スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- - -
7月22日──橋本徹のアプレミディ・レコーズ&DJ情報

『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』がいよいよリリースされました。HMVのホームページには、このコンピレイションにこめた思いを詳細な解説と共に語り尽くした橋本徹の『チルアウト・メロウ・ビーツ』対談も掲載されましたので、ぜひ読んでみてください。夏の始まりを告げる先の連休は、僕には惜愛の情が募る日々でしたが、快晴の日曜日に今年初めて葉山の海に出かけ(白い波のような雲に七色の虹が映る「彩雲」がきれいだった)、このCDは海へのドライヴの行き帰りにもパーフェクトなことを確信してきました。
また、先週インパートメントからいただいたharuka nakamuraの新作が素晴らしくて、よく聴いています。「陽が沈んでから夜が来るまでの淡く美しいその時間に捧げる」とクレジットされた、美しく手触りのよいフォトブックの装幀による『twilight』というアルバム。音楽の質感も写真の陰影も、寂しいような懐かしいような、夕闇の切なく儚いメランコリーを表現している。彼もまた、僕が『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』に託したいと思っていた心情と同じことを考えていたのだ。「夕べの祈り」という曲に始まり、「harmonie du soir」そして「音楽のある風景」という曲名を発見して、深い感慨に包まれた(決して互いのタイトルを打ち合わせしたわけではなく、全くの偶然、いや必然だったのだ)。“gratitude to nujabes, Gratefully yours”という謝辞もあり、僕は去年の夏、Nujabesの家でのバーベキュー・パーティーの光景を思い出していた。僕とNujabesはすっかり気持ちよく酔ってしまい、たらふく食べてソファで寛いでいたが、その間リヴィングではharuka nakamuraとUyama Hirotoがひたすらセッションを続けていたのだ。その場にいた者なら忘れるはずはない、それは奇跡のように美しい音楽だった。
haruka nakamuraとUyama Hirotoもまた、僕にとって心の調律師のような音楽家だが、カルロス・アギーレのファースト・アルバム『Carlos Aguirre Grupo』(Crema)も、いよいよアプレミディ・レコーズから日本盤がリリースされました。お待たせして申し訳ありませんでしたが、皆さんがそれぞれお気に入りの水彩画のジャケットを手にしてもらえたら嬉しいです。そして素晴らしいことに、10月にはアルゼンチンからカルロス・アギーレがやってきて、初の来日公演を観せてくれることも決まりました。彼の素晴らしい音楽を生で聴くことができるなんて、本当に夢のようですね。
アプレミディ・レコーズからはさらに、夢のような世界初CD化が続きます。たびたびお伝えしてきましたが、何とか夏に間に合いました、ハワイの至宝ルイの名盤『Lui』が7/31入荷予定です(全世界1,000枚限定プレス)。「My Lover」のカラオケを(結婚式で歌うため)ボーナス・トラックとして収録するというアイディアは、何となく照れくさくなって諦めましたが、何度聴いてもこの曲は、素直でロマンティックな最高のラヴ・ソングだな、と心洗われます。もちろんこのアルバムが、夏のドライヴの(というか人生の幸福な時間の)必需品であることは、言うまでもありません。それでは最後に、このレコードが抱いているハワイ特有の甘やかで爽やかな空気感を清々しく綴った松永良平(ハイファイ・レコード・ストア/リズム&ペンシル)くんのライナーをお読みください。

Lui『Lui』
知らない場所から届いた一枚の絵葉書みたいなレコードだった。
宛名はなく、しかしとても親しみがこもった手紙を読むように聴くことが出来る思いがけない良さがあった。歌声に、演奏に、グルーヴに、常夏の島で暮らす人間の体温がやさしく感じられた。その人のことを全然知らないのに、愛おしいと思えた。
その理由は、このアルバムのジャケットが、まるで観光地のポストカードみたいなムードを持っているからだけじゃない。ハワイ人シンガー・ソングライター、ルイ・ウィリアムスが自らのファースト・ネームをタイトルにしてリリースした唯一のアルバムのなかには、そんなふうに人の心を動かす魅力があると言いたいのだ。
ハワイ諸島で二番目に大きな島として知られるマウイ島のリゾート・ホテル、マウイ・サーフ・ホテルが青い海の広がるビーチに美しく建つ姿をとらえた一枚の写真に、ただひとこと“Lui”とだけ書かれたアートワーク。ジャケットを裏返せば、このアルバムで演奏をしている4人のハワイ人ミュージシャンの姿と収録曲、参加メンバーなどのレコーディング・データ、そしてルイ・ウィリアムス本人が書いたシンプルなセルフ・ライナーノーツを確認することが出来る。驚くべきことに、アメリカからハワイに移り住み、晩年をハワイで過ごしたスチール・ギターの達人、ジェリー・バードもレコーディングに参加している(おそらく「Kaanapai」「Hawaiian Wedding Song」などで聴けるスチールは彼だろう)。
ライナーノーツでは、マウイ・サーフ・ホテルで6年にわたって演奏をしてきたとルイは書いている。すなわちそれは、夕暮れ時やナイトタイムをくつろぐ観光客たちに、耳当たりのよいバックグラウンド・ミュージックを提供するラウンジ・バンドとしての仕事でもあった。実際、ハワイに限らず、世界中のリゾート・ホテルのラウンジには、そうしたかたちで音楽を提供するミュージシャンたちが数限りなく存在する。彼らの多くは、自分たちのショウに居合わせたお客さんのために、おみやげのつもりでレコードを自主的に制作し、そこで販売する。だから、多くのレコードにメンバーの直筆サインが入っている。ただし、一般的なレコード店には、そうしたレコードは決して出回ることがないし、もちろん音楽雑誌に紹介されたり、遠く離れた音楽ファンの耳に入る機会も皆無と言っていい。
だが、そうした環境にあっても、時代と才能の巡り合わせが、ときおり心地よい奇跡を起こすことがある。自分たちのレコードを作るという決意が、彼らが音楽の道を志したその初心や夢をくすぐって、予期せぬオリジナリティを作品に残させるのだ。
ルイもまた、ホテルの厚意によりレコード制作のチャンスを得たときに、ミュージシャンとしての存在意義を自らに問いただした者のひとりだったのだろう。ハワイという土地柄で言えば、観客から求められるのは、より伝統的なハワイのトラディショナル・ソングや南洋のムードを感じさせるスタンダード・ソングであることは否定しようがない。そこで自分のオリジナル曲を演奏するということは、ひとつのチャレンジでもある。
だが、そこには時代の追い風もあった。この70年代後半という時代は、セシリオ&カポノやカラパナなど、アメリカのウェストコースト音楽の影響を強く受けた若者たちによるハワイアン・コンテンポラリー・サウンドの隆盛期でもあった。76年からは、ホノルルのラジオ局KKUAの主催で、若者たちからデモ・テープを募集し、新時代のハワイアン・ポップスを広く盛り上げてゆくという運動“HOME GROWN”が毎年行われ、その優秀曲を集めたアルバムは毎年破格の売上を記録した。ルイがアルバムを制作した78年という時代は、まさにその渦中であったのだ。
結果的に言えば、ルイが残したこの唯一のアルバムは、同時代人としてハワイの若者たちを突き動かしていたモダンなグルーヴへの関心と、彼がミュージシャンとして生きていたホテルのラウンジという現場の気分を伝える感覚とが共存した稀有な作品になった。現代の聴き手を最初に魅了するのは「My Lover」や「Oh, Oh (Think I'm Fallin' In Love)」といった曲のすぐれてコンテンポラリーなグルーヴやコード感だろうが、やがて「Kaanapali」や「People's Happiness」といったトラディショナルな気風と落ち着きを持つ曲に心をゆっくりと奪われてゆく。そのうち、オリジナル曲の合間を埋めるように収録されたスタンダード・ソングも、ほのぼのとしたヴァラエティの一部となり、ゆるやかな輪を描いて、一枚のレコードに収斂してゆく。気がつけば、ぼくたちは、まるでマウイ・サーフ・ホテルで彼らが毎晩行っていたであろうショウに居合わせているような、おだやかでしあわせな錯覚のとりこになっているのだ。
また、ルイが活動した場所が、ハワイ州の玄関口として栄える都市ホノルルやワイキキ・ビーチを持つオアフ島ではなく、マウイ島であったことも、このアルバムの風通しの良さに大きく影響していると思う。ホノルルから距離を置き、流行とは少し離れた場所で自分たちの音楽でオーディエンスをもてなすことに落ち着いて取り組めた彼の音楽には、同時代の若いミュージシャンよりもずっと自然に大人っぽいクールさが備わっていったのだろう。
今回のCD化のきっかけは、幻のミュージシャンだと思われていたルイ・ウィリアムス本人と、本作のオリジナル・ライナーで“生後6か月のルイ三世”とクレジットされていた彼の息子(現在はシアトルでミュージシャンとして活動している)を通じてコンタクトが取れたことから始まったという。ルイ自身もMySpaceを持ち、近年のオリジナル曲を2曲アップしている。ルイ・ウィリアムスはミュージシャンとしてまだ現役感を持って暮らしているのだ。素晴らしいことだ。
知らない場所から届いた便りに、ぼくたちが返事を書くときがようやく来た。そんな気分で2010年の夏、ぼくはこのアルバムを聴いた。
松永良平(ハイファイ・レコード・ストア/リズム&ペンシル)

追記:7/25(日)は音楽への愛にあふれたサンデイ・アフタヌーン・パーティー「harmony」です。最近とみにピースフルでフレンドリーな雰囲気が心地よく楽しいこのイヴェント、コンピレイション『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』の由来のひとつでもありますので、ぜひ一度、足を運んでいただけたら嬉しいです!

「harmony」
7/25(日)18時から24時までカフェ・アプレミディにて入場無料!

カフェならではのインティメイトな空間に響くやわらかなグルーヴ。オール・ジャンルの音楽にコーヒーとアルコール。さまざまなものが重なり合い、 溶け合って、まさに「harmonie du soir」(夕べのしらべ)とでも言うべきものが漂います。アプレミディ・レコーズの新しいコンピのリリースと呼応するかのような、メロウネス、サウダージ、そして、その果てにある愛としか言いようのない何かを届ける「harmony」第6回。満天の星空の下、夏の夜に開催です。ようこそ「harmony」へ!(Takahiro Haraguchi)

harmony classics
Moody / Ol' Dirty Vinyl
これまでに「harmony」で最もかけたムーディーマンは、美しいピアノと女性ヴォーカル&ゴスペル・コーラスが光を呼ぶ「The Thief That Stole My Sad Days... Ya Blessin' Me」だが、先頃届けられたEPにもしびれた。タイトル曲は彼にしか出せないカッコ良さ。聴けばわかる漆黒のアート。こんな曲でいつまでも踊っていたい。(橋本徹)

Onra / Long Distance
去年のDam-Funkの快進撃から始まった80's Boggieブームを2010年はこの男が引き継ぐ! ヴェトナム系フランス人Onraが放つ、まさにあの頃の「メロウネス」と今の「ビーツ」が組み合わさった最高の一枚。もう今年のベスト入りは決定でしょ。(Takeru John Otoguro)

DJ Cam / Summer In Paris
90年代の煙たくずっしりとした低音を響かせるCamももちろん好きですが、「harmony」でかけるなら夏らしく爽やかなこの曲を選びたいです。夏の夜、公園通りと代々木公園をアプレミディから眺めながら、この曲聴けたら最高だろうな。この季節を通してレコードバッグについつい入れちゃう一枚です。(haraguchic)

DJ Jazzy Jeff & The Fresh Prince / Summertime
夏が来ると聴きたくなるというより、ついつい針を置いてる一枚。バッシングを受けつつもRapの大衆化に大きく貢献した二人。Kool & The Gang大ネタのふわふわしたビートに彼らが過ごしたフィラデルフィアの夏を思う。(mom)

Blaze / I Wonder
名門モータウンに残した1990年の歴史的名盤『25 Years Later』に収録。Curtis Mayfieldの「Trippng Out」のような トラックとRonald Isleyを彷彿とさせるファルセットといった表層だけでなく、心の奥深くまで届く暖かさが70年代ニュー・ソウルそのもの。(NARU)

Kaoru Inoue Presents Chari Chari / Aurora
心の底から込み上げてくる"この感情"は何と表現したら良いのか難しい……響き渡るギターの音色とヴォーカル。タイトル名と綺麗なジャケットを理由に、なんとなく買った“この曲”には「ただただ素晴らしい」の一言。日本人アーティストKaoru Inoue氏による美しくも切ない一曲。(YUJI)

- - -
7月13日──橋本徹のアプレミディ・レコーズ&DJ情報

サッカー・ワールドカップはスペイン優勝、オランダ準優勝と僕が望んだ結果になり嬉しい限り。日本チームの健闘は讃えたいが、僕は(勝敗を怖れない)美しい攻撃サッカーへのこだわりを支持する。人生も同じかな、と思うから。
先週末は関西へ出かけてきた。梅雨の合い間の天気のよい土曜の午後、姫路・的形のヨット・ハーバーに面した「HUMMOCK Cafe」で心地よい時間をすごした。リースリングの白ワインに、坊勢ダコのパテや鶏のコンフィのホワイトソース、それにトマトのロールケーキと自家焙煎のタンザニア・コーヒー(苦味が好きなのです)。音楽はやはり『素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』を流してくれていた。店には「Suburbia Suite」や『音楽のある風景』4部作が飾られ、テーブルの棚には「relax」のアプレミディやフリー・ソウルの特集号も置かれている。夕暮れに合わせて防波堤の先まで足をのばし、いくつか写真も撮った。
夜は神戸に戻って、僕の友人・金子修一の店「haus」の10周年記念パーティー。とても楽しく、温かい笑顔にあふれたイヴェントだった。物との出会い、人との出会いの物語を大切にする、この素敵な店のアニヴァーサリーに相応しい、心が通い合う瞬間が何度もあった。中でも「モン・パリ」のミシェル・ルグラン「My Baby」から「ジェラシー」のアルマンド・トロヴァヨーリ「Sei Mesi Di Felicita」(月一度の幸せ)への、金子修一と僕のDJリレーは、パーティーのハイライトだったと思う(どちらも僕には特別な思いと思い出があるレコードだ)。その後はあまりに楽しすぎたのか、記憶と携帯電話を失くしてしまい、皆さんをお騒がせして恐縮だったが。
翌日は極度の二日酔いの中、「haus diningroom」でまぜまぜご飯のランチ。僕はもう10年近く前、この店でこのメニューを食べて外に出たところを、向かいのビルの窓から金子修一に声をかけられ、彼と知り合いになったのだ。歩いて30秒かからない「ディスク・デシネ」に寄って、前夜ずいぶん迷惑をかけたはずのデシネ・クルーに挨拶した後、その金子修一の会社「D.E.F. COMPANY」が営む3軒をまわる。神戸・海岸通がこれほど魅力的な街になったのは、彼らの功績のひとつだろう。帰京後、「D.E.F. COMPANY」の設立から15年を振り返った本「DIARY OF 15 YEARS」を読んでいてそんなことを思い、熱い何かがこみ上げた。「HUMMOCK Cafe」8周年の小冊子と同じように、忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる、かけがえのない一冊だ。素朴な言葉に宿る強い信念のようなものに心打たれる。僕はその本と、残念ながらもうすぐ閉店してしまうという「Vivo, Va Bookstore」で買ってきた串田孫一の古書「雨あがりの朝」を、何となく枕元に飾ってみた。
神戸ではもうひとつ、素晴らしい店に立ち寄った。前の晩には一緒にDJをした大垣徹也くんが代表を務める、北欧アンティークの生活雑貨を扱い、北欧の雰囲気を味わえるカフェも併設した「markka」。特に僕の好きなアラビア社の食器が大充実で、グスタフスベリやリンドベリの作品群がどれだけ自分の目に幸福を与えてくれるかも再認識した。フィンランドで買いつけてきたというマリメッコのヴィンテージのテキスタイルを使ったポーチと、ギフト・パッケージの箱とリボンが洒落ていて思わず惹かれたクッキーの詰め合わせをおみやげに買った。
日曜の夜は、名古屋に住むマイ・オールド・スポート、高橋孝治を訪ね、いつものように酒と音楽(と人生訓)を満喫し、月曜朝の新幹線で東京に帰ってきた。今回の旅のお供はスコット・フィッツジェラルドの美しすぎる文章だった。ギャツビーのデイジーへ抱いた気持ちに共感を覚えながら、小雨の品川駅を降りた。
渋谷に戻ってくると吉報が届いていた。アルゼンチンのパメラ・ヴィジャラーサさん手描きの水彩画800枚が、美しい装幀にくるまれてスペイン経由でようやく到着したのだ。この素晴らしい(一枚ずつ全く別の)アートが封入されるカルロス・アギーレのファースト・アルバムは、晴れて7/17アプレミディ先行入荷、7/22全国発売と決定。本当にきれいな作品なので、このページにその一部を写真掲載しておこう。待ったかいがあった、と心から思う。

そして昨晩は、やはり7/17アプレミディ先行入荷、7/22全国発売となる僕の最新選曲コンピ『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』(夕べのしらべ)についての座談会だった。“山ブラ”会長・石郷岡学さんからいただいた銘酒・山形正宗から、沖縄のマサが贈ってくれた極上の宮古島マンゴーまで、舌に至福をもたらしてくれる豊潤かつ芳醇な絶品が会話を彩ってくれたその模様は、来週にはHMVのホームページに掲載される予定なので楽しみにしてほしい。昨夏の『Mellow Beats, Friends & Lovers』から今春の『素晴らしきメランコリーのアルゼンチン』までのこの一年間の感情の流れの集大成、といった大きな感慨さえ抱くそのCDについては、引き続き[web shop]のページに詳しく書くが、200枚を越えた自分のコンピレイションの中でも(自分らしいという意味で)代表作になると自負しているその内容をいち早くお伝えしたいので、曲目表と吉本宏がドビュッシー&ボードレールをモティーフに書いてくれたライナーを、この後に掲げておく。

『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』
01. San Solomon / Balmorhea
02. All Loved Out〈Ilu 'Ife (Love Drum)〉/ Ten City
03. Goddess Of A New Dawn〈Acroostic Version〉/ The Bayara Citizens
04. Mother Nature / Joaquin 'Joe' Claussell
05. Fix The Stars / Girl With The Gun
06. The River / Marz
07. Sun Valley / Rickard Javerling
08. Moon Child / Pharoah Sanders
09. Drrrunk / Pascal Schafer
10. The Prayer〈Acroostic Version〉/ Jephte Guillaume
11. Only The Initials... CM / Funky DL
12. I Lost My Suitcase In San Marino / Dadamnphreaknoizphunk
13. Fallin' Down〈Mitsu The Beats Remix〉/ Julien Dyne feat. Parks
14. Message To The Architects Pt.1 / Rise
15. Short Description Of Wishes / 17 Pictures
16. Emotion / Mia Doi Todd With Andres Renteria
17. One Dance / Don Cherry & Latif Kahn
18. Improvisation Day 2 / Build An Ark

クロード・ドビュッシーは、1889年にそれまで影響を受けていた後期ロマン派のドイツの作曲家ワーグナーの重厚なワーグナー至上主義との決別を図り、その年のパリ万国博覧会で接したインドネシアのガムラン音楽や日本の浮世絵などの東洋芸術に触発され、その後、視覚的なイメージを音で表現するような印象主義と呼ばれる独自の作風を確立していく。
ドビュッシーにとっての転換期にあたるこの時期に残された作品が、詩人シャルル・ボードレールの『ボードレールの五つの詩』に曲をつけた歌曲だった。ボードレールは『音楽』という詩の中で、「音楽はしばしば私を奪う、まるで海のように」と歌い、『火箭』の中で「音楽は天を穿つ」という言葉を残し、彼もまた、言葉にできない“音楽”をこよなく愛し、折にふれて“音楽”そのものをイメージし表現しようとした。

花々はみな香炉のごとく香りを放つ
音楽と香りはこの夕べの中に舞う
メランコリーなワルツ、物憂げな眩暈

ドビュッシーによる歌曲『ボードレールの五つの詩』の中の一篇「夕べのしらべ/Harmonie du soir」は、静かなピアノの旋律に、まるで夕暮れに咲く甘美な花々がいっせいに匂い立つような艶やかな詩が美しく溶け込んでいる。『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』は、その「夕べのしらべ」をタイトルに冠し、音のイマジネイションとともに世界を旅するようにメディテイティヴな音楽を集めている。
テキサスの広々とした大地の陽だまりに穏やかな風を呼ぶバルモレイの「San Solomon」から、澄みわたるピアノと弦の響きに導かれて鮮やかなグルーヴを宇宙に解き放つブルックリンのジョー・クラウゼルのサウンドへ流れ、さらにイタリアのガール・ウィズ・ザ・ガンの「Fix The Stars」の光の粒子の反復へと、音は美しく連なっていく。ドイツのメルツの儚い歌声はゆっくりと河を渡り、スウェーデンのリカード・イェヴェーリングは夕暮れの渓谷に太陽の残り香を輝かせ、やがてファラオ・サンダースによる「Moon Child」の慈しみに満ちた歌声が月明かりに優しく照らされる。夕闇の瞑想を思わせるミア・ドイ・トッドの空間に余白を持たせた「Emotion」の音の響きや、ドン・チェリーとラティフ・カーンによる「One Dance」の木管楽器と深みのある打楽器タブラの響きは、アルゼンチンのネオ・フォルクロリック・ジャズにも通じる独特の空気を感じさせる。そして、アメリカ西海岸の奇跡、ビルド・アン・アークの聖なるレクイエム「Improvisation Day 2」のスピリチュアリティーによって傷ついた魂は静かに鎮められる。

NujabesやCALMのアートワークも手がけてきたFJD藤田二郎によるジャケットのペインティングには、ここに収められた音楽が秘める世界観が最も美しく象徴されている。燃えさかる太陽が西の空へと沈み、赤紫に染まった夕暮れの雲が幾重にも重なり幻想的な色彩を帯びている。あたりには静かなる闇の足音が響き、一瞬すべての音がやむ。鳥たちは月に向かって羽ばたき、原色の花弁をくねらせる夜の花が妖艶に咲き乱れる。

吉本宏

追記:今週末は7/17(土)、久しぶりのDJパーティー「Soul Souvenirs」がカフェ・アプレミディで開かれますので、皆さんお誘い合わせのうえ、ぜひ遊びにいらしてください!

「Soul Souvenirs」
7/17(土)23時から翌5時までカフェ・アプレミディにて入場無料!

このイヴェントでは純粋に、ただただ音楽を感じたいと思っている。
自分の心に深く響く、強く美しい音楽だけを聴きたいと思っている。
楽しいときは笑顔がこぼれ、哀しいときは涙がこぼれる、感情豊かな人間が生み出した音楽。
Brother, where are you? ──ソウル・ミュージックという言葉に得も言われぬロマンを感じる貴方に、この気持ちは伝わると信じる。
(橋本徹)

DJ's Choice for Soul Souvenirs
Freddy Cole / Brother Where Are You
ブラザー・ホエア・アー・ユー♪ 心の奥底で永遠にこだまする、胸が熱くなるリフレイン。滋味に富んだ歌声が魂のひだまで染みてくる、究極のソウル・ミュージック。オスカー・ブラウン・ジュニアの名曲をナット・キング・コールの弟が歌う一世一代の名演。(橋本徹)

Maxine Brown / We'll Cry Together
Mod達に愛好され続ける女性ソウル・シンガーの1969年作品。個人的には最も好みな時期なのですが、彼女のキャリア的にはいわゆる「隙間」な時期のアルバムかもしれないですね。所々に垣間見られる少しだけポップでほんの少しだけロック、フォークなアプローチが嬉しい。ラヴィン・スプーンフルのカヴァーが秀逸なんですわ。(山下洋)

The Moments / Look At Me
ネオアコとかばっか聴いてた頃、当時ノアビル5FにあったZESTに通ってた。で、そこにちょっとだけソウルの棚があって、表がシルヴィア「Pillow Talk」、裏がモーメンツ「Girls」というアヤしい12インチを買った。これが泥沼の入口だったのだが、このパーティーもそんな小さなレコ棚のような存在でありたいな。(宿口豪)

Celi Bee / Fly Me On The Wings Of Love
深い時間帯から明け方の空気感が物凄く自分の中では大事なシチュエイションで、音楽の力は本当に魔法のようなもの。このアルバムに収録されている「For The Love Of My Man」を聴くと人肌恋しくなり、好きな人を抱きしめたくなる。そう思わせる曲って大切なソウル・ミュージックってことだと思う。(Chintam)

Macky Feary Band / You're Young
僕はハワイが大好きだ。朝から海岸線をドライヴし、澄んだ空、蒼い海、太陽を感じ、浮かれた気分に。もちろんカーステレオからはマッキー・フェアリーの甘い歌声がハワイのメロウな空気を感じさせてくれる。タンタラスの丘で、ホノルルの夜景を見ながら、好きなあの娘とロマンティック・ムードに、みたいなことがあれば最高っ!(ユズル)

- - -
7月5日──橋本徹のアプレミディ・レコーズ&DJツアー情報

先ほど道東DJツアーから東京に戻ってきたところ。旅の終わりには何となく情趣的になって、いつもセンティメンタルな気持ちになる。楽しかった4日間の記憶を、歳をとった自分のための「備忘録」として、ここに記しておこうと思う。
7月2日
イヴェント前夜。7/22リリースのコンピレイション『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』のマスタリングと入稿を慌ただしく終えて、弟子屈町・川湯温泉に到着。神経の疲れにも効くという日本一のかけ流しの強酸泉にゆっくりと浸かる。そして楽しみにしていた「味楽寿司」へ。まずは北海道に来たなと思わせる大ぶりのツブ/ホッキ/ホタテをつまみで。ブラジル×オランダ戦をTVで観ながら、絶品の鱒子(筋子を繊細に上品にした感じ)、握りでいただいた鱒の助(紅トロ)に感激。以前に網走「龍寿し」でいただいたオホーツクの釣りキンキに負けない美味さ。酒は根室の北の勝の「まつり」で、初日から最高の晩酌に。
7月3日
早起きしてもう一度ゆっくりと湯に浸かり、午前中からドライヴへ。霧の摩周湖。やはり全く水面が見えない。天候がよければ、夜は天の川がきれいに見えると知って、いつか(来年の七夕は)星空のドライヴを、と誓う。
昼食は網走の「そば切り温」で、とろろ蕎麦と牡蠣・海老の天ぷら、酒は蕎麦に合うという釧路の福司。珍しい野鳥も遊びに来るという閑静な山里にある、とても美味しく感じのよい落ちついた店。イヴェントが行われる北見へ向かう途中、美幌に寄ってカフェめぐり。日本家屋を改装した居心地のよい空間に香り高い自家焙煎のコーヒーやレアチーズケーキが美味しかった喫茶室「豆灯」、お客さまが思い思いに寛いでいるのが印象的だった雑貨も扱う「森音」。
夕方5時、北見に着くとさっそく腹ごしらえ。激ウマと噂を聞いていたホルモンの店「ほりぐち」で焼き肉づくし。刺身で出せる肉しか出さない、という誇りが伝わってくるようだった。
午後7時、いよいよ「音楽のある風景」と名づけられたパーティー。ゆるりとメランコリックな選曲もしたいと思って、オープニングから僕がDJ。『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』に通じる「夕べのしらべ」的メロウ・セレクション。
そして続くライヴが本当に息をのむほど素晴らしかった。まだ15歳、Satoちゃんの歌とギターに、普段は心の奥に潜んでいる柔らかな感情を震わされる。原石の輝き、という言葉では足りないピュアな美しさ。オリジナル曲から「Fly Me To The Moon」「Lovin' You」や「夜空ノムコウ」のカヴァーまで、どの歌声にも時を止めるような人生の特別な時間が宿る。北見のコリーヌ・ベイリー・レイ。決して忘れることはないシーン、一刻も早く僕の友人たちに観てもらいたい(これを読んでいるレコード会社の方は慌ててください)。
もちろん北海道各地から集ったDJ陣(FAT MASA/KOYAMA DDS/juri)のプレイも、暖かなオーディエンスも最高だった。“REMEMBER WHERE YOU ARE”という心に響くメッセージがプリントされた、えんじの布バッグをプレゼントされたのも嬉しかった。
7月4日
「Ciel Bleu」というレストランで塩やきそばのランチ。ご当地名物と言われるメニューは必ず食べるがそれほど感心することがない僕だが、これは(品もよくて必然性もあって)美味しかった。ホタテ/カニ/イカ、アスパラガスやジャガイモといった北海道の味覚に、半熟玉子がとろり。
北見から釧路への移動は車で2時間ちょっと。5年連続となるこの街を訪れると、いつも寄らせていただく赤ちょうちん横町「きくちゃん」で夕飯。ウニ/筋子/鱈子/たらば蟹/中トロに、山わさびをたっぷり擦ったレバ刺や茹でアスパラガス、そして思わずお替わりしてしまった「きくちゃん」特製のかじか汁。冷や酒は再び北の勝で。すっかりほろ酔いになり、酒の肴のおみやげを抱えDJへと向かう。
その名も「Free Soul」と題されたDJパーティー。毎度のことながら、釧路は日本一のソウル・ミュージックの街、と思わせられる。久しぶりにオデッセイの「Battened Ships」までかけてしまった。いつものアット・ホームな雰囲気に加え、「福澤諭吉が未来の音楽を聴くつもりで来ました」と浴衣で踊っている男性がいたのも楽しかった。恒例の打ち上げでも酒がすすみ、港町には素敵な女性が多い、という自説をより確信するようになり、織姫と彦星のような気分でこれからも毎年七夕の頃にDJに来たいな、なんてことも思ったりした(バカですね)。
7月5日
夕暮れの東京に帰ってきて、さっそく『Chill-Out Mellow Beats 〜 Harmonie du soir』の色校正チェック。FJDによるジャケットのペインティングが本当に素晴らしい。テン・シティー「All Loved Out」のピアノ・ダブ、バヤラ・シティズンズ「Goddess Of A New Dawn」とジェフテ・ギオーム「The Prayer」のアクルースティック・ヴァージョン、自身の「Mother Nature」と4曲を今回ライセンスしてくれたジョー・クラウゼルに、先日インパートメントの稲葉ディレクターが選曲表と共にこのアートワークを送ると、「君たちのやりたいことはよくわかった。共感する。FJDも紹介してほしい」と連絡があったというのも嬉しすぎるエピソード。このコンピがアプレミディに先行入荷してくる7/17を楽しみにお待ちいただければと思います。
逆に7/7入荷予定だったカルロス・アギーレのファースト・アルバムの日本盤が、パメラ・ヴィジャラーサさんが一枚ずつ手描きしてくれた水彩画の到着が遅れ、今のところリリースが1週間ほどずれこんでしまいそうと連絡を受けました。お待たせして大変申し訳ありませんが、これも手づくりのオリジナル・スリーヴにこだわった結果、と暖かい目で見守っていただけたら幸いです。

追記:今週末は関西に出かけてきます。アプレミディをいろいろな面で助けてくれている友人の金子修一が神戸・海岸通で営む「haus」の10周年記念スペシャルとして、「Free Soul for Cafe Apres-midi」というパーティーが7/10(土)に「BLUEPORT」で催されるのです。東京からも多くの友だちが駆けつけますが、少しでもたくさんの方に、この愛すべき店の10年を祝いに集まっていただけたら嬉しいです。

再追記:7/9(金)にTokyo FMで放送される「Blue Ocean」という番組(8:30〜11:00)に、ワールドカップ・ベスト4のオランダ/ドイツ/スペイン/ウルグアイのサッカーと音楽についてのトーク&選曲で出演します。僕はスペイン優勝、オランダ準優勝を期待しています。もしよかったら聴いてみてください。

再々追記:前回このページでお伝えしたハワイ産AORの最高峰、ルイの名作中の名作『Lui』をアプレミディ・レコーズから世界初CD化するに際して、松永良平(ハイファイ・レコード・ストア/リズム&ペンシル)くんが書いてくれたライナーがとても素晴らしかったことも付け加えておきたいです。読んでいて僕も、旅先からの絵葉書を受け取ったような爽やかさに包まれました。リリース日が決定次第、ここに掲載させていただこうと思っていますので、お楽しみに。
- - -
| 1/1 |