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3月24日──橋本徹のイヴェント情報
 
Nujabesがもうこの世にいないことを、まだとても受け止められないでいる。昨夜も彼のことを考えながらロバート・ワイアットの「At Last I'm Free」を聴いていて、何か放心状態のように言葉を失い涙が零れた。個人的には彼がNujabesとなる前の、ナイーヴで不器用な渇いた少年のような姿が印象深くよみがえる。フリー・ソウルのDJパーティーに熱心に通ってくれていた彼が、後にメロウ・ビーツの生みの親とも言える存在になるとは、もちろん当時は想像もできなかった。今はただ悔しいとしか言えないけれど、彼はその後、公私にわたって多くの幸福な瞬間と永遠に色褪せない景色を生み出したと思う。どうもありがとう。改めて謹んでご冥福をお祈りいたします。
先の連休に福岡・Stereoで開かれたイヴェント「Suburbia Suite 2010」では、まずNujabesの「Reflection Eternal」を天国に捧げてからDJを始めた。“You're a flower. You're a river. You're a rainbow.”というフレーズが優しく木霊した。そして暖かな拍手が起きた。集まってくれた皆さん、企画してくれた皆さん、本当にどうもありがとう。ニーナ・シモン「Tomorrow Is My Turn」〜ホセ・フェリシアーノ「Chico And The Man」でフロアが沸いたときも、とても嬉しかった。
翌日は今回アテンドしてくれたアユミちゃんの厚意で、吉本宏と共に佐賀・嬉野温泉まで足を伸ばした。山里の緑に囲まれた椎葉山荘「しいばの湯」が素晴らしかった。渓流のせせらぎが聞こえる雰囲気の良さもさることながら、なめらかな湯の質も香りもまさに僕ら好み(嬉野は日本三大美肌の湯に数えられているそう)。浴後の夕食も、吉本くんが出汁づかいを絶賛した優しく繊細な味つけで、特注した佐賀牛の網焼きにも舌鼓を打った。
さらに昨日の昼にいただいた、温泉湯どうふ(とろける湯どうふ)が絶品だったことも特筆しておきたい。朝から早起きして霧雨と湯けむりの美しく心鎮まる光景を眺め、風情のある茶粥の朝食を摂り、清流「紅梅の湯」、そして再び「しいばの湯」にゆっくり浸かった後に向かったのは(車中のBGM『素晴らしきメランコリーの世界』が風景にとてもよく合っていました)、あの「美味しんぼ」に取り上げられたことでも知られる宗庵「よこ長」。嬉野の湯で煮込むほどに成分の作用で口の中でとろける、まろやかな舌ざわりと鰹節・生姜・青葱をはらりとかけた上品な風味。冷や酒もまさに今の季節にしか味わえない「能古見のあらばしり」が最高すぎて、僕はこの座敷で半日はちびちび飲っていたいという気分でおかわりを続けてしまった(酒友・山下洋とも一緒に来たかった)。
食後は名宿・大正屋のティー・ラウンジに戻って抹茶と茶ようかん。普段はあまり甘いものを口にしない僕だが、これも美味かった。雨に煙る緑の庭を眺め心身ともに休まり、大好きになった鈴木清の美しい陶器のディスプレイに囲まれたこのサロンは理想の空間かも、とさえ思った。東京(現実)へ帰ることの憂うつさえも、霧雨が静かに洗い流してくれるような気がした。宵闇の福岡空港で飛行機に着席したとき、僕の胸に去来していた感情は、今はうまく言葉にすることができない。ただ人生の大切だった場面を順々に思い返していた。
現実に引き戻された今日は、夜になって出かけたブルーノート東京でのジュールズ・ホランドとリズム&ブルース・オーケストラの公演が楽しかった。音楽好きが気軽に集まるロンドン的な雰囲気で、生ける伝説(と言われて久しい)リコ・ロドリゲスが2曲歌ったのにも感激した。
そういえば先週金曜の「bar buenos aires」で、奇しくも日本ツアーのウェルカム・パーティーのようになったアグスティン・ペレイラ・ルセーナのライヴも最良のヴァイブに包まれていた。最初に録音したという「宇宙飛行士」を始め敬愛するバーデン・パウエルの曲、そしてもちろんアントニオ・カルロス・ジョビンのナンバーと、やはり生ける伝説と言えるアルゼンチンのボサノヴィスタの姿を目に焼きつけた。とりわけ「Sambaden」からメドレーで流れた「Tristeza」、続く唯一ギターを変えてシタールのような音色で演奏された、バーデンがブラジル北東部の盲目の詩人アデラルドに捧げて作った「O Cego Aderaldo (Nordeste...)」には心底しびれた。
ラストで披露された「オサーニャの唄」も同じような神秘的かつ解放的な音楽の魔法が伝わってきて、僕はかつてアグスティンに讃辞を寄せたヴィニシウス・ジ・モライスの伝記映画の印象的なワン・シーンを思い出していた。アンコールでは「何かリクエストを」という彼の言葉に「プチ・ワルツ!」と叫んだら、「Pequena Balsa」を弾いてくれて、会場中に笑顔が零れそうになったのも忘れられない。僕は彼がカフェ・アプレミディのソファに腰かけ、丁寧にサインしてくれたレコードやCDを(ひとつひとつが心のこもった違う文面なのです)、一生の宝物にするだろう。今週土曜にはもう一度、彼のライヴを観に行くつもりだ。
それでは最後に、近々に行われるDJパーティーへのお誘いを。3/28(日)カフェ・アプレミディでの「harmony」(毎回ご好評をいただいています)、3/30(火)新宿・OTOでの「BAR NANA」(岡本仁/伊藤弘/堀内隆志/小野英作という僕には大切なメンバーとの久しぶりの“飲み会”です)のイヴェント・フライヤー原稿を掲載させていただきますので、ぜひたくさんの皆さんにお集まりいただけたら嬉しいです。
追記:次回4/23(金)の「bar buenos aires」は、アグスティン・ペレイラ・ルセーナに代わり、僕がゲスト選曲で登場します。その日はダブルヘッダーで、深夜は「アシッド・ジャズ・カウンシル」と題されたムジカノッサのスペシャル・ナイト。最近はDJ陣のプレイが僕には物足りなく感じられることも(欲を言えば)あるので、奮起を期待したいところですね。ゲストはワック・ワック・リズム・バンドと山下洋なので、いつになく楽しい夜になればと思っています。

「harmony」
3/28(日)18時から24時までカフェ・アプレミディにて入場無料!
昨年秋に始まった「harmony」ですが、初めての春を迎えます。一年に季節があるように、人生にも季節があります。人生の新しい季節を迎えるとき、そっと寄り添ってくれる音楽があります。ときに、音楽が、新しい場所に連れていってくれることもあります。そんな音楽を日曜午後のフロアに届ける「harmony」。今回もオール・ジャンルでお送りします。季節は春。心が何かに向かって動き出す瞬間をつかまえるのに、うってつけの季節です。一緒に楽しみましょう!(Takahiro Haraguchi)

harmony classics
Byron Stingily / Flying High (Brazilian Vocal) 
奇跡のファルセット。「harmony」が始まって以来いつも久々にかけたいと思いながら、まだ実現していない1997年の思い出が詰まった名作。かつてはホセ・フェリシアーノ「Golden Lady」やトルコのDogan Canku「Doganin Uyanishi」といったフォーキー・ブラジリアンで挟むことが多かったが、このパーティーではどんな流れでかけようか。(橋本徹)

Breakbot feat. Irfane / Baby I'm Yours
名曲「Just A Lil' Lovin」を手掛けたIrfaneをヴォーカルに迎えたBreakbotによるアップデートなスウィート・ブギー。皆もきっと好きなはず。次回はこの“アップデート・ディスコ”をテーマに行きます。(Takeru John Otoguro)

Linkwood Family / Miles Away
最近アルバムもリリースされたLinkwoodによるFirecrackerからの1枚目。「Miles Away」も妖艶なディープ・ハウスで素晴らしい出来栄えなんですが、「harmony」でかけるならB面の「Fudge Fingas」ですね。「Feel Like Making Love」使いがたまりません!(haraguchic)

Sugarhill Gang / Rapper's Delight
何が好き? と聞かれ、自信を持って答える、自己紹介のような一枚。シックのベース・ラインにふざけたリリック。何を言っているかは重要ではないのです。初めてラジオで流れたラップは、30年経った今でもパーティーを共有するための最高の一枚!“That's The Joint!”(mom)

Adrian Gurvitz / I Just Wanna Get Inside Your Head
79年西海岸録音の傑作AORアルバムから、暖かな陽射しと爽やかな風を感じさせる一曲を。開放感溢れるストリングスとホーン、控えめながらしっかり刻まれるカッティング・ギター、ディスコ・テイストなベース・ライン、全てが心地いい。(NARU)

Michael Jackson / Man In The Mirror
世界平和なんて……願ってはいるけどなんだか遠いことのよう。鏡に映っている“誰かさん”は笑っていますか? あなたの小さな優しさと、ほんの少しの勇気で笑顔になれる人がいるかも。人生は小さな幸せの積み重ね。明日には笑えるように……Make a change! (YUJI)

「BAR NANA」
3/30(火)18時から23時まで新宿・OTO(03-5273-8264)にて¥2,000 (1drink) / with flyer ¥1,500 (1drink) 
あの伝説のイヴェント「BAR NANA」が10周年を記念してまさかの復活。(堀内隆志)

DJ's CHOICE for BAR NANA
小沢健二 / 痛快ウキウキ通り
いつもいちばん酒に酔わせてもらい、最後は小野英作のレコードバッグを借りてDJしているらしい。自分が小沢健二をかけたという事実を翌日聞いて最初は信じられなかったが、その後すっかり定番に。「BAR NANA」と言えば小野くんの「My Way」か伊藤さんの森高かコレでしょ。(橋本徹)

Sangue Bom!! / Parabens 2 anos
「BAR NANA」でぼくがプレイしてきたのは、いつもブラジル音楽だった。もちろん今回もブラジル音楽が中心になる予定。進化系ブラジル音楽コンピレーション『Sangue Bom!!』を聴いていると、あの強烈な宴の記憶が甦る。今夜もまた酒量が増えそう。(堀内隆志)

The Beach Boys / Friends
無人島に持っていくレコードは何と訊かれたら「持っていかない」と答えるけれど、引越し先に一枚しか持っていっちゃダメと言われたらこれを選ぶだろう、一生飽きない音楽。陰鬱な日々(勝手な想像)からこんなに重力を感じさせないアルバムができたことが奇蹟。(岡本仁)

Black Biscuits / Timing(時機)
このCDは、当時テレビを観ていたときに聴いた曲が気に入って、目黒銀座のCDショップで購入した。あの頃の自分の気持ちがかわっているのか、ドキドキで聞いてみた2010年。いろいろ細かいことはあるけど全然いいじゃん! OKだ。(伊藤弘)

Adam Ant / Goody Two Shoes
書斎派から街角派へ。やりきれないことばっかりだから、この街の喧騒といつもの心の靄をかき消してくれる爽快なギター・リフか身体の芯まで響く太いビートが欲しい。俺は胃に酒を、奴はジュークボックスにコインを与え、流れてくるのやはりこんな曲。夢や恋なら醒めなくていい。(小野英作)
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3月17日──橋本徹の追悼メッセージ
Nujabesのあまりにも早すぎた死を、心より哀悼させていただきます。
今はまだ言葉になりませんが、公私ともに希望のある未来が待っていた彼の笑顔を想うと、ただ無念としか言えません。
本当に惜しい気持ちがあふれるばかりですが、静かに胸に手をあて、彼の音楽と生き方・感じ方・考え方にこめられた美しい純なメッセージに耳を澄ませたいと思います。
天国で安らかに。

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3月6日──橋本徹のコンピ&パーティー情報

僕の渾身選曲の一枚『Free Soul. the classic of Nina Simone』がリリースされました。強い気持ちが伝わったのか、渋谷のCDショップはどこも大推薦してくれていて、今週は恒例の昼ごはん後の試聴機めぐりも心なしか足どり軽やかです。バイヤーの方が「ついに出たニーナ・シモンの決定盤という感じですね」と声をかけてくださったり、「中盤から後半の流れもいいね」と僕がまさに言ってほしかったことを言ってくれた女友だちがいたり、「フリー・ソウル・ボビー・ウーマックを思い出して熱くなったよ」と久々に連絡をくれた古い音楽仲間がいて、今日は僕もニーナ・シモンと『Free Soul. the classic of Bobby Womack』を交互に聴いたりしています。ホセ・フェリシアーノもまたしかりですが、「サウンドとしての」歌の力というものを実感させられますね。
最近の『素晴らしきメランコリーの世界』選曲への反響もとても大きくて(ぜひ「usen for Cafe Apres-midi」の特集プログラムもお聴きください)、特に御本家(?)・山本勇樹が『シンガー・ソングライター編Disc-1』について吹き込んでくれた留守電メッセージには、こちらの方こそ大感動してしまいました。僕には今、仕事を終えて夜、吉本宏やアルゼンチン帰りのパンチョ河野を含め、こうした愛すべき真の音楽好きと酒を酌み交わす時間が(もちろんカルロス・アギーレの話などに花を咲かせながら)、かけがえのないものとなっています。今シンガー・ソングライターにひたすら夢中になっている歳下の友人ユズルと飲んでいてもそうなのですが、本当にいいヴァイブをもらえると同時に、そのピュアな音楽愛に頭が下がるのです。
先月の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」に続く青春小説再読の今月第1弾は、アラン・シリトーの「土曜の夜と日曜の朝」にしました。ペイル・ファウンテンズが“アーサー・シートンが決してへこたれないと言ったのを思い出せ”と歌ったのがよみがえる、激しさと優しさがないまぜになった想いに、やはり胸をかきむしられます。本を読みながら、僕はどんどんティーンエイジャーの頃に還っていくんだなと思いました(久しぶりに野球チームに入ってユニフォームも揃えたし)。明日は大学生のときのように一日中映画館にこもって、1/11に亡くなったエリック・ロメールの追悼上映で「コレクションする女」「クレールの膝」「愛の昼下がり」を観てこようと思っています。
ここからのひと月は、数多くのDJパーティーに招んでもらっているのも楽しみで、とりわけ春分の連休に九州に出かけるのは、もう何か月も心待ちにしていました。「usen for Cafe Apres-midi」の名セレクターでもある渡辺裕介くんの提案で昨春より始まった、その名も「SUBURBIA SUITE」というイヴェントが3/21(日)に福岡・STEREOで行われるのです。翌日には佐賀・嬉野温泉に行き美味しいものを食べましょうという話もあるので、万全のモティヴェイションでのぞみたいと考えています。
そしてDJ月間の皮切りとして、3/13(土)にカフェ・アプレミディで開くのが「Soul Souvenirs」です。フリー・ソウル×ニーナ・シモン&ホセ・フェリシアーノCD発売記念ということで、僕も一曲たりとも無駄にしない、かなり思い入れをこめた選曲をしようと決意していますが、山下洋/宿口豪/Chintam/ユズルの他の4人のDJも毎回最高のプレイを聴かせてくれますので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです(しかも入場無料ですよ)。ルー・コートニーのレコードをモティーフとしたフライヤーも気に入っていて、『I'm In Need Of Love』というタイトルでカフェの片隅にひとり佇む彼に自分を重ね合わせてしまい、見ていると「I Don't Need Nobody Else」(『Free Soul Colors』でも聴ける名曲です)と叫びたくなってしまいます。そして山下洋のコメントを読んでいると、ジョン・レノンのように「Don't Let Me Down」と心の底からシャウトしたくなるような日々の救済のために、ダスティー・スプリングフィールド&アレサ・フランクリンの「Don't Let Me Lose This Dream」(夢をさまさないで)という歌声を聴きたくなってくるのです。そんなフライヤー原稿を最後に、このページにも掲載しておきたいと思います。それでは皆さん、この春はDJパーティーでお会いしましょう。

「Soul Souvenirs」
3/13(土)23時から翌5時までカフェ・アプレミディにて入場無料!

DJ's Choice for Soul Souvenirs
Nick Drake / Bryter Layter
孤独の影と喪失を滲ませる、物憂く美しい音楽。これもまた無垢な魂のありかを求め彷徨う、僕にとってのソウル・ミュージック。「Poor Boy」「One Of These Things First」「Northern Sky」。ニック・ドレイクをヴァン・モリソンやホセ・ゴンザレスのようにかけたい。(橋本徹)

Dusty Springfield / Where Am I Going
たとえばビートルズの 「All I've Got To Do 」や 「Don't Let Me Down」。乱暴な言い方ですが、ボクにとってのソウル・ミュージックってそういう曲のコト。このイギリス人女性のレコードもそういうレコードなんだよね。(山下洋)

King Curtis / Live At Fillmore West
前夜のレコード選びが楽しい。「コレは絶対7インチだよな」とか「この曲やっぱサイコー!」なんてレコ棚を漁ってるうちに1人DJ大会に。アレサの前座で暴れまくるキング・カーティスよろしく本番前からすでに最高潮! そして橋本さんも山下さんもChintamさんもユズル君も同じことをしているはずなのだ。(宿口豪)

Nancy Wilson / Tell The Truth
「Soul Souvenirs」の醍醐味は細かいカテゴライズに捉われず純粋に楽しめるソウル・ミュージック。ピークタイムから終盤にかけての抜群な空気感はもちろんのこと、それを演出するまでの暖かみのあるメロウ・グルーヴの心地よさ。「Tell The Truth」はまさにそんな時間に相応しい曲です。(Chintam)

Labi Siffre / The Vulture
僕がフリー・ソウル15周年パーティーでかけた曲でフロアが熱くなる。ど頭のブレイクビーツにやられ、ファンキーなグルーヴに踊らずにはいられないはず。ジャミロクワイを思い起こす声も最高! こんなにカッコイイ曲はなかなかない。(ユズル)
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