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12月27日──橋本徹の年末のご挨拶

2011年は、簡単には語り尽くせぬ一年でした。年の瀬の今は、年明けリリース予定のコンピレイションCDや、「usen for Cafe Apres-midi」ウィンター・セレクションなどの選曲にひたすら追われているので(「村上春樹×小澤征爾」もまだ読み終わらないほどです)、冬休みにでもゆっくりと振り返り、この一年に感じたことを、じっくりとこのブログにも記すことができたらと考えています。
今年は例年の半分もコンピを作ることができなかったのが残念ですが、素晴らしい音楽との出会いと再会はたくさんありました。『My Private Best 2011』と題した3枚セットのCD-Rを、1/26までの間にアプレミディ・セレソンをご利用くださった方にさしあげることになりましたので、よろしければどうぞお聴きください。
その3枚組CD-Rは、昨日から放送が始まった「usen for Cafe Apres-midi」の“2011 Best Selection”を基にしたものですが、それに間に合わなかった今月リリースの作品にも、気に入っている音楽がいくつもあります。そのあたりは、僕がリスニング雑記として拙いながらも続けているtwitter(http://twitter.com/Toruhashimoto)をチェックしてみてください。今も、年間ベストにぜひ選びたかったナット・バーチャルの新作(アリス・コルトレーンのハープを聴きたくなるような、スピリチュアルな美しさです)から、特にフェイヴァリットの「Peace In Nineveh」をかけながら、この文章を書いているところです。この曲の後には、Uyama Hiroto(カフェ・アプレミディ12周年記 念パーティーでのharuka nakamuraとの演奏も最高でした)も大好きな、アイラ・サリヴァン「Nineveh」を聴くのが定番コース。Nujabesの遺作については、僕が推薦する5枚のCDと共に、12/15発行の「BRUTUS」誌で改めて紹介しました。
最後に、渡辺亨さんと2か月に1回、Bar Musicで開いている選曲会「Toru II Toru」で配布されるフリー・ペーパーに寄せた原稿も掲載しておきます。『My Private Best 2011』のためのテキストとしても、お読みいただけるかと思います。

追記:カフェ・アプレミディ12周年記念パーティーにお集まりいただいた皆さん、そして出演してくれたミュージシャンやDJの皆さん、本当にありがとうございました。心から感謝です。新しい一年も、よろしくお願いいたします。
そうそう、大晦日にカウントダウンDJに招ばれている「庭のホテル 東京」は、とても素敵なホテルですよ。それでは、Nujabesの祈り「Prayer」の「Here, There And Everywhere」からの一節と、「Starting Over」と歌うジョンの魂を胸に刻み、皆さん、よいお年を。

2011 Best Selection for Toru II Toru

01. James Blake『James Blake』
02. Taylor Eigsti『Daylight At Midnight』
03. Gretchen Parlato『The Lost And Found』
04. Me'Shell Ndegeocello『Weather』
05. Bonnie Prince Billy『Wolfroy Goes To Town』
06. JBM『Not Even In July』
07. Gaby Hernandez『Sweet Starry Night』
08. Mia Doi Todd『Cosmic Ocean Ship』
09. Dwight Trible『Cosmic』
10. Thurston Moore『Demolished Thoughts』
11. Jonathan Jeremiah『A Solitary Man』
12. Jonathan Wilson『Gentle Spirit』
13. Heirlooms Of August『Forever The Moon』
14. Alexi Murdoch『Toward The Sun』
15. Patricia Marx & Bruno E.『Patricia Marx & Bruno E.』
16. Patricia Talem『Olhos』
17. Domenico『Cine Prive』
18. Guillermo Capocci『Milesimas』
19. Julian Venegas『Julian Venegus』
20. Stevy Mahy『The Beautiful Side Of A Kreyol Folk Trip』
(順不同)

思いつくままに、2011年によく聴いた「Toru II Toru」テイストのアルバムを歌もの中心に20枚リストアップした(ジャズ/クラブ系はまた別の機会に)。震災、そしてギル・スコット・ヘロンから中村とうようまで、多くの人の死も、僕個人のリスニング・ライフに影を落とした一年だった。内省感、アコースティック、といったキーワードが浮かぶ。曲単位で好きなものなら、他にもいくつも思いつく。
テイラー・アイグスティは昨年末のリリースだが、今年好んで聴いた作品を貫く基調というか、通奏低音となったので、敢えてエントリー。若く才能あるジャズ・ミュージシャンが、ニック・ドレイク/エリオット・スミス/ルーファス・ウェインライト/ファイストからフェデリコ・モンポウまでをカヴァー、というのは象徴的だった。パトリシア・マルクス&ブルーノ・Eも同様で、「You're Free」のたおやかさに何度も助けられた。ニック・ドレイク〜ホセ・ゴンザレスを彷彿させるJBMも、2010年作ながら、この秋よく聴いたので。
No.1はやはり、ジェイムス・ブレイク。彼のまわりにプリンスやディアンジェロ、ジョニ・ミッチェルやビョークが瞬く星座が、僕の頭の中の宇宙には描かれていた(ポリスの「Walking On The Moon」を口ずさみながら)。一昨年のNo.1、ウィリアム・フィッツシモンズはボーナス・ディスクの方ばかり聴いていたので次点。年も押しせまって、いちばん胸を打たれたのは、Nujabesの遺作『Spiritual State』。来年は何と言っても、クエストラヴいわく“ブラック版『Smile』”だというディアンジェロの新作が楽しみ。
12インチは、今年はメロウ&ジャジーなビートダウン・ハウスをよく買っていたが、ベストを挙げるなら、セオ・パリッシュ/Kompleksの両面とも素晴らしいリミックスだったFar Out Monster Disco Orchestra「Keep Believing」。セオ・パリッシュは「Solitary Flight」や「Summertime Is Here」のリプレスも、大きな意義があったと思う。「Thinking Of You」「Wang East」を収めたニュージーランドのロード・エコーの12インチも、フロアを暖めるときに重宝した。
リイシューCDも、音質面では今ひとつのものも多かったが、印象に残る作品は少なくなかった。フリー・ソウル系ならウィリー・ライト/グウェン・コンレイ/メルトン・ブラザーズ・バンド/スペースアーク/パーシー・メイズ。フォーキー〜SSW〜プレAORならダニー・ロング/マイケル・ケリー・ブランチャード/グレッグ・ヨダー/ヘンリー・ギャフニー、そしてフィリップ・グッドハンド・テイト(3rd)とマイケル・ディーコン(1stに気をとられて見逃しがちだった2nd)も特筆すべき。カナダのイアン・T・マクレオドやエアボーン〜ドン・タリス、自主制作盤のナオミ・ルイスやワシントン・アップル、ファンキー・ロック寄りのラインストーンズやバトゥーあたりも。ソフト・ロックはニュー・ウェイヴ/ジョー&ビング/ハグッド・ハーディー&モンタージュなど。ジャ ズは待望だったビリー・パーカー、アフリカのフランシス・ベベイのボックス。近年の録音では、エストニアのマリ・カルクン、ノルウェイのギスレ・ボルゲ・スティーヴェ、それにアルゼンチンのフォルクロリック・ジャズや西アフリカのコラ音楽の再流通作もよく聴いた。コンピレイションは残念ながら、新たな視座を与えてくれるものはなかったが、ジョン・ベルトランやマントラーの編集盤は好企画だったと思う。

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