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1月27日──橋本徹のコンピ&DJ情報

ご挨拶が遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。2012年もよろしくお願いします。
今年のファースト・リリースとなるアプレミディ・レコーズの新作コンピレイション『サロン・ジャズ・ラヴ・ソングス』が、今日ようやく到着しました。フル・タイム選曲した僕のコンピCDはずいぶん久しぶりなので、喜びもひとしおです。制作秘話を混じえながら、詳しい紹介文をHMVウェブサイトの“橋本徹の『サロン・ジャズ・ラヴ・ソングス』全曲解説”に書きましたので、ご覧いただけたらと思います。吉本宏によるライナーも、このページの最後に掲載しておきますので、ぜひお読みください。

新しい年の始まりを告げる、「庭のホテル 東京」でのカウントダウンDJの1曲目は、やはりこれしかないだろうと、「Starting Over」にしました。2011年最後の曲に、福音でありレクイエムのように響くドワイト・トリブルの「Ooh Child」を聴いて(もちろん、来たるべき年がこの曲の歌詞のようになるのを祈って)出かけたのですが、50〜80代の年配のお客様も多い中で、とてもピースフルな雰囲気になって、幸先よいスタートを切ることができました。
とはいえ、冬休みが終わり、日常に戻れば、劇的に気持ちが上向くというわけもなく、とりあえずはレコードを買ってきては聴く、という行為に、ささやかな愉しみを見出す日々です。先日は、ディスクユニオンで古い友人の薄田育宏がカウンターの中から「これはぜひ橋本さんに、と思ってたんですよ」とThe Sullivansを出してくれました。アズテック・カメラ+オレンジ・ジュース+ルシンダ・シーガーという感じで、僕にとってはほぼ25年ぶりに買ったネオアコとなりました。

昨夜は『冬の終わりから春の始まりの夜に』と題したCD-Rを作っていました(気持ちが乗って、3枚セットになりました)。イメージの源泉となったのは、ときおり無性に聴きたくなるボン・イヴェールの「Woods」。この曲を聴くたびに、ジェイムス・ブレイクとカニエ・ウェストは耳がよかった、と思います。個人的には特に好きというほどではなかった去年のセカンド・アルバム以上に、EP『Blood Bank』に収められていたこれが、この冬も、僕のテーマなのです。ボン・イヴェールはアーティスト名も“素敵な冬”というフランス語のもじりですし、ジャスティン・ヴァーノン絡みはヴォルケイノ・クワイアも含め“雪ジャケ”が多いので、まさに“冬の音楽”という気がします。
何となく、そんな物思いにふけりながら、ケニー・ランキンの名曲をカヴァーしたフルーリンの小品「Haven't We Met」をイントロダクションに、アントニー&ザ・ジョンソンズ「Imagine」〜ルーファス・ウェインライト「World War III」という冬の夜に沁みる名演の連なりで、セレクションはスタート。前者はジョン・レノンの極めつけカヴァー(同じEP『Thank You For Your Love』に収録されたボブ・ディラン「Pressing On」カヴァーも死ぬほど好きですね)、後者はブライアン・ウィルソンによる「Sunf's Up」スマイル・セッションを思わずにいられない未完のピアノ弾き語りアコースティック・ヴァージョンです。もちろん互いの歌詞の世界観にも耳を傾けてください。
その他にも、やはり僕が冬の夜に聴くことの多い、サム・アミドンやダヴマン、ヴァルゲイル・シグルズソン feat.ボニー・プリンス・ビリーなどが選ばれている、と書けば、そのテイストが伝わりやすいでしょうか。この冬は特にたくさんのCDを聴いたアルゼンチン〜ウルグアイ〜ブラジルの南米勢や、近年のニック・ドレイク・チルドレン、ブルー・アイド・ソウルとして聴けるチルウェイヴ/ウィッチハウスもちりばめつつ、ニュー・ザイオン・トリオ/ナット・バーチャル/チャールズ・ロイドから、フランチェスコ・トリスターノのピアノによるジョン・ケージ「ある風景の中で」やセオ・パリッシュによるフレディー・ハバード「Little Sunflower」のリエディットまで、10分近い長尺曲をいくつもフィーチャーすることができ、少し溜飲を下げました(10分を越えるサンドロ・ペリ「Wolfman」は断念しましたが)。そうそう、チャールズ・ロイド・カルテットの2010年のECM盤『Mirror』は、最近の僕のおやすみ前の愛聴作で(ビーチ・ボーイズ「Caroline, No」をカヴァーしている、とbba山本勇樹が教えてくれたのでした)、ラスト・ソングの「Tagi」は、『素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』のオープニングに入れたセバスチャン・マッキ=クラウジオ・ボルサーニ=フェルナンド・シルヴァ「Rosa Y Dorada...」を引き合いに出したくなる、僕にとっての“心の調律師のような音楽”です。

そして今週のヘヴィー・ローテイション、アドヴァンスCDをいただいたばかりで、その日から繰り返し聴いているロバート・グラスパー・エクスペリメント『Black Radio』。先行リークされたエリカ・バドゥが歌う「Afro Blue」(ディー・ディー・ブリッジウォーターの名唱も忘れられません)の素晴らしさを聴いて、リリースを待ち望んでいる方も多いと思いますが、僕はこのアルバムを聴いていると、“2011 Best Selection”にも挙げたグレッチェン・パーラト(およびテイラー・アイグスティ)やミシェル・ンデゲオチェロが、いかに時代の空気をとらえていたかを、思わずにいられません。さらにこれらの作品に続いて、ハービー・ハンコックを始めブルーノート新主流派の名作群にロバート・グラスパー「J-Dillalude」を織りまぜコンパイルした『Jazz Supreme〜Maiden Blue Voyage』を聴いていると、深い感慨と共に、ゆっくりと眠ることができます。『Black Radio』については、またどこかで書くことがあるでしょう(書きたいことが、たっぷりとあります)。
カルロス・アギーレのニュー・アルバム『Orillania』も、いよいよ来月リリースですね。これまでの集大成と言えるようなヴァラエティーに富んだ充実作です。参加ミュージシャンの顔ぶれについてだけでも、語りたいことは尽きませんが、2/15に渋谷・Bar Musicで行われる選曲会「Toru II Toru」で特集しようと思います。当日はカルロス・アギーレとロバート・グラスパー・エクスペリメント、それぞれの新作をリリースに先駆けてプレイし、前回から配布されるようになったフリー・ペーパーで、両者から広がる推薦盤を10枚ずつ紹介する予定です。ぎりぎり冬の終わりの夜に間に合ったラムチョップ『Mr. M』などもかけたいですね。冒頭の「If Not I'll Just Die」から、じんわりと沁みてきて、『素晴らしきメランコリーの世界〜ピアノ&クラシカル・アンビエンス』に収めた「Autumn's Vicar」が好きなら間違いなしです。

「Toru II Toru」のフリー・ペーパーに掲載した“2011 Best Selection”には多くの反響をいただき、歌もの以外のお薦めも教えてほしい、などと言われましたが、ジャズで結局いちばん聴いたのは、ジェイミー・サフト率いるニュー・ザイオン・トリオの『Fight Against Babylon』だったでしょうか。アンビエント・ピアノ・ダブという感じの深い音空間に引き込まれました。次点は年末に届いたナット・バーチャル『Sacred Dimension』、続いてカルロス・ニーニョも絶賛していたアダム・ルドルフズ・ムーヴィング・ピクチャーズ『Both/And』かな。クラブ・フィールドからのホーム・リスニングという意味では、ニコラス・ジャーの『Space Is Only Noise』も。深夜ジェイムス・ブレイクに続いて聴くことが多かったです。CDには「Sunrise Remedy」というトラックもあったティーブス『Collections 01』も挙げておきましょう。ブッゲ・ヴェッセルトフト&ヘンリク・シュワルツ『Duo』も、アナログでなくCDで買うべきだったと思わされました。
ヒップホップではドレイクよりも聴いたのが、NRKのタイラー・メジャーのMP3アルバム『Alone In His Meadow Garden』。突然ある日、「橋本さんが好きそうです」と、ソニームーンによるドレイク「Houstatlantavegas」のカヴァー(確かに好きです)と共にプレゼントされたCD-Rですが、J・ディラにも通じるジャジー&メロウなアンビエンスに惹かれました。2012年は僕にとってMP3ダウンロード元年になるのか、そんなことさえ考えてしまった傑作です。やはり、これまであまり手を出すことのなかったフォーマットで、アルゼンチンのルイス・ベシェッチ&フアン・キンテーロのライヴCD+DVD『Cartas Al Rey De La Cabina』も、心より推薦いたします。ガット・ギターの弾き語りと詩の朗読、いつでも穏やかな気持ちにしてくれる、僕にとっては特別な存在で、大切な一生ものとなりそうです。

それでは、今日はそろそろこの辺で。僕が10年ぶりに手がけることになったサラヴァ・レーベルのコンピレイションも、3/21リリース予定ですが、とても素晴らしいアートワークなので、ジャケット写真をいち早く掲げておきました。“サウドシズモ”と“スピリチュアリズモ”をテーマとした『モンマルトル、愛の夜。』『サンジェルマン、うたかたの日々。』の2枚、選曲も楽しみにしていてください。
いよいよ明後日に迫ったカフェ・アプレミディでのサンデイ・アフタヌーン・パーティー「harmony」のフライヤー原稿も、最後にどうぞ。今回のゲストDJは、レギュラーDJ陣が長らく心待ちにしていたchari chariこと井上薫。説明の必要はありませんね。カフェ・アプレミディには2008年夏の『Cafe Apres-midi File〜Everlasting Summerdays, Endless Summernights』のリリース・パーティー以来、3年半ぶりの登場です。ご期待ください!

追記1:『音楽のある風景〜春から夏へ』にシャーデー「Love Is Stronger Than Pride」の素敵なカヴァーを収めたリンカーン・ブライニー。ミューザックからリリースされたばかりの新作『Lincoln Briney's Party』に推薦コメントを寄せました──「チェット・ベイカーにバカラック、そしてクイ・リー(!)の名曲まで、素晴らしいカヴァー・センスと親密なホーム・パーティーの雰囲気に満ちた、こんなアルバムを待っていました」。
追記2:ショップBGMの選盤を担当しているUNITED ARROWSのgreen label relaxingのホームページで、今年から連載コラムが始まることになりました。
追記3:2/26はNujabesの二周忌です。2/25深夜に西麻布・elevenで行われる追悼イヴェント「eternal soul」で、僕もDJさせていただきます。Uyama Hirotoやharuka nakamuraはもちろん、Calmやkuniyukiといった、『Mellow Beats, Friends & Lovers』に参加してくれたア?ティストが集いますので、ぜひ皆で天国の彼を偲びましょう。

『音楽のある風景〜サロン・ジャズ・ラヴ・ソングス』

静かに降る星。“遥かなる影”に遠いあなたを想う。夜空に浮かぶ月は、夜露にくもる窓におぼろげな白い光をちらし、一筋の雫が光を集めてゆっくりと窓を伝う。ストーヴの薪がはぜ、ゆらめく炎が部屋の壁にぼんやりと人影を浮かびあがらせる。古い真空管アンプの小さな球が橙色に灯る。柔らかなピアノの音色に、けぶるようなかすかな歌が聴こえてくる。芳醇な音の響きに耳を傾けていると、ふと人恋しさが募る。

一日の始まりに何かが心にのしかかる。けれど、あなたを見れば素敵な日がおとずれる。近頃、不思議な感覚に包まれる、はっきりした理由があるわけではないけれど、このままあなたを失ってしまうのではないかという思いにとらわれる。ベッドの中で時計の音を聞きながらあなたのことを考える。暖かな日々を思い出し、気持ちはめぐるばかり。

数々の愛の歌に描かれているのは、一緒にいるときの喜びよりも、離れているときに募る切ない想い。人は恋をすると何かを見失い、何かを見つける。星のようにあらわれたあなたを愛することを誇りに思い、今夜はひとりにしないでほしいと願う。愛のぬくもりなしに人は生きられない。

ハーヴェスト・ムーンの月明かりの下、今夜は眠らずに、いつまでもあなたと踊っていたい。あなたの瞳に映る輝く月を見ていたい。ずっとあなたを愛しているのだから。

夜は更け、ストーヴの炎も心なしか優しい色に変わってきた。レコードがのったターンテーブルが止まり、あたりに静寂がおとずれると、ふとあの人の声が聞きたくなった。けれど、いましばらくこの想いを胸に留め、歌の余韻にひたることにしよう。

吉本宏

「harmony」
1/29(日)18時から24時までカフェ・アプレミディにて入場無料!
前回の2nd Anniversaryも、おかげさまで、大盛況のうちに終えることができた「harmony」ですが、3年目のシーズンがスタートします。最近のビートダウン・ハウスやニュー・ディスコの活況ぶりは音楽好きにはたまらないものがありますが、そこで、特筆に値するのは、ブレイクビーツ出身のトラック・メイカーの作品に良作が多いことです。もしかしたら、最近のビートダウン・ハウスやニュー・ディスコは、トラック・メイカーによるダンス・ミュージックとしては、ジャジー・ヒップホップの進化形の一つかもしれない、と思うことが増えてきました。ビートダウン・ハウスを媒介に、生音やジャジー・ヒップホップ、ハウスの間をたゆたう「harmony」ですが、今回のゲストDJは、井上薫。自身の主宰する「groundrhythm」も9周年を迎えたばかりです。ジャンルの垣根を越えて、すべてを飲み込むかのような圧倒的なグルーヴを一緒に楽しみましょう!(Takahiro Haraguchi)

harmony classics
Far Out Monster Disco Orchestra / Keep Believing(Can You Feel It)Remixes
2011年はメロウ&ジャジーなビートダウン・ハウスの12インチをよく買っていたが、これが真打ち。セオ・パリッシュ節の最高峰のひとつ、彼のディープ&スピリチュアルなメロウネスとジャズのフィーリングが横溢するA面はもちろん、ピアノが美しいKompleksによるB面も素晴らしい。「harmony」にもベスト・マッチ!(橋本徹)

Ron Basejam / For The People, By The People
Crazy P関連の音源は「harmony」でもよくかけていますし、毎回いいリアクションをもらえていますが、Ron Basejamの楽曲は特に好きです。その中でも多幸感溢れるこの曲は、そのメッセージもまさに「harmony」らしいですね。いつだって僕らはここに集ってくれるみなさんに支えられてDJできているってブースに立つたびに思います。(haraguchic)

Sarah Dash / (Come And Take This)Candy From Your Baby
元LaBelleメンバーとして息の長い活動をしている彼女の、78年のソロ・デビュー・アルバムに収録。レコード店のキャプション風に端的に言うと「胸キュンこみ上げ系ディスコ」。キュートなコーラスとキャッチーながら憂いのある曲調がたまらない一曲。(NARU)

[re:jazz] / Expansion
数々の名曲をJazzカヴァーした作品集[re:jazz]。収録された曲の中にはDEF classicとしても有名な「Finally」もありますが、今回紹介したい曲は、何と言ってもJoe Smooth「Promised Land」のJazzカヴァー! メイン・ヴォーカルのInga Luhningが原曲とはまた一味違う切ない歌いっぷりでたまりません!(YUJI)

Rimar / Hi
Rah Band「Clouds Across The Moon」ネタにして、この野蛮なビート。同曲のDJ Koze Remixを越える衝撃。一般流通なしの限定盤としてリリースされ、一瞬でソールド・アウトになったのも納得です。ブレイクビーツ出身のトラック・メイカーに良曲が多かった2011年を象徴する一枚。(Takahiro Haraguchi)

KAORU INOUE / GIFTS OF UNKNOWN PRAYERS / DANCERS OF UNKNOWN PLEASURES
アジアの民俗音楽を中心に構成される"Gifts of Unknown Prayers"と、エスニック・テイストなTech House中心の"Dancers of Unknown Pleasures"の2本立て2枚組Mix CD。神話と悦楽の狭間で舌を出すトリック・スター、Mysticな(音楽版)未知の贈り物。

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