューヨークに行くにあたって、僕はそのチェットのアルバムをプレゼントすることにした。レコードを渡すと、曲目表に目を落とした彼女が、「ありがとう。どんなときでも、雲についている銀色の裏地を探して、人生の明るい面を見つけてごらんってことだね」と、笑顔を見せた。

ダッシュボードを見ると、時刻は17時過ぎを示している。ニューヨークは朝を迎えるまでにはまだ時間があるな、と僕は思った。いつのまにかそんな計算も自然にするようになっている。時差を駆ける想い。今日はヴァレンタイン・デイ。記念日好きな彼女のことだから、メッセージを送らないと怒られるな……。彼女が年末に送ってくれた写真の束の中にあった、早朝のニューヨークの風景を写した一枚が、頭の中に浮かんだ。まだ人やクルマの少ない街角に映えるシグナルの赤と青、朝焼けとまだ手つかずの新しい空気、その佇まいが切り取られている。スピーカーから聞こえてくるのは、くつろいだムードのピアノとウッド・ベースをバックにした、包容力に満ちたバリトン・ヴォイス。説得力ある歌い口と、豊かなゴスペル・フィーリングが暖炉の火のように心を温めてくれる。そういえば、このシンガーのライヴをブルックリンのジャズ・クラブで観たと彼女は以前話してくれた。僕は「Be Good」と祈りながら、今度の春休みにはニューヨーク行きのチケットを取ろうと心に決めた。



『Free Soul ~ 2010s Urban-Mellow Supreme』(¥2,000+税)

01. Always Be / PJ Morton
02. Happiness / Jonathan Jeremiah
03. Wake Up Everybody / John Legend & The Roots feat. Common & Melanie Fiona
04. Ooo La La / Robin Thicke
05. The Fall / Rhye
06. Let It Ride / Robert Glasper Experiment feat. Norah Jones
07. Dances With Ancestors / Derrick Hodge
08. Dontcha / The Internet
09. Lonesome Lover / Gregory Porter
10. A Case Of You / James Blake
11. Thinkin Bout You / Frank Ocean
12. Devotion / Jessie Ware
13. Make It Right / Jose James
14. Disappointment / Jeb Loy Nichols
15. Baby Be Mine / Quadron
16. Between The Bars / Taylor Eigsti feat. Becca Stevens
17. When An Angel Sheds A Feather / Gerald Clayton feat. Gretchen Parlato & Sachal Vasandani
18. Serenity / Kendrick Scott Oracle feat. Alan Hampton
19. Watch You Sleeping / Booker T & Friends feat. Kori Withers
20. I’ll Get Along (Ethan Johns Session) / Michael Kiwanuka
21. Now Or Never / Kendrick Lamar feat. Mary J. Blige



『Free Soul. the classic of Terry Callier』(¥2,000+税)

01. Oh Dear, What Can The Matter Be
02. Brother To Brother (Terry Callier & Paul Weller)
03. If I Could Make You Change Your Mind
04. Ordinary Joe
05. Look At Me Now
06. Gotta Get Closer To You
07. Trick All Your Time Away
08. Brown-Eyed Lady
09. (I Just Can’t Help Myself) I Don’t Want Nobody Else
10. You Goin’ Miss Your Candyman
11. Love Theme From Spartacus (4 Hero Main Mix)
12. No More Blues
13. Tokyo Moon
14. Following Your Footprints
15. Caravan Of Love
16. Ordinary Joe (Nujabes feat. Terry Callier)
17. Lean On Me (Beth Orton with Terry Callier)


      
『フリー・ソウル・キリンジ』(2枚組/¥2,500+税)

【Disc1】
01. 今日も誰かの誕生日
02. 野良の虹
03. 君の胸に抱かれたい
04. 恋の祭典
05. 雨を見くびるな
06. かどわかされて
07. まぶしがりや
08. 愛のCoda
09. YOU AND ME
10. 君のことだよ
11. 冬来たりなば(堀込高樹)
12. 燃え殻(馬の骨)
13. Drifter
14. エイリアンズ
15. スウィートソウル
 
【Disc2】
01. グッデイ・グッバイ
02. きもだめし
03. ブラインドタッチの織姫
04. 朝焼けは雨のきざし
05. 雨は毛布のように
06. 双子座グラフィティ
07. 十四時過ぎのカゲロウ
08. ナイーヴな人々
09. バターのように
10. Love is on line
11. 空飛ぶ深海魚
12. ダンボールの宮殿
13. ブルーバード
14. いつも可愛い
15. 荊にくちづけを
16. サイレンの歌
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