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1月23日 ── 橋本徹のコンピ&DJ情報
ようやく新年会ラッシュを抜けたところで、僕が選曲したコンピレイションの今年最初のリリースを迎えました。『Boston Jazz Salon〜Fall in Love with Storyville』は日本の誇る独立ジャズ・レーベル、ミューザックの福井亮司ディレクターと昨年の秋に好評を博した『Speak Low 22:40〜Moonglow Jazztime Venue』の打ち上げの席で、次はストーリーヴィルの音源で、という話になり、それならウィンター・シーズンに心暖まる、ヴァレンタイン・ギフトにもお薦めのラヴ・ソングのジャズを集めてみては、となったのが企画の発端。ストーリーヴィルを設立したジョージ・ウィンと言えば、僕の大好きな映画「真夏の夜のジャズ」でお馴染みのニューポート・ジャズ・フェスティヴァルの立役者でもあるし、ボストンには行ったことはないが、歴史が好きだった僕は小学生の頃から「ケネディの道」なんて本を読んでいたり、村上春樹さんが留学先のことを綴ったエッセイの情景描写などで(自叙伝的色彩の強い近刊「走ることについて語るときに僕が語ること」でも印象的でしたね)ニューイングランドの街並みには親近感を抱いていたこともあって、その制作にはとても文化的な好奇心をもって望めました。
“アイゼンハワーの昼寝”なんて言われた1950年代の豊かで幸福なアメリカ、心地よいリヴィングでアームチェアに腰かけて「LIFE」誌を読んでいるようなイメージが、ストーリーヴィルからは香り高く漂います。バート・ゴールドブラットによる陰影美に富んだこのレーベルのレコードのジャケット・デザインにたまらなく惹かれる僕は、今回アートワークにもとことんこだわり、epok菅谷晋一のセンスによってサロン感あふれる(そして恋の期待も不安も感じさせる)最高に素晴らしいものができあがったと思っています。選曲もジャッキー&ロイがハートの鼓動を伝えるスマートなユーモアに満ちたオープニングから、甘さとクールネスの絶妙なバランスに貫かれた一枚となりました。人気の女性ヴォーカルや“印象派ジャズ”とでも言うべき優美なテイストを主役にしながら、中間派の作品が古き佳きノスタルジックな雰囲気を醸し出す良いアクセントになっているところがセレクションの妙ですね。向田邦子さんのフェイヴァリットとして知られるミリー・ヴァーノンのあの曲も入ってますよ。
実はこのコンピに関しては後日談があって、先日ミューザックの新年会でお会いした、(タイプは違うが共に)泣く子も黙るジャズ評論界の巨匠、岩浪洋三・寺島靖国の両氏と話が盛り上がり、おふたりも寵愛するストーリーヴィルの編集盤をコンパイルして、パブリシティーも兼ねて僕も含めて来週ストーリーヴィルについての異色鼎談を行うことになったのです。今でこそジャズ評論の世界ほどどうしようもないものはない、と知ってしまいましたが、ジャズに関心を持ったばかりの大学生の頃は、寺島さんの「辛口JAZZノート」(でしたっけ?)の巻頭カラーを飾った美麗ジャケットを飽かずに眺めたり、古いレコードの裏スリーヴに日本語で直接印刷された岩浪さんのライナーを読んだりしていたので、やはりおふたりと話すのは感慨深く、新年会のときは僕の両親より歳上にも関わらず夜7時から深夜2時まで飲み続けて、「昔はジャズ喫茶のオヤジかモテたけど、今はディスク・ジョッキー(DJのことらしいです)がモテるんだろ?」とDJはモテると幻想を抱いているご両人が可笑しかったのですが(全然モテませんよ!)、来週はどうなることやら。エロは力なり、と力説する両氏のパワーの源を再び見せつけられることになるのか、性欲減退気味の僕は学ぶことが多そうです。2008年は春機発動(by山口瞳)と行きたいものですね。
そしてもう一枚、同日リリースとなったのが“フリー・ソウル×P&P”第2弾。長らくマニア受難だったP&Pとその系列レーベルの全体像が、輸入盤を通して徐々に明らかになってきたところでその決定版を、というのが趣旨で、第1弾はフリー・ソウルの王道を行くメロウかつダンサブルな作風にフォーカスしました。そして今回は特に、内容の充実度のみならず音源のレアリティーがとんでもないことになっています。アプレミディ・セレソン店長・武田の調べによれば、12インチのインターネット価格が25,000円クラスの音源が目白押し。ドナ・マッギーはシングル・ヴァージョンで、「Got To Get Your Love」はレア・ヴァージョンで、なんて冒頭の演出が霞むくらい、とりわけ中盤に配したオールド・スクール・パーティー・ラップ3曲は圧巻。これまでP&Pに対する再評価は、ディスコ・ダブの隆盛に端を発するハウス的な視線が優位だったが、ハーレム直送のストリートの熱気を封じ込めたこれらのサウンドを聴けば、シュガーヒルやエンジョイに勝るとも劣らないヒップホップ史に新たな1ページを刻むべきレーベルの実像が浮かび上がるはず。あのデニス・モブレー&フレッシュ・テイストによるスティーヴィー・ワンダー「迷信」のカヴァーを始め、ケブ・ダージに代表されるようなノーザン・ソウル〜ディープ・ファンク〜モダン・ソウル系のコレクターDJたちが血眼というストリート・ファンク群の輝きも圧倒的。後半に連なるアン・ヴォーグ以降の女性ヴォーカル・グループの名作の雛形になったような、オールド・スクールR&B〜プレ・ヒップホップ・ソウル的楽曲にも胸を締めつけられます。発売日の今夜さっそく、“フリー・ソウル×P&P”のリリースを記念して、3/1にFree Soul Undergroundをやりましょう、と大阪から電話があったのも嬉しかったです。
追記:近々の東京でのDJスケジュールもお知らせしておきます。2/1に代官山のAIR & FRAMESで行われる、マイクロソフト社が主催する「Microsoft Office 2008 for Mac」というソフトのリリース・パーティーで、ラウンジDJを担当します。佐藤可士和さんとTOMATOの長谷川踏太くんによるヴィデオ・インスタレイションの展示もあるそうなので、楽しみにしています。
そして2/14のヴァレンタイン・デイには、丸の内のMARUNOUCHI CAFE倶楽部21号館で「Valentine with Bacharach」と題したパーティーでDJをするのが今からとても楽しみ。80歳のご高齢なので保証はできないという話ですが、最後の来日公演となる御大バート・バカラックとご対面、というようなスウィート・サプライズも期待せずにはいられません。皆さんもぜひ、胸を高鳴らせてお集まりください。
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1月6日 ── 橋本徹の年始パーティー情報
新しい年が始まりましたね。昨夜は僕も新年会で、吉本宏・中島ノブユキ・瀬葉淳 (Nujabes) と初痛飲。やっと今アルコールが抜けてきたところですが、今年も音楽的にはおもしろい年になりそうな予感を抱くことができました。
正月休みは駒沢の実家に帰って、ラグビー/サッカー/駅伝など。駅伝のTV中継を観ていて、何だかUSENのアプレミディ・チャンネルみたいだな、と思いました。好調な人もそうでない人も、年齢や経験も違う、実力も潜在能力も様々な人が、同じ思いを託してベストを尽くし、ひとつのタスキをつないでいく。それぞれが少しでも手を抜いたら、そのまま結果に出てしまう。襟を正される思いで「音楽のある風景」を読み返したら、この本自体が駅伝のようでした。
1/3の夕方、やはりTVで映画「世界の中心で、愛をさけぶ」を観てから渋谷に戻りましたが、初めて長澤まさみの魅力を知りましたね。不惑・未婚の僕でさえ(だからこそ)胸を焦がされる眩しいようなカットに。Nujabesいわく、あの映画が長澤まさみのピーク、ということでしたが(ちなみに彼が今かなり入れ込んでるのは夏帆という女優で、彼女とならメディアに出てもいい、とカワイイこと言ってました)。
そんな感じでその晩は、余韻に浸ってもう少しセンチな気分で読書タイム、と思ったのですが、この一冊というのが決まらず、送本されてきていた雑誌をぱらぱら。東京で生まれ育った人間にとって、媒体のTOKYO特集やトーキョー特集ほど違和感の残るものはないと思うけれど、いつも苛立ってばかりいてはオールドファッションドな男の戯言としか取られないから、今年は自重しようと思い直す。“大事なものと大事じゃないものが少しずつ見えてくるような/そんな気がするよ今”と歌うNONA REEVES郷太くんの家のすぐ横を歩いてきたばかりだったから。そしてリニューアルされた「BOON」のメロウ・ビーツについての僕のインタヴューが、プレッピー特集の中にあったことに気づいて驚くと同時に好感を持つ。メロウ・ビーツもクラシカルとモダン、ベイシックとアヴァンギャルド、トラディショナルとレジスタンスの融合と解釈してくれたのか。マイ・フェイヴァリット・スニーカーもこの2年半はトレトンだしね、と軽口を叩きたくなった。
そして翌日、冬休みに読もうと思っていた直枝政広さんが上梓した音楽エッセイ集「宇宙の柳、たましいの下着」を手にする。フレッド・ニール『ブリーカー&マクドゥガル』な表紙が何かを語りかける。駒沢ではディランやXTCやニール・ヤングを聴いてウォーミング・アップを済ませてきた。僕は大学に入ったばかりの頃、カーネーションの『ヤング・ワイズ・メン』を一生の名盤のように取りつかれたように聴いていて、東京でのライヴにはほとんどすべて通っていた(そんなバンドは他にオリジナル・ラヴぐらいしかなかった)。何となくポリスの「Walking On The Moon」(これをメロウ・ビーツに挙げたINO hidefumiは慧眼だと思う)をスピーカーの真ん中に座って静聴してから読み始める。そして一日で読み切ってしまった。音楽が好きなら誰でも書けるはずなのに、誰にも書けていないような一冊。やっぱりこの人もB型だな(大学生のときの僕の憧れ、小西・田島・直枝はみんなそう)。音楽に生きる、音楽と生きるとはこういうことだ。話が深くなりそうなので、この本についての感想は、またいつかどこかで書こう。
さて、それでは年始のパーティー情報を。旧年中はせわしなく、結局は年をまたいでしまったカフェ・アプレミディ8周年アニヴァーサリー。いよいよ新年会を兼ねて、1/11に開催します。ライヴやDJの出演メンバーなど、詳しい情報は[information]のページをチェックしてもらえたらと思いますが、いずれもアプレミディゆかりの僕が信頼する人たちばかり。皆さんもぜひご一緒にお祝いに駆けつけてくれたら、こんなに嬉しいことはありません。
そして翌週の1/18には、下北沢・CLUB Que(03-3412-9979)でジャム結成30周年を祝うトリビュート・イヴェント、その名も「ALL MOD CONS」が開かれて、ライヴを行うジャム・カヴァー・バンドのSETTING FUNSやN.G.THREEなどと共に、僕や山下洋もDJで出演します。僕はむしろスタイル・カウンシル25周年という感じでプレイしようかな、なんて思っていますが、どうなることやら。ジャム・ファン、ポール・ウェラー・ファン、モッドならずとも良い音楽を浴びに来てください。
追記:正月の間ずっと、12/28の『ジョビニアーナ〜愛と微笑みと花』リリース記念パーティーで南佳孝さんが披露してくれた、鈴木茂さんでお馴染みの「ソバカスのある少女」のメロディーが耳から離れませんでした。それから、やはりあのとき曽我部くんが1曲目で歌ってくれた、曽我部恵一ランデヴーバンド「女たち」(ジェシ・コリン・ヤングを彷佛とさせます)の“ぼくの好きな女たち”というリフレイン。マドラウンジでは曽我部くんと、この曲の俺ヴァージョンの歌詞を作ろうという話でも盛り上がりました。
しかし何と言っても、引き続きいちばんよく口ずさんでいたのは、「ゆうひが丘の総理大臣」の挿入歌「海を抱きしめて」。僕はなぜだか、去年訪れたイパネマ海岸のアルポアドールの岬を思い出してしまうのです。このTVドラマのDVDボックスを購入した高橋孝治から今日、直筆の歌詞がファックスで送られてきて涙・涙(新春早々オレも弱いね)。ここに掲載しますので、1/11のカフェ・アプレミディの8周年パーティーでは、山下洋の演奏で(彼も全話録画、ロケ地探訪までするほどのゆうひが丘ファナティック)、ぜひみんなで歌いましょう。

「海を抱きしめて」
作詞 山川啓介
作曲 筒美京平
歌  ソーリ

生まれて来なければよかったなんて
心がつぶやく日は
人ごみに背を向け会いに行くのさ
なつかしい海に
幼な児よりもひたむきに
遠い名前を叫んで
汗ばむ心 潮風が洗うにまかせれば
いつのまにか生きることがまた好きになるぼくだよ
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