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8月20日──橋本徹のアプレミディ・レコーズ情報&「Toru II Toru」通信
8/8に全国リリースされた、この夏のアプレミディ・レコーズのCD、コンピ『Urban-Resort FM 78.4』とデコーダーズ『Lovers & Dub Classics』は、もう聴いていただけましたでしょうか。詳しい内容については、前回のブログUNITED ARROWSホームページの連載コラム、そしてHMVウェブサイトの全曲解説に書きましたが、プライヴェイトでも、DJパーティーのときにも、とても重宝している2枚です。というか、僕以上に、友人たちが気持ちよさそうにかけてくれている場面に何度も出会えているのが、何より嬉しいですね。2013年の夏の思い出と共にどうぞ。
さて今回は、8/17に行われた渡辺亨さんとの選曲会「Toru II Toru」で配布されたフリーペーパーへの寄稿を掲載します。当日いらしていただいた方にさしあげた選曲CD-Rのライナーを兼ねた文章ですが、僕にとっては今年の夏を記憶するための備忘録になっています。ロング・ホット・サマーも半ばを越えましたが、過ぎゆく夏を素晴らしい音楽と、という思いをこめていますので、ちょっとした残暑見舞い代わりにお楽しみください。

追記:次の僕の選曲コンピは、10月下旬リリース予定の『音楽のある風景〜Sunlight to Moonlight』です。「Quiet Corner」「bar buenos aires」を主宰する山本勇樹くんが、HMV限定スペシャル・イシューとして提案してくれました。


「Toru II Toru」通信
アイスクリームとろけるような暑い暑い夏に、水辺で奏でるサマー・シンフォニー
Selection & Text by Toru Hashimoto (SUBURBIA)


真夏の夜の12インチ〜Keep Cool Pool Mix
(1)Captain Sunshine & The Valley People「Island Visions」
(2)Efeel「Dawn Over A Quiet Harbour」
(3)Outside「The Plan (-et Mix)」
(4)Ptaki「Krystyna」
(5)Sir Own「Hooked (Kon's Nite Time Remix)」
(6)Tangoterje「Aquarius」
(7)Teengirl Fantasy「Motif」
(8)Mr. Joshua Presents Espiritu「In Praise Of The Sun (Masters At Work Mix)」
(9)Louie Vega「Mozalounge (12" Mix)」
(10)Nadirah Shakoor「Love Song」
(11)7 Samurai「Marvin」
(12)Cole Medina「What It Is Going On」
 
この夏はよくDJをしている。先週末のシーサイド&プールサイドでのプレイを思い浮かべながら、選曲CD-Rを作った。「真夏の夜の12インチ」と題しているが、これは映画「真夏の夜のジャズ」を好きな僕に配慮してくれた「Toru II Toru」フリーペーパー編集人waltzanovaのアイディアで、実際には夕暮れどきから選んだレコードたちだ。
揺らめく水面にジミー・ジュフリーの演奏が重なる「真夏の夜のジャズ」のオープニングをイメージして、プールサイドではまず、夏の白日夢から脱けだすようなイントロダクション、Lord Of The Islesの「Fey Folk」を用意した。“オーブ・ミーツ・ヴァクラ”という感じのスピリチュアルなエレクトロニック・ミュージックが冴える『Galaxy Near You Part1』からのコズミック・アンビエント。そのLord Of The Islesも以前リリースしていた西海岸のレーベル“Adult Contemporary”からの新着12インチ、ウィンドサーフの片割れHatchbackによる、鳥のさえずりに始まる「Paradise Drive」でDJセットをスタートさせることも多い。真夏の「Toru II Toru」は、鳥がさえずる夜をファルセットで彷徨うような、Guerreの愛すべきアンビエント・ソウル「Ali」で始めてみようか。シドニーのThe Finer Thingsから出たハンドペイントのスリーヴも素敵な『Revels』(Nakaginの『Apathy』とのスプリットEP)を持っていこう。
続けてセレクトしたバレアリック・ヨット・ロッカーズ、シーホークスが主宰するオーシャン・ムーンから届いた、彼らが手がける新プロジェクトの(1)から、CD-Rは始まる。ダビー&スペイシーでメルティン&フローティンな音の桃源郷『Tomorrow's Never Known』より。サマー・ブリージンな揺らめきは、2013年夏を象徴するウォッシュト・アウトの新作『Paracosm』とも相性のいい、ドリーミン・ファンタジック・サイケデリア。ふと思い描いてしまうのは、いまだに夏が来るたび「Feel It All Around」に針を下ろす、ウォッシュト・アウト『Life Of Leisure』のジャケットの、あの光景だ。
珠玉そして至福の黄昏チルアウトとも言えるビューティフル&メロウな(2)は、ウルグアイから登場したポスト・バレアリック・レーベル、インターナショナル・フィールのリエディット・ライン“EFEEL”から。美しいギターとピアノに心地よいビートが、まさに天上の素晴らしさ。このシリーズでは、10cc「I'm Not In Love」を浮遊感漂うメロウ・フローターにしてレイドバック&ストーンドなダウンテンポに仕立てた「Forbidden Love」もマイ・サマー・フェイヴァリット。インターナショナル・フィールのファースト・リリースとして話題を呼んだRochaの「Hands Of Love」や、虫の声も過ぎゆく夏への思いを募らせるチルアウト・アンビエント「Night Music」も、最近またスピンしている。もちろん、ホセ・パディーヤやトッド・テリエが讃辞を寄せるインターナショナル・フィール最新盤『Sketches From An Island 1』も。
マット・クーパーとアンドレアス・アレンの懐かしい(3)を今年のサマー・セットにエントリーしているのは、気持ちのよいヨット・ジャケで限定200枚、アナログがリプレスされたことを讃えて。オリジナルは、イギリスのクラブ・シーンがレア・グルーヴ〜アシッド・ジャズから新しい時代を迎えつつあった1995年ドレイド発。当時はチルドレン・コーラスがピースフルな“-kton Mix”の印象が強かったが、ここではピアノ/アコギ/ストリングスなど生楽器の美しさが際立つ“-et Mix”を。その多幸感は言うに及ばず、セオ・パリッシュがプレイしてきたことからも伝わるように、ジャジー&メロウなビートダウン、そしてバレアリック・チルアウトとしての解釈も特筆したい。
ポーランドのオブスキュアなジャズ・ファンクを絶妙なビートダウン〜ブギーにリエディットした(4)は、『The Very Polish Cut-Outs Sampler Vol.1』から。ジャズ/フュージョンを昇華したファンキーで洗練されたディスコ・グルーヴがビルドアップされていき、洒落た女性ヴォーカルが映え、ポーリッシュ・バレアリックの至宝と呼ぶに相応しい。
続く(5)は昨年夏からのキラー・チューン。Kon & AmirのKonが、ガラージ・クラシックとして知られるセローン「Hooked On You」を、胸のすくジョセリン・ブラウンのヴォーカルは残しながら、リズム・ギター〜ベース・ライン〜クラップ〜ホーン〜エレピと、生楽器をさしかえ爽快メロウなブギー・ファンクに仕上げた完璧なリワーク。これをかけて暖まらなかったフロアは、1年経ってもまだない。
続いての(6)は、お馴染みトッド・テリエ(Tangoterje)によるリエディット。これまでは夏になると、フェリックス・ラバンド「Whistling In Tongues」/ポール・サイモン「Diamonds On The Soles Of Her Shoes」/マイケル・ジャクソン「I Can't Help It」をレコード・バッグに入れていたが(ビーチで一緒になったDJがクリス・レア「On The Beach」をかけることも多い)、先週のプールサイドでは、ジョージ・シアリングのラテン・ジャズをクールに生まれ変わらせた涼やかなこれが、心地よくフレッシュに響いた。スイスのエレクトリック・ハープ奏者アンドレアス・フォーレンヴァイダーの「Belladonna」の気持ちよすぎる“Tangoterje Edit”も、この夏のアウトドアのへヴィー・ローテイション。
やはり昨夏のサマー・アンセムでもあった(7)は、光のシャワーのように七色にきらめくデトロイティッシュ・シンセ・サウンドとトロピカル・ブリージン・バレアリックの出会い。美しいピアノをアクセントに、ダブステップ通過後のリズムにのって吹き抜けるメロディーは、さらに輝きを増している。R&Sからの12インチでは、リリースされたばかりのLoneのジャジー・ブレイクス「Airglow Fires」もヘヴィー・プレイ中だ(C.F.M.バンド「Jazz It Up」を思いだす、あの感じ)。
(8)(9)は、コンピ『Urban-Resort FM 78.4』にエレメンツ・オブ・ライフ「Most Beautiful」を収録したのを機にルイ・ヴェガ・ワークスを聴き直し、そろそろ寝かせ頃かなと取り出したブラジリアン・ジャジー・ハウス名作。アンニュイな女性ヴォーカルを、軽快に弾むボサ・ビートに絡む華麗なピアノとブリージン・ギターが彩る(8)は、暮れゆく太陽を惜しみながら。やはり軽やかでパーカッシヴなリズムに、“パッパヤー”というスキャットに耳を惹かれる清涼感あふれる男女混声のコーラス・ワーク、澄んだピアノにソウルフルなオルガンも素晴らしい(9)は、まさしくビューティフル&オーガニックという趣き。実際のDJプレイではさらに、こうしたテイストのディープ・ハウスを続けることも多く、先週の逗子海岸「harmony on the beach」では、ジョー・クラウゼルも愛したクレイグ・アレクサンダー「Breath」をプレイした。
(10)はここ数年、僕が夕闇に包まれる海辺でDJするときの定番になっている。元アレステッド・ディヴェロップメントの女性シンガーが、オスンラデ主宰ヨルバから発表した10インチ。透明感と色香のある、優しく伸びやかなメロウ・ヴォーカル、浮遊するドリーミーなコーラスとメロディー、ミニマルなパーカッシヴ・グルーヴに、流麗なピアノとギター。先日の「harmony on the beach」でも、美しい女性のオーディエンスが、「雰囲気のある曲ですね」とDJブースに近づいてきてくれた。
本来ならここでジョー・クラウゼルのメンタル・レメディーへとリレーするのだが、長尺曲ゆえに、このCD-Rには収めることができなかった。マイ・クラシックという意味では「The Sun・The Moon・Our Souls」や「Just Let Go」だが、先週末は『Spiritual Life Music Sampler Vol.4』から、憂愁を帯びたアコギとパーカッションが琴線に触れる「Acroostic Voyage」をかけた。まだ太陽がビーチを照らす頃からDJするときは、ジョー・クラウゼルが指揮した18分に及ぶサリフ・ケイタ「Tolon Willie」の“The Sacred Rhythm Live Version”や、ヴォルケイノ・ブラザーズによるハイライフ・エディット「Neocolonialism Is Strong Tea」で、たっぷりと時間をかけて極上のアフロ・フレイヴァーに身を委ねることも多い。
そして、すっかり夜の帳も降りると聴きたくなるのが、マーヴィン・ゲイの歌声。「I Want You」のメロウ&フォーキーなボサ・ジャズ・リエディット(11)は、エレピとストリングス、パーカスが織りなすヴィクター・デイヴィス的な哀愁ソウル。夏の余韻を感じながら火照った肌を癒すセンシュアルなアフター・アワーズにも最適で、12インチ裏面は「Stevie」。7 Samuraiは「What's Going On」をダビーにリエディットした「Wha'G Wan」の“Panoptikum Remix”も聴き逃せないし、同じスウェーデンのG.A.M.M.から発表された、The Reflexによる「What's Going On」のアコースティック・リエディットは僕のフェイヴァリットだ。
(12)はその「What's Going On」をクール&メロウに、抑制を効かせたダブ風味の心地よいミディアム・ビートでリエディット。ほぼ同じコンセプトによる「Mercy Mercy Me」リワーク、Revivraの「Mercy」と共に、夏の夜に聴きたくなるのは僕だけではないだろう。Cole Medinaはサヴァンナ・バンド「Sunshower」をリワークした「L.A. Sunshine」も、春から夏にかけてスピンした(Late Nite Tuff Guyによるソウル・II・ソウル「Back To Life」とシック「My Forbidden Lover」のマッシュアップ「Reality」につなぐのが必勝パターンだった)。
先週末のDJでは、この後も様々なサマー・メロウネス12インチをプレイしたが、残念ながらCD-Rのトータル・プレイング・タイムは80分。最後にいくつかの例を挙げて終わりにしよう。まずは(12)に続けて収録するつもりだったGet Down Edits によるボビー・コールドウェル「風のシルエット」のリエディット「Do For Love」。アーバン・リゾートな夏の夜くらい、僕もこういう選曲はありかなと。ちなみに12インチの反対サイドにはシャーデー「Hang On To Your Love」のリエディット「Hang On」。『Urban-Resort FM 78.4』にニール・ヤング「Harvest Moon」のメロウ&ダビーなカヴァーを入れたウエスト・コースト・バレアリックの雄プールサイドも、その裏面にシャーデー「When Am I Going To Make A Living」の絶品リエディットが入っていて、夏にこれほど重宝する12インチは他に考えられない。
(12)に続いて、実際に「harmony on the beach」アフター・パーティーでセレクトしたのは、“Love Unlimited Vibes”の「Luv.4」、アシャ・プトゥリ「Space Talk」のビートダウン・エディット。「Luv.5」のファイスト「Caught A Long Wind」リワークも、これまでよくかけていたが、ジェイムス・ブレイクを思わせるようなメランコリーなA面とマーヴィン・ゲイ「Too Busy Thinking About My Baby」をヴォイス・サンプルしたB面、どちらも好きな最新作「Luv.9」も推薦しておこう。
ラストはあまりに惜しくて、もうひとつ作ったCD-R『ザット・サマー・フィーリング2013〜Quiet Corner』に収めた、モニカ・ヴァスコンセロスのサウダージ・ヴォーカルを迎えたフランキー・ヴァレンタイン「Marinheiro So」の“DJ Mitsu the Beats Remix”。これぞサマー・メロウネスの極み、シーサイドでもプールサイドでも、最も胸に沁みたのは、この曲だった。
 
ザット・サマー・フィーリング2013〜Quiet Corner
(1)Don Peris「Holiday Beach」
(2)Washed Out「Entrance」
(3)Wolf Borges「So Pra Nos」
(4)Yacare Manso「Cancion Del Viejo」
(5)Dolores Mazzoni「Sinfin」
(6)Lautaro Feldman「Sheli」
(7)Nagual「Mamma」
(8)Angela Galuppo「Make Someone Happy」
(9)Mike Williamson「You'll Be There Tomorrow」
(10)Kendra Morris「Walk On The Wild Side」
(11)Los Amigos Invisibles「La Que Me Gusta」
(12)Alejandro Franov「Prepampa」
(13)Pablo Grinjot「Maravilla Del Mar」
(14)Chris Schlarb「Steppin' Out」
(15)Frankie Valentine feat. Monica Vasconcelos「Marinheiro So (DJ Mitsu the Beats Remix)」
(16)Derrick Hodge「Dances With Ancestors」
(17)Jon Hopkins「Immunity」
(18)Jessy Lanza「As If」
(19)Grey Reverend「Fate」
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