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12月3日──橋本徹のコンピ情報/ライナーノーツ&ニュー・リリース〜リイシュー情報!

「星降る夜の音楽紀行」をテーマにした僕の最新コンピレイション『Good Mellows For Stardust Memory』が遂に完成しました。“Good Mellows”シリーズでは初めて、ウィンター・シーズンを意識した選曲ともなりましたので、ぜひ冬の夜にお聴きいただければと思います。リリースは12/21、クリスマス・プレゼントにもどうぞ。詳しい内容は、プレス・リリースおよび僕の書いたライナーをこの後に転載しておきますので、そちらをご覧ください。僕にとってセレクションが完璧なのは言うまでもありませんが、今回もFJDアートワークによるジャケットが本当に美しいです。そうそう、先日DJを務めた、由比ヶ浜に面したOcean Harvest COCOMOでの「FJD Exhibition "Color Sea" in KAMAKURA」が、とてもとても素敵だったことも付け加えておきましょう。

 

12/24にはアプレミディ・レコーズからコンピ『Music City Lovers』以来のリリースとなるジェイムス・ティルマン『Silk Noise Reflex』も登場します。ダウンロードとカセットのみで発表されていたNYの黒人シンガー・ソングライターによる名作で、年間ベスト級の呼び声も高いファースト・アルバムの世界初CD化です。ライナーを書いてもらったのは、アプレミディ・レコーズではデコーダーズとライアン・ドライヴァー・クインテットのときにも素晴らしい長文を寄せてくれた国分純平。「新しいフォーキー・ソウル」として絶賛されるジェイムス・ティルマンの魅力を、テリー・キャリアー〜ダニー・ハサウェイ〜ビル・ウィザース〜ジェシ・ボイキンス〜クリス・ターナー〜マイケル・キワヌカ、さらにはマーヴィン・ゲイやカエターノ・ヴェローゾを引き合いに出しながら、丁寧に説き明かしてくれます。さらに今回のCDは、2014年の『Shangri La EP』(僕はこの中から「Shangri La」を『Free Soul ~ 2010s Urban-Sweet』に、「And Then」を『Folky-Mellow FM 76.4』にすでに選出しているほど気に入っていて、ジャイルス・ピーターソンは『Brownswood Bubblers 11』に「Love Within」を収めていました)と2013年の「And Then」シングル・ヴァージョンの計5曲をボーナス・トラックとして収録した、キャリア完全版になっていますので、ぜひお楽しみに。

 

そしてこの秋に満を持して日本上陸を果たした、1億人以上のユーザーを抱え4,000万曲以上を聴くことのできる世界最大手のストリーミング配信Spotifyで、僕のプレイリストが新規制作分も含め続々と公開されています。自分の好きな曲を少しでも多くの方たちに日常的に楽しんでもらえたらと考えていますので、気軽にお聴きいただけたらとても嬉しいです。SONYのPlayStation Musicウェブサイト上に、僕のインタヴューやプレイリスト一覧などが掲載された“Free Soul / Cafe Apres-midi Special Site”も、まもなく開設されますので、使い勝手もさらに良くなっていくと思います。

 

前回のブログでお知らせした、ディスクユニオンの“橋本徹(SUBURBIA)キャンペーン”も、先月の吉祥寺店から今月はお茶の水駅前店に舞台を移して、キャラヴァン進行中です。カラー・カタログ「Compiled by Toru Hashimoto for Suburbia Factory 1992-2016」とセレクトCD-Rのプレゼント、お見逃しなく。そういえば、11/30にリリースされたばかりのオデッセイとジャクソン・シスターズの7インチの売れ行きが絶好調だそうで、嬉しいかぎり(“Good Mellows”もよろしくお願いします)。「Battened Ships」は僕にとってまさしくFree Soulの「夢をのせた船」で、「Our Lives Are Shaped By What We Love」を聴きながら「愛がくれたもの」をかみしめています。「I Believe In Miracles」は文字通り、信じることがもたらしてくれた奇跡、でした。

 

12月に入り、クリスマス・セレクションを仕上げたばかりのUSENとSpotifyでは、2016ベスト・セレクションの選曲がスタートしました。今月はDJパーティーやラジオ番組(そう、12/17土曜夜21時オンエアのJ-WAVE「MUSIC FLIGHT」に出演、そして選曲します)でも、今年のフェイヴァリット曲をかける機会がたくさんありそうです。また各メディアで大豊作だった一年を振り返って、僕の選んだベスト・アルバムも発表していきますので、ぜひチェックしてみてください。

 

2016年は人生の区切りを迎えて、単行本を作るつもりでいましたが、目の前の選曲ワークスに追われるうちに、気づけばいつの間にか師走となっていました。とりあえず、人生を振り返るのはもう少し歳を重ねてからにすることにして、今しばらくは現在進行形で走り続けたいと思います。

 


〜『Good Mellows For Stardust Memory』(12/21発売)プレス・リリースより〜

 

2015年からスタートし国内から海外まで広く大絶賛・大好評を博している"Good Mellows"シリーズに、待望の新作コンピ『Good Mellows For Stardust Memory』が登場!

 

今回も半分以上の曲が世界初CD化、橋本徹(SUBURBIA)が「星降る夜の音楽紀行」をテーマに珠玉のメロウ・ビーツ~バレアリック・アンビエント~チルアウト・ハウス~ジャジー・ブレイクス~アーバン・ビートダウンを83分以上にわたって紡いだ、絶品のメロウ・チルアウト・セレクションです!

 

恍惚のロマンティシズムと心震わせるビート、星くずの奏でるメロディー。かけがえのない思い出がフラッシュバックし、ホーギー・カーマイケルの書いた名スタンダード「Stardust」が脳裏に浮かぶような、甘美な瞬きにひとさじのセンティメントが入り混じる夢見心地の時間旅行へ!

 

Nujabesも一聴で惚れこんだスティーヴ・キューンの涙の名曲「The Meaning Of Love」をサンプルした極上のメロウ・ビーツ1に始まり、絶大な再評価と数多のニュー・リリースで2016年の裏MVPと言っていいイタリア・チルアウト・アンビエントの神様による最新バレアリック・メロウ2、今やバレアリック最重要人物となった絶好調International Feel主宰とスペイン・エクスペリメンタル・アンビエントの伝説Finis Africaeのマルチ奏者による柔らかでドリーミーなコラボ3が連なるオープニング。

 

そして井上薫があの「Aurora EP」以来14年ぶりに満を持して復活させたChari Chariの、4ADやECMを意識しつつフリオ・リャマサーレスの小説「狼たちの月」にインスパイアされた早くも世界初のCD化となる傑作4で、バレアリック・チルアウト風味のギター・リフトから心地よくハウスへと高揚していく。夜の帳に包まれていく美しい地中海の風景が浮かぶ、マルタ島の俊英によるロン・トレントにも通じるジャジー&バレアリックな哀愁アコースティック・ハウス5、注目レーベルDistant Hawaii第1弾として人気を呼んだデトロイト・フィールも香るメロウ&ウォームなアトモスフェリック・ハウス6と、とっておきの名品が続き、透明なロマンティシズムとセクシーなビートに揺れるもうひとつの"ウィッスル・ソング"と言うべき、フィンランドのミスター・フィンガーズとも絶賛された白夜のオーロラのように美しく幻想的なメロウ・チルアウト・ハウス7へ。

 

印象的なピアノとスウィンギー&コズミックなジャズ・ハウス・ブレイクスがパル・ジョーイを彷彿とさせるポーランド発ギリシャ経由の秘宝8、地中海コラボによる名作ピアノ・ハウスをアンドラス・フォックスがラリー・ハード×Mood Hutという感じの絶品のアーバン・ナイト・アンビエントに仕立てた9、セオ・パリッシュやムーディーマン始め幾多のDJにへヴィー・プレイされたエディンバラの名門Firecrackerの第1弾限定10インチとしてもはや語り草のマイルス・デイヴィスへオマージュを捧げた神秘的なディープ・ハウス10が、真夜中の特別な時間へと誘う。

 

UKバレアリック代表Claremont 56のRSD限定アナログだったスティーヴ・ライヒをも思わせるまどろみのアンビエント・バレアリカ11、西海岸バレアリックの雄Sentrall一番人気のフローティン・ミニマル×ソフト・サイケデリアな最高に心地よいチルアウト・ブレイクス12が夜明けの到来を告げ、ラストはホセ・パディーヤと並び称されるバレアリック・チルアウトの生き証人が孤高のロック詩人をヴォーカルに迎えたヴェルヴェット・アンダーグラウンド不朽の名曲のファンタスティック・アンビエント・カヴァー13で幕を閉じていく……。

 

“Sturdust  Memory”という選曲コンセプトを美しく視覚化した素晴らしいアートワークは、今回もNujabes/Calmなどのジャケットでも人気のFJDによる描き下ろしです!

 

V.A.『Good Mellows For Stardust Memory』(CD)
01. By And By / Nitsua
02. My Red Rose / Gigi Masin
03. Over At Dieter's Place (Luis Delgado Mix) / Mark Barrott
04. Luna de Lobos / Chari Chari
05. Paradise / Melchior Sultana
06. Waiting / Hidden Spheres
07. Love Story / Freestyle Man
08. Lost Tape / Mutual Attraction 
09. Yo House (Andras Fox Remix) / Deep88 & Melchior Sultana
10. Miles Away / Linkwood Family 
11. Tropic Of Capricorn / Oma & Amberflame
12. Sunsat / Rollmottle 
13. Sunday Morning / Chris Coco feat. Nick Cave

 

V.A.『Good Mellows For Stardust Memory EP』(レコード)
A1. By And By / Nitsua 
A2. Paradise / Melchior Sultana
A3. Sunsat / Rollmottle 
B1. Love Story / Freestyle Man 
B2. Yo House (Andras Fox Remix) / Deep88 & Melchior Sultana 
B3. Sunday Morning / Chris Coco feat. Nick Cave

 


『Good Mellows For Stardust Memory』ライナー(橋本徹)

 

2015年春の『Good Mellows For Seaside Weekend』を皮切りに、その後も『Good Mellows For Sunset Feeling』『Good Mellows For Moonlight Rendezvous』『Cantoma For Good Mellows』『Good Mellows For Sunrise Dreaming』『Good Mellows For Sunlight Breezin'』とご好評をいただき、順調にリリースを重ねてきたSuburbia Recordsの“Good Mellows”シリーズ。その最新作は「星降る夜の音楽紀行」をテーマに、珠玉のメロウ・ビーツ〜バレアリック・アンビエント〜チルアウト・ハウス〜ジャジー・ブレイクス〜アーバン・ビートダウンを83分以上にわたって紡いだ『Good Mellows For Stardust Memory』。初めてウィンター・シーズンというリスニング・シチュエイションも意識した、身も心もじんわりと温もりを帯びていくような選曲になった。

 

それは恍惚のロマンティシズムと胸を震わせるビート、星くずの奏でるメロディー。かけがえのない思い出がフラッシュバックし、ホーギー・カーマイケルの書いた名スタンダード「Stardust」が脳裏に浮かぶような、甘美な瞬きにひとさじのセンティメントが滲む夢見心地の時間旅行だ。

 

故Nujabesも一聴して惚れこんだ、Nitsuaによる極上のメロウ・ビーツ「By And By」でコンピレイションの幕が開く。胸を打つサンプルは、僕が『Jazz Supreme ~ Fender Rhodes Prayer』に収めたスティーヴ・キューンの涙の名曲「The Meaning Of Love」(カーリン・クロッグによる名カヴァーも『Free Soul meets P-VINE』のエンディングに)。

 

絶大な再評価と数多のリリースで2016年の裏MVPと言っていいイタリア・チルアウト・アンビエントの神様ジジ・マシンの、48ページにおよぶアートブック(詩集+写真集)付きだった限定250枚の最新アルバム『Plays Hazkara』から、至高のバレアリック・メロウ「My Red Rose」が続く。彼が脚光を浴びるきっかけになった、トゥー・ロココ・ロット〜ビョーク〜Nujabesなどにサンプリングされた人気曲「Clouds」は、昨年『Good Mellows For Sunset Feeling』に収録され、幻の名盤としてコレクター/マニア垂涎だった1986年のファースト・アルバム『Wind』は、今年Suburbia Recordsから8曲のボーナス・トラック入りで世界初CD化された。

 

続いても“Good Mellows”シリーズの常連、絶好調International Feelを主宰し、今やバレアリック最重要人物と言えるマーク・バロットの登場。この秋に発表されたばかりのEP『Remixes From An Island』からいち早くエントリー(世界初CD化)させてもらったのは、スペイン・エクスペリメンタル・アンビエントの伝説Finis Africaeのマルチ奏者ルイス・デルガドとの、まさに奇跡のコラボレイション。今夏のセカンド・アルバム『Sketches From An Island 2』の中でも特に気に入っていた「Over At Dieter's Place」が、柔らかでドリーミーなリミックス・ヴァージョンに仕立てられている。

 

そして井上薫があの『Aurora EP』以来14年ぶりに満を持して復活させたChari Chariの最新アナログ盤から「Luna de Lobos」を。フリオ・リャマサーレスの小説「狼たちの月」にインスパイアされ、4ADやECMを意識したという、早くも世界初のCD化となる紛れもない傑作だ。ビートとエキゾティシズムが融解するChari Chariらしい作風で、バレアリック・チルアウト風味のギター・リフトから心地よくハウスへと高揚していく。

 

続いては、マルタ島の俊英Melchior Sultanaによる、Jus-Ed主宰Underground Quality経由の素晴らしい2015年作、その名も『Mediterran Album』のトップを飾ったマイ・フェイヴァリット「Paradise」。夜の帳に包まれていく美しい地中海の風景が浮かぶ、ロン・トレントにも通じるようなジャジーでバレアリックな哀愁アコースティック・ハウス名品だ。

 

次のHidden SpheresがLobster Theremin傘下の注目レーベルDistant Hawaii第1弾として放った「Waiting」(『Good Mellows For Sunlight Breezin'』に選んだDJ Sonikkuの「On The Rocks」はその第2弾)への流れは、実際のDJプレイでも何度か体験したが、抜群の相性を示していると思う。身を委ねたくなる暖かなビートとメロディー・ライン、デトロイト・フィールも香るメロウ&ウォームなとっておきのアトモスフェリック・ハウスだ。

 

DJ Sasse名義でも知られる、北欧のラリー・ハードことFreestyle Manの「Love Story」は、今回の選曲の象徴と言ってもいいかもしれない。フィンランドのミスター・フィンガーズとも絶賛された、白夜のオーロラのように美しく幻想的な1997年のメロウ・チルアウト・ハウス名作だ。フィンガーズ・インクの「Can You Feel It」を彷彿させるような流麗なサウンドと、どこかメランコリックな旋律、透明なロマンティシズムとセクシーなビートに揺れる、もうひとつの“ウィッスル・ソング”と言うべき至上の逸品。このPuuからの12インチは、A面の「Que Domingo Inquieto」も、ロフト・クラシックとして名高いウォー「Flying Machine」を礎にヴィブラフォン&フルートも印象的な絶品のミッドナイト・ジャジー・ハウスで、僕はかつてはこちらをヘヴィー・プレイしていた。

 

続いてもパル・ジョーイを思わせるアーリー・ハウス的な風合いをもつ、Mutual Attractionによるスウィンギーなジャジー・ブレイクス「Lost Tape」。タフで粗い快感を宿したハイハットに“ジムノペディ的”なピアノのメランコリー、コズミックなシンセ・ワークが個性的で、ポーランド発ギリシャNous経由の、言わば秘宝。ホワイト・レーベルにハンド・スタンプが押されただけの2015年のショウケースEP『Ethos Series 2』に収められていたが、多くのDJが探し求めるようになったのは、一度目にしたら忘れられないMVの影響も大きいだろう。

 

さらに、『Good Mellows For Sunrise Dreaming』にやはりMVも素晴らしい「Harmony」をセレクトしたイタリアのDeep88と、前述のMelchior Sultanaとの地中海コンビによる名ピアノ・ハウス「Yo House」の、完璧なビートダウン・リミックスが続く。手がけているのは“Good Mellows”シリーズには欠かせない存在、Deep88と同じくヴィンテージ・ドラムマシン・フリークとしても信頼の厚いメルボルンの若き天才アンドラス・フォックス。アナログ・ヴィンテージの暖かい質感を大切にヴィブラフォンもしっとり響かせるラウンジーなナイト・アンビエント・タッチは、アーバン&アトモスフェリックの極みで、ラリー・ハード×Mood Hutという讃辞を贈りたくなる。この秀逸トラックをB面に収めた12Recordsの12インチは、Dream 2 Scienceが「Nightwave」をリミックスしたA面も要注意。

 

セオ・パリッシュやムーディーマン始め幾多のDJにヘヴィー・プレイされたことでも名高いLinkwood Family「Miles Away」は、真夜中の特別な時間へと誘ってくれるマイルス・デイヴィスへオマージュを捧げた神秘的なディープ・ハウス。Joseph Malikのソウルフルなヴォーカルと厳かなミュート・ホーンが夜のしじまに木霊する。エディンバラの名門ヴァイナル・レーベルFirecracker第1弾だった、この2004年の限定500枚10インチはもはや語り草で、それぞれマーヴィン・ゲイ/ロニー・リストン・スミスをリワークしたB面の2曲、Fudge Fingas「Gettin' Togetha」とLinkwood「Fate」も最高だ。

 

UKモダン・バレアリック筆頭レーベルと言っても過言ではない、Muddことポール・マーフィー主宰Claremont 56から、この春RSD限定の片面プレス12インチ(ホワイト・カラー・ヴァイナル)として発表されたOma & Amberflameの「Tropic Of Capricorn」は、まどろみと瞑想のチルアウト・バレアリカ。鳥のさえずりと虫の声のアンビエンスに包まれ、スティーヴ・ライヒをも思わせるミニマルなフィーリングと中毒的なベース・ラインが、じわじわと音の桃源郷へと導く。

 

そして夜明けの到来を告げるのは、ウエスト・コースト・バレアリックを代表するレーベルSentrallの一番人気、Rollmottleによる2002年作の夢見心地のチルアウト・ブレイクス「Sunsat」。フローティン・ミニマル×ニュー・エイジ・アンビエント×ソフト・サイケデリアな感覚が最高に心地よい、魔性とエヴァーグリーンな輝きが同居する恍惚のトラックだ。

 

ラストはホセ・パディーヤと並び称されるチルアウト・シーンの誉れ高きキー・パーソン、バレアリックなジムノペディストと呼びたいクリス・ココが、孤高のロック詩人ニック・ケイヴをヴォーカルに迎えたヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコの不朽の名曲「Sunday Morning」。これもまた鳥のさえずりの至福のアンビエンス、そして何より深く胸に沁み入る歌声が耳に残る、メランコリックかつファンタスティックなカヴァー。実はこの秋、クリス・ココが“Good Mellows”とぜひコラボレイトしたいとカフェ・アプレミディを訪ねてきてくれ、僕はその場で即座にこの曲をライセンス・リクエストしたのだった。ダンス・ミュージックではないが、週末のパーティーのアフター・アワーズ最後の一曲としてスピンしたくて、アナログEPにも収録させてもらった。

 

追記:
コンピCD『Good Mellows For Stardust Memory』の中から、その世界観を大切にしながら特に入手困難だったりDJプレイしたいと感じた音源を選りすぐった、6曲入りのアナログEPもリリースされますので(僕はFJDによる美しいアートワークのジャケットを部屋に飾るのも楽しみです)、そちらもぜひお楽しみください。

 


James Tillman『Silk Noise Reflex』ライナー(国分純平)

 

テリー・キャリアーとダニー・ハサウェイとビル・ウィザーズを足して、ジェシ・ボイキンス3世とクリス・ターナーとマイケル・キワヌーカもさらに足して……2014年に初めてジェイムス・ティルマンを聴いた僕は、その印象をこう書いた。歴代の名ソウル・シンガーから気鋭の若手まで、並べた名前を改めて見るとやや大げさだった気もするのだけれど、それだけ彼の音楽に出会ったことに興奮し、多くの人に聴いてほしいという気持ちがあったのだった。もちろん、上の名前を見て惹かれて聴いても期待外れに終わらないことはわかっていたし、何より、ティルマンのデビュー曲「And Then」のMVを見てほしい。誰もがそんな気になるんじゃないだろうか。

 

セピア調の映像で心地好く色落ちたニューヨークの風景。ショート・ドレッドと洒落た眼鏡のインテリ風の風貌。そして、温かなジェントリー・ヴォイスとエレガントなストリングスが響く穏やかなフォーキー・ソウル。「And Then」を包み込むノスタルジックなロマンティシズムに浸っていると、都会的な洗練と人肌の温もりを併せ持ったソウル・ミュージックの先達が次々と浮かんでくるのだが、そんなソウル・シンガーのひとり、マーヴィン・ゲイとの出会いが、ティルマンが本格的にシンガーを志すようになったきっかけだという。

 

マーヴィン・ゲイといえば、言わずと知れた大スター。彼に影響を受けたシンガーは数知れず……というより、ほとんどのR&Bシンガーにとってマーヴィンはスペシャルな存在であると言っていいだろう。しかし、ティルマンの理由は少しユニークだ。それは、マーヴィン・ゲイが彼と同郷だということ。そして、マーヴィンと同じくらいシンガーとして影響を受けた人物にナット・キング・コールを挙げている。

 

ジェイムス・ティルマンは、米ワシントンDCの出身。アフリカ・バンバータからジョニ・ミッチェルまで、幅広いレコード・コレクションを持っていた音楽好きの両親の下、幼いころからさまざまな音楽に親しんでいたそう。そうした恵まれた環境に加え、多くの黒人アーティストと同様、教会での音楽体験や16歳まで9年間クラリネットを学んでいたというクラシックの素養まで、幅広いバックグラウンドを持っている。

 

マーヴィン・ゲイはそのなかでも特にお気に入りだったらしいのだが、マーヴィンが自分と同じワシントンDCの出身だと知ったことで、音楽の道へ進む想いを一層強くしたのだという。音楽的な影響はもちろん、同じ土地で生まれ育ち、シンガーとして成功を収めたマーヴィンの姿に、自分の未来を見たのだろう。そう聞くと、デビューEP『Shangri La EP』でティルマンが被っている赤いニット帽が、マーヴィンがよく身につけていた赤い帽子に見えてくる。

 

マーヴィン・ゲイとナット・キング・コールを並べていることもとても面白い。マーヴィンにとって、コールは憧れの歌手のひとりだったからだ。60年代、ソウル・シンガーとしてモータウンでヒットを放っていたマーヴィンだが、一方でナット・キング・コールのようなポピュラー歌手、ブロードウェイ・シンガーになる夢を持ち続け、実際にミュージカル・ナンバーのカヴァー・アルバムも折に触れて録音している。そうした志向は、作曲家としてはブラックスプロイテーションのサントラという機会を得た1972年の『Trouble Man』に、ヴォーカリストとしてはその前年の名作『What's Going On』の、あの語りかけるようなスタイルに結実したと僕は見ている。シャウトやフェイクを駆使したダイナミックなソウル・ミュージック的歌唱法に、親密さと洗練を。ティルマンの、ソウルフルだが極めてデリケイトな歌い口には、マーヴィンのそんな一面からの影響が聴いてとれる。

 

サウンド的にはフォーキー・ソウルというのが一番近いだろうか。実はここ数年、アコースティックなサウンドを聴かせるアフリカ系のシンガー・ソングライターが増えている。冒頭で挙げたマイケル・キワヌーカ、ボン・イヴェールに大きく影響されているモーゼス・サムニー、チャントやポエトリー・リーディングも交えた表現力豊かなラップを聴かせるロウリー、作品ごとに異なった顔を見せるカナダの奇才アン・ブロンド、ジンバブウェにルーツを持つイギリスのエスカなどなど。何かに根ざした“シーン”というよりは、さまざまなところから似た志向を持ったアーティストが同時発生的に現れたというべき“潮流”のようなものだが、ティルマンがデビューした2014年前後から、ビート中心のトレンドやインターネット以後の狂騒的な状況に反動するかのように、フォーキーな音が多く聞こえるようになってきた。ティルマンは、その象徴的なアーティストのひとりでもある。オーソドックスな弾き語りからエレクトロニクスなどを用いたエクスペリメンタルなものまで、この「新しいフォーキー・ソウル」の担い手たちの強みはさまざまだが、ティルマンの特徴はジャズとの接点にある。

 

マーヴィン・ゲイに自分を重ね、音楽の道を進むことに決めたティルマンは、当時通っていたヴァージニア大学を中退。ホセ・ジェイムスやビラル、ジェシ・ボイキンス3世も学んでいたニューヨークのニュー・スクール大学ジャズ・ヴォーカルのクラスに編入している。この決断について、家族や友人からは反対されたとも語っているが、同大学で培ったジャズ系の人脈が彼の音楽の大きなストロング・ポイントになっている。

 

ティルマンは大学在学中の2013年にデビュー曲「And Then」を発表。同曲は翌年にリリースしたデビューEP『Shangri La EP』にも収録されているが、キーボードのハビ・サンチアゴ、ベースのクリス・スミス、ドラムのオーウェン・エリクソンというニュー・スクール出身者が演奏を担うシングル・ヴァージョンは、まるでダニー・ハサウェイ『Live!』収録曲のようなクールなジャズ感覚に満ちている。ビート・メイカーとしての顔も持つサンチアゴは、アマウリー・アコスタ率いるラテン・ジャズ・バンドの(U)NITYや、DJ・ハリスンによるジャズ・ファンク・バンドのブッチャー・ブラウンといったジャズ界でも注目を集める人脈とも交流を持つ鍵盤奏者であり、クリス・スミスはホセ・ジェイムスやジェシ・フィッシャー、さらにはケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』にも参加してる若手ナンバー・ワンのベーシストのひとりだ。ティルマンはライヴではキューバ人サックス奏者のヨスヴァニー・テリーとも共演していたりするが、そうしたジャズ人脈との交流がティルマンの音楽にもたらしているものは大きいだろう。

 

R&B/ソウルのフィールドに軸足を置きつつ、ジャズ界隈とも親密なシンガーといえば、やはりニュー・スクール出身のクリス・ターナーが思い浮かぶ。ターナーはジェシ・ボイキンス3世の一派で活動しながら、ジャマイア・ウィリアムス率いるエリマージなどのジャズ・バンドとも懇意にしている男性シンガーで、2012年にはジャマイアやコーリー・キングらを演奏陣に迎え、セロニアス・モンクの曲に詞をつけた『The Monk Tape』もリリースしている。そんなターナーや、ベッカ・スティーヴンスのようなジャズ側からフォーキーな音を聴かせるシンガー・ソングライターを加えて眺めてみると、ティルマンの音楽は輪郭がより明確になるかもしれない。

 

「And Then」のシングル・ヴァージョンはニュー・スクールのジャズ系人脈によって録られているが、『Shangri La EP』の録音は何とブラジルで行っている。アメリカからはるか遠いブラジルまでわざわざ録音に行ったきっかけは、大学で友人になったブラジル出身のギタリスト、セルジオ・セイエグ。彼が本国のプロデューサーの友人であるニック・グレアム・スミスにデモ・テープを聴かせたことでブラジル録音が実現したらしい。このセルジオ・セイエグは2005年から活動しているサンパウロのバンド、ガロータス・スエーカスの元メンバーで、ガロータス・スエーカスはムタンチスのカヴァーもしているようなバンド。彼とニックによって、演奏陣にはソロとしても活躍するクルミンを始めとしたサンパウロのミュージシャンが揃えられ、録音に臨んだという。

 

ティルマンとブラジル、というのはやや意外な気もするが、実はティルマンはフェイヴァリット・アーティストのひとりにカエターノ・ヴェローゾを挙げている。その影響は、実際にブラジルで録音した『Shangri La EP』からはあまり感じられないが、同地での経験が彼を感化したのだろうか、むしろ今回のデビュー・フル・アルバム『Silk Noise Reflex』に強く表れている。

 

芳醇でリッチなソウル作品『Shangri La EP』から一転、『Silk Noise Reflex』の制作陣には、インディー・ロック界隈の人物が招かれている。ミキシングはデス・キャブ・フォー・キューティーなども手がけるボウ・ソレンソン。マスタリングはタオ&ミラやディアフーフのカルロス・アレドンド。そしてエグゼクティヴ・プロデューサーにはチューンヤーズのメリル・ガーバス。メリル・ガーバスといえばアフリカ音楽からパンクまでを飲み込んだハイブリッドなロックを聴かせるUSインディー屈指の才女であり、彼女たちのボーダーレスな感覚をティルマンは取り入れたかったのだろう。例えば「Rat Race」から聞こえてくる躍動的なビートに、その雑食性が端的に表れているが、アルバムを通して言えば、音響面の変化が大きい。

 

「Intrinsic Infinite」や「Death Of A Star」のスロウなピッチが醸すチルアウト感覚、「Ms. Urbane」で聴けるマーヴィンのような多重録音ヴォーカル、「Tabloid Theory」の幻想的に重ねられたエレピ、「Missed Encounters」のポリリズミックなアンサンブルと歌パートとのギャップのあるタイム感。音色の選択や空間系のエフェクト、余韻を生かした音響処理によって、アルバム全体に薄いヴェールがかかったような、淡い音像を獲得している。それはまさにタイトル通り、シルクのようにきめ細かいノイズが反射しあう繊細なサウンドであり、この音像こそ、インディー・ロックのプロダクションを取り入れた成果だと言えそうだが、それはカエターノ・ヴェローゾを筆頭としたトロピカリアのミュージシャンの、ソフトなサイケ感覚やフォーキーなアンビエンスと通じるものでもある。『Silk Noise Reflex』はこの音響感覚ゆえに、非常に現代的な歌モノ作品に仕上がっている。

 

70年代ニュー・ソウルの隠れた名盤のような『Shangri La EP』でデビューし、USインディーやブラジル音楽も取り入れた『Silk Noise Reflex』を完成させたティルマンは、今後どういう音楽を作っていくのだろう。本作の延長でさらにハイブリッドな音楽性を追求するかもしれないし、純粋なジャズ・ヴォーカル作品や素朴なフォーク・サウンドに一度立ち戻るかもしれない。まったく予想がつかないのだが、ひとまずは冒頭に羅列した名前にマーヴィン・ゲイとカエターノ・ヴェローゾを加えて、気長に待っていようと思う。どの方向に進んだとしても、きっと素晴らしい作品になるだろうから。

 

※アプレミディ・レコーズを主宰する橋本徹(SUBURBIA)が2014年に監修・選曲したコンピレイション『Free Soul 〜 2010s Urban-Sweet』と『Folky-Mellow FM 76.4』にジェイムス・ティルマンの「Shangri La」と「And Then」がそれぞれ収録されています。

 


01. Intrinsic Infinite     
02. Ms. Urbane     
03. Ms. Malaise     
04. Human Behavior     
05. Self Portrait of a New Yorker     
06. Tabloid Theory     
07. Rat Race     
08. Death of a Star     
09. Casual Encounters     
10. Missed Encounters
11. Love Within 〈taken from “Shangri La EP”〉
12. And Then 〈taken from “Shangri La EP”〉
13. Loved 〈taken from “Shangri La EP”〉
14. Shangri La 〈taken from “Shangri La EP”〉
15. And Then (Single Version) 〈taken from “And Then”〉

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