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9月12日──橋本徹のコンピ情報

アプレミディに『音楽のある風景〜秋から冬へ〜』が入荷してきました! その内容は[web shop]のページとHMVのウェブサイトのための取材“橋本徹の続『音楽のある風景』対談”(吉本宏くんが忙しい合い間に2日でまとめてくれたのですが、ちょっとフリー・ソウル・コンピのライナー対談みたいな雰囲気になっています)でかなり詳しく、購入特典CD『公園通りの秋』についても含めて紹介していますので、ぜひご覧になっていただければと思います。今回も少しでもたくさんの方にここに集めた音楽の素晴らしさが伝われば嬉しいです(もしもまだ『春から夏へ』と『夏から秋へ』をお聴きでない方がいらっしゃいましたら、絶対に一刻も早く聴いてください!)。
考えてみれば前回、この[staff blog]を書いたのは8/19。その週末に逗子海岸・音霊で行われた『Mellow Beats, Friends & Lovers』のリリース記念パーティーについても、心からお礼を言わなければという気持ちでいっぱいです。本当に素晴らしい一日でした。時間が全然足りなすぎるよ、と思ってしまったぐらい、僕の中でこの日はもう伝説です。集まってくださった1,000人の皆さん、そしてもちろん最高の音楽を奏でてくれた出演者の皆さん、どうもありがとうございました!
さて、来週にはもう一枚、昨年いろいろな方からご好評をいただいた「メロウ・ビーツ」歌もの編の第2弾となる、『Mellow Voices ~ Beautifully Human Edition』もリリースされます。僕個人としても、今いちばん選曲するのが楽しみなシリーズが「メロウ・ヴォイセズ」かもしれません。少なくとも僕がもし愛する人と普通の人生を送れていたら、日々の生活の中で最も聴くに違いないのはこのシリーズでしょう。もちろんフリー・ソウル・ファンからメロウ・ビーツ・ファンまで多くの方の琴線に響くだろうことは間違いありません。
前半からスティーヴィー・ワンダーやミニー・リパートンの面影がよぎるような21世紀を代表する名作が続き、カーリーン・アンダーソン&ポール・ウェラーが登場する頃には、すっかり胸に熱いものがこみ上げています。僕などはふたりの声が聴こえてくるだけで心の震えを抑えることができない「Wanna Be Where You Are」。作曲者レオン・ウェアの先月の来日公演では2曲目に披露され、Cotton Clubでは珍しく早くも客席全員がスタンディング&大合唱でした。ここでのポール・ウェラーはきっと、『Free Soul Avenue』に収録したズレーマのヴァージョンを意識しているのでしょう。
というような感じで、このまま各曲解説をしていきたい誘惑に駆られますが、かなり長くなってしまいそうなので、収録曲それぞれへの思いなど、詳しくは次回の[web shop]のコーナーに書くことにし、ここではちょっとしたエピソードをひとつ。
あれはこの夏、8/13のこと。葉山で海を見ながらのんびりとすごしていた午後、携帯電話にビクターの岩永ディレクターから着信がありました。留守電メッセージを確認すると、何と、もう半ば諦めかけていたEMIからのライセンス音源、僕が死ぬほど好きなディアンジェロの「Africa」とコリーヌ・ベイリー・レイの「Butterfly」の許諾が下りたというのです。感激のあまり、僕はすぐに最終選曲を決定したくなりました。そこで帰りの車の中でさっそく曲順を完成させ、9/16発売に漕ぎつけたのが『Mellow Voices ~ Beautifully Human Edition』というわけです(僕がこのコンピに使いたいと思っていた曲を、どれもカーステレオに装備していた歳下の友人ユズルにも感謝!)。
中でも、葉山から海沿いに鎌倉へ向かう途中(その日が母の誕生日だったので、若宮大路の「段葛こ寿々」でわらび餅を買いたかったのです)、国道134号線のトンネルを抜け、夕陽に照らされた由比ヶ浜が眼前に広がったときの美しい光景は忘れられません。ちょうど時を同じくして、コリーヌ・ベイリー・レイの「Butterfly」のあの感極まるサビが沸き上がってきたのです。それは、音楽の神様の存在を信じたくなる、奇跡と言える甘美な瞬間でした。
その曲からジョヴァンカの「Pure Bliss」(Nujabesとの共演によるシャーデー「Kiss Of Life」のカヴァーを彼女に歌ってもらうとき、この歌みたいな雰囲気で、と僕はリクエストしたのでした)、そしてミスティー・オールドランドによるアントニオ・カルロス&ジョカフィの名曲「Voce Abuso」の感涙のリメイク「Angel」への流れは、その後どれだけ聴いても切なさに心をわしづかみされます。さらにその火照りを優しく慰撫するように、慈しみに満ちあふれたテリー・キャリアーの近年では最も心に残る名唱「The Hood I Left Behind」が流れるのです。僕は来週、4年ぶりに彼のライヴを観にCotton Clubへ出かけるのを、とても楽しみにしています(その翌週のメイズのステージも今からとても楽しみですが)。
一方、新作も待ち遠しいディアンジェロの「Africa」は、9年間にわたって聴けば聴くほど中毒的に惹かれてきたマイ・フェイヴァリット・チューンで、同じ『Voodoo』収録の人気曲「Feel Like Makin' Love」も、僕の中では全くこの曲にかないません。何度聴いても飽きることなく、というよりむしろ回を重ねるほどに肌に馴染み、“メロウ”という言葉はこういう曲にこそ捧げるべきだといつも思います。そんなわけなので、この曲をよく聴かせることにだけは僕も自信があって、ここではベニー・シングス「Over My Head」、そしてシーフ「Home」へと展開してみました(そういえば最近、ソナー・コレクティヴから突然“コンピレイションに使ってもらえたら嬉しい曲リスト”が送られてきたのも可笑しかったです)。ぜひ実際に全体の流れの中で聴いていただいて、その“特別”としか言いようのない魅力的な響きをお確かめください。僕は今のところ、この一枚を大切な夏の思い出のように繰り返し聴いています!

追記:ところで、先月末にリリースされた『親子できく、どうようフリーソウル。』はもう聴いていただけましたでしょうか? CDショップに行ってもどこの売り場に置いてあるのかわかりづらいのが玉に傷ですが、内容はすでに多くの識者(そしてママ・パパ)のお墨つきで、僕も「手のひらを太陽に」を好きだった子供の頃のポジティヴな気持ちを思い出さなきゃ、と週に一度は聴いています。本当にグルーヴィジョンズによるアートワークも素敵な、質・量ともに圧倒的な一枚なので、さっそく子供のいる友人たちにプレゼントしまくっていますが、特に来週パパになる予定のアプレミディ・レコーズ担当のインパートメント稲葉さんにタイミングよく贈ることができたのは嬉しい偶然でした。どうかこのCDがみんなに幸せを運ぶギフトの定番として永きにわたって愛されますように!

再追記:マガジンハウスの「アンアン」編集部から、10/14発売号の村上春樹特集に音楽コラムを、と依頼を受けたばかりで、この週末はそれをどんな感じにするのがいいんだろうとぼんやり考えながら、ひとり古いレコードを聴いている。“橋本さんが読者にオススメする村上作品音楽ベスト5とその理由や聴きどころ”というテーマもあるので、僕自身が印象的だった曲を何となく思い浮かべてみると、やはりデューク・エリントン「スタークロスト・ラヴァーズ」、スタン・ゲッツ「ジャンピング・ウィズ・シンフォニー・シッド」、それにビーチ・ボーイズ「カリフォルニア・ガールズ」あたり。ビートルズやドアーズ、ボブ・ディランなどは間違いなく重要なのに(重要だからか)、どうにも作品を絞れない。「海辺のカフカ」のジョン・コルトレーン「マイ・フェイヴァリット・シングス」、というのも浮かんだが、ちょっと自分に寄せすぎなような気がする。ただ最新刊「1Q84」では、ヤナーチェクより僕は「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」だな、と確信的に思う。“愛がなければ、すべてはただの安物芝居に過ぎない”という歌詞が特別に響くようになったのは、この小説のおかげだ(この本がミリオンセラーになるぐらい読まれているはずなのに、どうしてこんな世の中なんだろう)。やれやれ。果たしてこのコラム、最終的にはいったいどうなることやら。
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