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3月14日──橋本徹のコンピ&単行本情報

アプレミディ・ライブラリー最新刊「公園通りの春夏秋冬」が届きました! その古書のような風合いをさっそく、目と手で愛でています。女性誌への寄稿などを収めなかったこともあり、自分がこの一年、こんなに音楽オタクのような文章ばかり書いていたのか、とあきれましたが、今の時代の状況を考えれば、それもまた胸をはっていいことでしょう。巻頭グラフ代わりの“SPEAK LIKE A CHILD”と題した軽い読み物(フォントもあのハービー・ハンコックの名盤に準えました)を除けば、ひたすら濃い音楽の話が続きますが、何となく歳時記のページを繰るように、どうか末長くお付き合い願えたら嬉しいです。
3/17には、ジャズ・シュプリーム・コンピ最新盤となるソニー編『Jazz Supreme ~ Modal Blue Sketches』もいよいよ到着します。先週から『Jazz Supreme ~ Fender Rhodes Prayer』が“Album Of The Week”に選ばれた英BBCの番組「WORLDWIDE」の反響が続いていて、改めて音楽紹介者としてのジャイルス・ピーターソンの影響力に感心していますが、これも多くの人の耳に届くことを心より願っています。「WORLDWIDE」は世界14か国で放送中とのことで、“Album Of The Week”受賞盤は販促のためにわざわざその旨をCDにシール貼りするケースも少なくないと聞き、知らせが入った当初はカフェ・アプレミディ中村に「“Album Of The Year”じゃないの?」なんて軽口を叩いていた僕も、ジャイルスに足を向けて寝られないと実感しているところです。
さて、お待ちかねのジャズ・シュプリーム新作の内容ですが、僕がひとことで表現するなら、美しいジャケットの印象そのままの一枚、という感じでしょうか。そう、一艘の舟が海を行く、波間をたゆとう、そんなイメージ。幸運なことに、その印象的な(僕の心に訴えかける)グラフィックをあしらったNANAデザインによる特製ポストカードも、ソニーはCD購入特典として制作してくれました(感謝!)。
もともとは、マイルス・デイヴィス(とジョン・コルトレーン)がモーダル・ジャズ芸術を完成させた記念碑的名作『Kind Of Blue』の50周年祝福企画として発案されたこの盤は(仮のサブタイトルも『Modal Kind Of Blue』でした)、僕も当然「All Blues」か「Flamenco Sketches」をエントリーしようと考えていたのですが、『Kind Of Blue』収録曲はコンピレイションに使用できないと知り、むしろマイルスとコルトレーンの影を昇華した、実りゆくモードの季節の中で静かに燃え上がる炎のような美しさを放つワルツ・ジャズの名品を連ねていくことにしました。静寂の中にたなびくフルート、重厚なベース・ラインから、星屑が降りつもるようなピアノまで、魂の深いところに染みとおる緊張と安らぎ、まどろみの夢の中ですべてを赦すような慈しみにあふれた魅惑の響きが、清麗な泉のように湧きいづり、崇高にきらめき輝く様を、ぜひとも心の印画紙に焼きつけてもらえたらと思います。
すべての演奏がいかに自分にとって愛してやまない「至上のジャズ」なのか、熱い思いを語りたい気持ちに駆られますが、僕なりの全曲解説は、明日書くことになっている[web shop]のページの推薦文で試みることにしましょう。それでは皆さん、今日はこんなところで。
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3月3日──橋本徹のアプレミディ・レコーズ&ライブラリー情報
 
『Free Soul In The Studio ~ Chill-Out Mellow Ensemble』はもう聴いていただけましたか? 僕が特に素晴らしい解釈だと感じているのは、ティミー・トーマス「Why Can't We Live Together」とマーヴィン・ゲイ「What's Going On」、アース・ウィンド&ファイアー「Brazilian Rhyme」にサルソウル・オーケストラ「Runaway」、それにシリータ&スティーヴィーの「Cause We've Ended As Lovers」やボビー・ヘブの「Sunny」あたり。個のメッセージというか、独自のパースペクティヴというか、いま大切なのは長いものに巻かれない、簡単に優勢な側につかないことだと考えている僕には(おかげでかなり苦しいッスが)、ちょっと溜飲が下がるプロジェクトになりました。音楽誌「remix」には、制作秘話を含む、神田朋樹×堀江博久×橋本徹の鼎談が掲載されています。すでに2枚目となる北山雅和デザインによる新たな美麗フライヤーも到着(90年代渋谷スタイルのプロモーションですね)。3/21(土)にはカフェ・アプレミディで23時から、僕と神田くん、堀江くん、北山くん、櫻木さんという制作チームに、山下洋&中村智昭をゲストに迎え、7人のDJによるリリース記念パーティーも開かれることになりました。入場無料(!)ですので、ぜひチルアウト・メロウでフリー・ソウルな心地よい音楽に包まれた夜をすごしにいらしてください。
それから、ひとつ良いニュースを。僕が選曲した『Jazz Supreme ~ Fender Rhodes Prayer』が、ジャイルス・ピーターソンがナヴィゲイトする英BBCの人気ラジオ・プログラム「WORLDWIDE」で(日本ではJ-WAVEで放送中ですね)、“Album Of The Week”に選ばれたそうです。ジャイルスはむしろ、その次の『Modal Waltz-A-Nova』編を深く理解してくれるのでは、と思っていたのですが、やはり嬉しいですね。厚かましい話ですが、彼が続くジャズ・シュプリーム・コンピをどれぐらい気に入ってくれるか、さらに期待が高まります。
さて、僕はつい昨日、大切な仕事をふたつ同時に終えたばかり。今夜は思いきり解放感に浸ろうと思っていたのだけど、残念ながら東京の天気予報は雪。そこでこのブログを書くことにしたのです。
大切な仕事のひとつは、遂にこの春スタートさせることになったレーベル、アプレミディ・レコーズの第1弾コンピ『音楽のある風景〜春から夏へ〜』。マスタリングからアートワークの入稿まですべてが終了し、ジャケット・デザインを眺めながらアドヴァンスCDにじっくりと耳を傾けるのは感慨もひとしお。とにかく収録曲の顔ぶれがあまりにも凄すぎて(アプルーヴァル作業に東奔西走された稲葉ディレクターに大感謝!)。このページの最後に曲目インデックスを掲載しておきますので、心してご覧ください。3/20入荷予定です。
もうひとつの大切な仕事は、アプレミディ・ライブラリー最新刊「公園通りの春夏秋冬」。読み応え充分の内容となったこちらも、無事に校了することができました。計273枚のジャケット写真付き音楽ガイドで、コンセプトは“アプレミディのレコード歳時記”。半分を占める僕が雑誌やウェブサイトに寄稿した文章に、武田誠/松野光紀/中村智昭/BENがそれぞれのフェイヴァリット盤について愛情あふれるタッチで綴ったディスク紹介を加えた、アプレミディ/サバービアの一年がまるごとすべてわかる充実の一冊(3/14入荷予定)。僕は胸が熱くなってしまった5人の書き下ろしコラム“Frank Talk, Free-Style”(かつての「Suburbia Suite」へのセルフ・オマージュです)から、アプレミディ・レコーズと『音楽のある風景』への思いを紡いだ橋本分を、ここでは後ほどお読みいただきましょう。
それでは、春が来るのを待ちわびながら、今日はこの辺で。今月は、モーダル・ジャズというアートフォームを確立したマイルス・デイヴィスの名盤『Kind Of Blue』の誕生50周年記念として企画された、「至上のジャズ」ソニー編『Jazz Supreme ~ Modal Blue Sketches』もリリースされますが、長くなってしまうので詳しくはまた改めて。そちらも“クールネスとリリシズムの極北”という感じの素晴らしい一枚になっていますので、楽しみにしていてください。

Frank Talk, Free-Style
by Toru Hashimoto
昨年はアプレミディ・ライブラリーをスタートさせて5冊の本を作ったが、今年はアプレミディ・レコーズというレーベルを始めることになった。年が明けてまもなく、アプレミディ・セレソンの武田と松野が僕に強く働きかけてくれて、インパートメントの稲葉ディレクターのご尽力もあって、こんなに早く実現することができた。ちょうど最初のCDのマスタリングとアートワークの入稿が、この「公園通りの春夏秋冬」の校了と重なった今週末、芽吹きの春の訪れを前に、僕は特別な気分ですごしている。
思えば「音楽のある風景」と題した僕の選曲と一冊の本を支持してくれた皆さんの声に励まされたことは大きい。アプレミディ・レコーズの口火を切るコンピレイション・コンセプトは、やはりこの言葉以外に考えられなかった。音楽への愛を表現できる新たな場に恵まれた今、僕は心から感謝したい気持ちだ。
真っ白な無限のカンヴァスに、音楽で自由に色彩を描いていく幸せ。四季の移ろいを、豊かな情景が浮かぶ光や風のような微妙な空気感と色合いに染めてゆく音楽旅行。
柔らかな陽光が射し込み、幸福な気分へと誘われるサロン・ジャズ。甘酸っぱく切ない情感と、安らかな余韻が心の透き間を埋めるように響くメロウ・ボサ。涼やかにそよぐ風のように快いアコースティック・グルーヴ。生き生きとたおやかな表情を見せる女性ヴォーカル。美しく澄んだ音色が小さく弾けるように輝くピアノ。大切な思い出を振り返るとき、零れるように心の中に広がる、いつの間にか口ずさんでしまう素敵なメロディー……。
記念すべきレーベル第1弾となる『春から夏へ』編には、バート・バカラック/キース・ジャレット/スティーヴィー・ワンダー/シャーデー/アントニオ・カルロス・ジョビンなどの素晴らしいカヴァーを含む、入手困難なキラー・チューンをたっぷり収録してみた。魅惑的な響きが甘美なグラデイションを描き、波のように心地よい音楽性の揺らぎが珠玉のハーモニーを奏で、スウィングやワルツのしなやかなリズムがナチュラルな時の流れを生む一枚。曲目表を見て驚いてください。僕だけでなく、アプレミディに親しんできた皆さんなら歓喜の涙にむせぶだろう、特別な思い入れを抱かれているはずの名曲・名演ばかり。人と時間と空間の奇跡的な調和を果たす、多幸感に満ちた胸躍り心ときめく音楽がここにはあります。
日本の伝統色と季節の星座をあしらったデザインと共に、日本語の美しさにも気を遣いました。ライナーノーツは吉本宏。このコンピはそう、彼もセレクターを務める「usen for Cafe Apres-midi」の仲間と出会って、自分だけでは知りづらい好きな音楽とめぐり会う機会が格段に増えた2000年代の結実、言ってみればメモワールでもあります。熱心な音楽マニアの好奇心も誘いながら、誰が聴いてもとてもいい雰囲気だと感じてもらえるように、“午後のコーヒー的なシアワセ”を標榜する「usen for Cafe Apres-midi」と同じく、このレーベルもこだわりとカンファタブルの両立を誠実にめざしていきたいと考えています。
それでは皆さん、“Evergreen Review by Apres-midi Records”──末永くよろしくお願いします!

『音楽のある風景〜春から夏へ〜』
01. Pippo Non Lo Sa / Jazzinaria Quartet
02. Close To You / Angelita Li
03. So Reminding Me / Grazyna Auguscik
04. You Are The Sunshine Of My Life / Irene Kral
05. Love Is Stronger Than Pride / Lincoln Briney
06. Passion / Johan Christher Schutz
07. Summer Samba / Anne Thomas
08. Long Time No See / Helen Sheppard
09. Heartbeats / Jose Gonzalez
10. Like A Lover / Carla Cook
11. Two Kites / Jo & Tuco
12. All The Things You Are / Peter Fessler
13. Incompatibilidade De Genios / The Diane Marino Quartet
14. Dangerous / Sweetmouth
15. Stormy Weather / Liz Fletcher
16. By Your Side / Carla with Akio
17. Comme D'habitude / Claire Chevalier
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