今は木曜日の午後、今週は原稿のしめきりがあとは「Domani」の連載コラムだけなので、ブライアン・イーノの『Thursday Afternoon』を流しながら、ぼんやりと黒田維理の詩集「SOMETHING COOL」を眺めていたのですが、ふと今日は『音楽のある風景〜夏から秋へ〜』の発売日だと思い立って、[staff blog]を書くことにしました。
そう、僕の心からのお願いです。メロウ・ビーツ・コンピのスペシャル企画盤『Mellow Beats, Friends & Lovers』は、もう聴いていただけましたでしょうか? リード・トラックとして制作したNujabes with ジョヴァンカ&ベニー・シングスによるシャーデー「Kiss Of Life」のカヴァーが、先行配信から3週間以上すぎた今もiTunes Music Storeのジャズ・チャートでは引き続き1位、という話は聞いていて、嬉しくなくはないのですが、くれぐれも(しつこいようですが)アルバム全体を通して聴いていただけますよう、よろしくお願い申し上げます!
8/23(日)には、湘南は逗子海岸の海の家ライヴハウス「音霊」で、CDリリース記念パーティーも開かれることになりました。夕陽に照らされた海とメロウ・ビーツ(ジャケット写真のイメージ通り!)、最高ですよね。ライヴ・アクトには何とCALM(久しぶりなので楽しみ!)、そしてバンドとして唯一『Mellow Beats, Friends & Lovers』に収録されたJ.A.Mを迎え、DJはもちろん僕とNujabes、新作も絶好調だったDJ Mitsu the Beats、それにSoil & “Pimp” Sessions社長とMUSICAANOSSA中村智昭も加わり、さらに豪華ゲストを現在ブッキング中とのことですから、ぜひこのパーティーで2009年の夏を締めくくっていただきたいと思います。北海道の東の端、根室在住の音楽愛好家であるFAT MASAこと清水雅哉くんから、さっそく「8/23行きます! これから航空券を予約します」と連絡が入りましたが、どうか全国のメロウな音楽を愛する皆さんにお集まりいただければと願っています。あの名作『Modal Soul』以来のニュー・アルバムを鋭意制作中のNujabesにも、この機会に励ましの声をよろしくです。今の閉塞的な音楽状況を打ち破る(忘れさせてくれる)ような新作を、僕も期待しています。
『Mellow Beats, Friends & Lovers』に関しては、昨日読ませてもらった音楽ライターの井上由紀子さん(僕には元フリッパーズ・ギター、という印象の方が強いですが)が「TV Bros.」誌に書いてくださった文章も嬉しかったので、ここに引用させていただきます。
最近のコンピレーションに限って言うと良い曲、ヒット曲のダイジェストと言った風情のものが主流で、アルバムと言う風に捉えにくいのであまり取り上げる機会がないのですが、Nujabesやrei harakami等、世界的にも評価の高い日本のアーティストが顔を合わせたこのコンピ、それぞれがそこにあるべき理由が感じられる、とてもロマンティックなストーリーのある「作品」です。冒頭のSADEのカヴァーから新進アーティストno.9の曲への切なすぎる繋がりとか聞いていると、曲の配置によって、これ程までに曲の聞こえ方が変わって来るのかと嬉しいショックを受け、不覚にも涙が零れました。まるで一編の詩のように美しい名盤です。
どうでしょうか? 普段は違うジャンルを中心に聴いているはずの井上さんですが、僕はこのレヴューに愛を感じました。“ある種の生真面目な音楽愛”です。それに比べて、CDショップのキャプションなどを見ると、本当に音を聴いて書いてくれているのだろうか、と思うようなものが目につくのもまた現実です。音楽シーンをめぐる今の状況の宿命なのかもしれませんが、お客さまだって、資料を写しただけのような文章より、心の声や血の通った言葉を読みたいはず、と思うのですが。そんな中で、メロウ・ビーツ・コンピのレギュラー盤新作『Mellow Beats, Sunshine & Twilight』(ロマンティックな日本のトラック・メイカー編に対し、ジャジーかつ爽やかでハッピーな一枚です!)でコラボレイトしたタワーレコードのバイヤー陣の何人かに、熱い気持ちを碓かに感じとることができたのは、嬉しく勇気づけられる体験でした。
アプレミディ・レコーズ第2弾『音楽のある風景〜夏から秋へ〜』については、まずとにかく聴いてみてください、ということしか言えません。HMVのウェブサイトに掲載された『音楽のある風景』対談でもそういう話になりましたが、CDショップの方々には、ぜひこのままストア・プレイしていただきたいと切に願います。『Mellow Beats, Friends & Lovers』も全く同じですが、絶対にそこにいる人たちの耳を惹き寄せる、と信じていますので。敢えてこの盤についてひとつ付け加えるなら、これは旅先に連れていっても心地よいCDでしょう、きっと。
今晩は『Free Soul Drive with Matt Bianco』をとても気に入ってくれているという(本人たちも最近こういうモードだったようです)マット・ビアンコのステージを観に、六本木・東京ミッドタウンの「Billboard Live」に出かけようかと思っています。ちょうど先週、このライヴ・レストランの2周年記念対談を、僕はキリンジの堀込兄弟と行ったばかりなのです。マット・ビアンコにはコンピのジャケットにサインをもらって、こちらからも親愛の情を示してこようかな。そうそう、[web shop]のページのアプレミディ・セレソン武田による『Free Soul Drive with Matt Bianco』の紹介文は、ネオアコ・ファン必読です!
追記:『音楽のある風景〜夏から秋へ〜』に至福の名曲「Bumblebee」を収めた“スウェーデンのデオダート”ことロマン・アンドレンも、丸の内の「Cotton Club」でこの夏の来日公演が決定しました。僕もフライヤーに推薦コメントを寄せましたが、カフェ・アプレミディ店長にしてNoa NoaのBENくんのMySpaceには、本人から「ぜひ観に来てほしい」と連絡があったそうです。マルチ・サウンド・クリエイターの彼だけに、あの麗しくもサウダージでグルーヴィーな音楽がどんな形で披露されるのか、ライヴが本当に楽しみですね!
6/30追記:昨日、北海道DJツアーから帰ってきたばかり。やはり音楽に自分は助けられている、と心から実感した3日間でした。集まってくれた皆さん、どうもありがとう。いただいた食事もすべて美味しく、札幌では「蕾亭」の手間をかけた和食コース、「はせ川」のにぎり鮨(旬のウニやとれたての貝類はもちろん、にしんは山葵で一貫、生姜で一貫)、そして釧路の炉端「きくちゃん」と、北の味覚を満喫することができました。
そんな重度の音楽依存状態にある僕は、今夜はライヴのダブルヘッダーに出かけました。まずはクラブクアトロのエミ・マイヤー。ジャケットから想像していた以上に若くスタイルもきれいな美人で、正直ちょっと感激。キャロル・キングやヤエル・ナイムを彷佛とさせるオリジナル曲に加え、話題のブッカー・T「Jamaica Song」(この曲を収めた『Free Soul Colors』がCM効果でGW頃から物凄い売れ行きだそうです)のカヴァーもやってくれました。
そしてブルーノート東京へ向かい、ラファエル・サディーク。トニ・トニ・トニもルーシー・パールもソロ作もプロデュース作も好きな僕ですが、これがあまりに素晴らしかった! 釧路のソウル・フレンドたちと一緒に観たかった、と何度も思ってしまった“Everybody, Clap Your Hands!”な最高のソウル・レヴュー。山下洋や高木慶太の顔も思い浮かべながら、「世界最高の黒人モッズ・バンドだ」と隣席の渡辺亨氏と意気投合していたら、アンコールの1曲目、あの「I Want You Back」のギター・リフが! “You Love Michael”のひと声に続く歌い出しの瞬間、背筋に電気が走り、これ以上の追悼はない、と震えが来ました。「やっぱり音楽って素晴らしい」と実感し、ソウル・ミュージックの伝導師ラファエルに感謝。帰宅してさっそく、60's〜70'sのヴィンテージ・ソウルへの敬愛に満ちた最新作を聴き始めたところです。明日は釧路でもフロアを熱狂させた久々のオリジナル・ラヴに行ってきます!