3月7日&3月16日&4月1日──橋本徹のコンピ情報/ライナーノーツ&“Good Mellows”リリース記念DJツアー情報!


2016年最初の僕が選曲したコンピレイションCDのリリースとなった『Ultimate Free Soul 90s』に(そしてわずか3日間で完売してしまった限定アナログ『Free Soul Original Love 90s ~ Special 7inch Box』にも)大きな反響をいただき、誠にありがとうございます。この時代に音楽に携わっていくうえで、とても大きな励みになっています。
今春にはSuburbia Recordsから『Good Mellows For Sunrise Dreaming』(4/20)、それにホセ・パディーヤと並ぶバレアリック・レジェンドCantomaのベスト盤『Cantoma For Good Mellows』と新作『Just Landed』(共に3/23)のリリースも控えています。そこでCantomaことフィル・マイソンを英国から招いて、4月にリリース記念DJツアーを行うことにしました。昨秋オーストラリアからアンドラス・フォックスを迎えたときにも増して、たくさんの日本を代表する素晴らしいDJたちも参加してくれますので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います!

※3/18に広島、3/19に岡山、4/16に北九州、4/17に福岡をDJで訪れます。今年は東京以外のいろいろな街でも、皆さんにお会いできたら嬉しいです!


“Good Mellows” Release Party with Cantoma

『Good Mellows For Sunrise Dreaming』『Cantoma For Good Mellows』リリース記念DJツアー
Guest DJ:Cantoma a.k.a. Phil Mison Host DJ:橋本徹(SUBURBIA)

4/14(木)19:30〜23:30 Cafe Apres-midi(渋谷)
DJ:Cantoma/橋本徹/NARU
4/15(金)22:00〜翌6:00 CIRCUS Tokyo(渋谷)
DJ:Cantoma/橋本徹/DJ YOGURT/Max Essa/Wataru Sakuraba/Jun Kitamura/Ken Hidaka/Sayuri/TOKI/maa/DJ Emerald/YUJI
4/19(火)19:00〜24:00 DOMMUNE(渋谷)
DJ:Cantoma/橋本徹/DJ NORI/井上薫/Max Essa/shiba@FreedomSunset/haraguchic/maa
4/20(水)21:00〜23:00 dublab.jp@Malmö(中目黒)
DJ:Cantoma/橋本徹
4/21(木)20:00〜24:00 TOWER REVOLVE PROJECT@kong tong(三宿)
DJ:Cantoma/橋本徹/Calm
4/22(金)19:00〜21:00 HMV record shop 渋谷
DJ:Cantoma/橋本徹/DJ SAGARAXX
4/22(金)20:30〜翌2:00 Cafe Apres-midi(渋谷)
DJ:Cantoma/橋本徹/TOJO/fumiko/haraguchic/taximaya
4/23(土)16:00〜22:00 Good Mellows(由比ヶ浜)
DJ:Cantoma/橋本徹/shiba@FreedomSunset(ライヴ)/haraguchic/maa/syncM
4/24(日)17:00〜24:00 CAY(青山)
DJ:Cantoma/橋本徹/Uyama Hiroto(ライヴ)/小林恭/近藤淳/青野賢一/長谷川賢司/Takahiro Haraguchi
4/26(火)19:30〜22:00 Brooklyn Parlor(新宿)
DJ:橋本徹 Special “Good Mellows” Set

Cantoma a.k.a. Phil Mison
イギリス出身のPhil Misonは、バレアリックとチルアウトのジャンルが産まれた1990年代初頭からそれらの音楽スタイルを推進し続ける草分け的なDJであり、世界中を駆けめぐる真のバレアリック・レジェンドである。
1991年にロンドンの名クラブ、Milk BarでDJキャリアをスタート、数年後に世界的に有名なイビサのクラブ、Cafe Del MarでJose Padillaのプレイを初めて聴き魅了され、師事する。その後Jose Padilla自身に招かれ、同クラブで彼は2年続けてレジデントDJを務め、独自のDJスタイルに磨きをかけトップDJの階段を駆け上がる。1995年に初のミックスCD『Chillout - The Album』を手がけてから、数多くのレーベルより計10枚以上のコンピレイションとミックスCDをリリースしている。
1990年代の後半には音楽制作を開始し、ソロ・プロジェクトCantomaのアルバムをこれまで計2枚発表、またDJ/プロデューサー、Pete HerbertとのReverso 68や、Ambalaという新名義等でも作品をリリースしている。特にCantoma名義で発表した2003年のMusic For Dreamsからのファースト・アルバム『Cantoma』や、 2010年に盟友Paul Murphyのレーベル、Leng Recordsから発表したセカンド・アルバム『Out Of Town』は、“バレアリックの金字塔”として絶賛された、まさにマスターピースといえる作品である。2015年にはその2枚をアナログで初リリース、レコードは市場から即座に姿を消し、その人気を裏付けた。そして、2016年春には6年ぶりの新作アルバム『Just Landed』をリリース、今年も世界中でのDJツアーが予定されている。

橋本徹(SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『フリー・ソウル』『メロウ・ビーツ』『アプレミディ』『ジャズ・シュプリーム』『音楽のある風景』『Good Mellows』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは290枚を越える。USENで音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作。著書に「Suburbia Suite」「公園通りみぎひだり」「公園通りの午後」「公園通りに吹く風は」「公園通りの春夏秋冬」などがある。


〜『Good Mellows For Sunrise Dreaming』(4/20発売予定)プレス・リリースより〜

2015年に大人気・大好評を博した“Good Mellows”シリーズに、待望の新作コンピ『Good Mellows For Sunrise Dreaming』が登場!
瑞々しいオーシャン・フィールやアトモスフェリックな麗しのサウンドスケープは健在、橋本徹(SUBURBIA)が心地よく甘美な至宝を選りすぐった至福のメロウ・チルアウト・セレクション!

“Good Mellows”最新コンピは、透明感あふれる優美なメロディーに柔らかな叙情あふれるアンビエント〜チルアウト・バレアリカ、幻想的でメロウ・ドリーミンなジャジー&ダビー・ビートダウン、爽快グルーヴィンでピースフルな至高のハウスにアフロ・スピリチュアルなオーガニック・グルーヴから絶品のメロウ・ビーツまで、80分以上にわたって選び抜かれたファンタスティックな名作が連なる(しかも全14曲中9曲が世界初CD化!)極上のメロウ・チルアウト決定版!

J・ディラ・トリビュートやビルド・アン・アーク周辺から世界へ羽ばたいた今をときめくミゲル・アトウッド・ファーガソンによるアンビエント名作,鯣蘋擇蠅法▲疋ゥ襯奪謄・コラム×ペンギン・カフェ×ブライアン・イーノなWooによる陽だまりラヴリーな口笛アンビエント・フォークトロニカ△悗離ープニング。Free Soulファンも歓喜のギター・カッティングが心地よいMusic From Memory〜Music For Dreamsバレアリック・メロウ・グルーヴい続き、夢幻の桃源郷へと誘う新旧イタリアのメロウ・フローティンな“ローファイ・ミスター・フィンガーズ”キΔ悄B森感あふれるハイライトへ向かいMusic For Dreamsが生んだ至福のバレアリック・ノーザン・ソウル最高峰Гら、アメリカ「Ventura Highway」×エリック・サティ「ジムノペディ」なジャネット傑作のナイス・カヴァー─究極のウエストコースト・バレアリック金字塔と展開。ノルウェイの至宝がジョー・クラウゼルや敏腕ジャズメンと奏でる天上の調べ、カリンバが印象的なアフロ・スピリチュアル・ディープ・ハウスの聖典、ドイツの名門Smallvilleの珠玉による夢見心地のチルアウト・ハウスが連なり、最後はブリストルの伝説的サウンドシステムThe Wild Bunchの要人によるピースフル&ビューティフルなアフロセントリック・ジャジー・ビートダウンから、Nujabesの遺志を継ぐUyama Hirotoの7インチ・オンリーだった一世一代の大名曲へという感動のエンディング!

※素晴らしいアートワークは今回も、Nujabes/Calmなどのジャケットでも人気のFJDが描き下ろしています!

01. Intro Eternity / Miguel Atwood-Ferguson
02. A Little Long Way / Woo
03. Brasil (Abel's Gavea Mix) / Dream Lovers
04. Never Stop Dreaming / DJ Pippi & Kenneth Bager
05. Harmony / Deep88
06. Illusions / Optik
07. I Hate Hate (Santiga Original Mix) / Razzy Bailey
08. Someone To Call My Lover / The Rests (feat. Carolyn Pennypacker Riggs)
09. Ultraviolet / Lord Of The Isles
10. Breed It / Bugge & Friends (feat. Erik Truffaz / Ilhan Ersahin / Joaquin Joe Claussell / Beady Belle / Torun Eriksen)
11. Tribes Of Chant Pt. (The Spirit World) (Tribes Reprise) / Anthony Nicholson presents Miquifaye
12. Aquarama / Moomin
13. Let The Children Play / DJ Nature
14. End Of The Road / Uyama Hiroto

※特にレコードが入手困難だったり、DJユースに向いた名作を選りすぐった、6曲入りのアナログEPも同時発売です!

A1. I Hate Hate (Santiga Original Mix) / Razzy Bailey
A2. Never Stop Dreaming / DJ Pippi & Kenneth Bager
A3. Illusions / Optik
B1. Ultraviolet / Lord Of The Isles
B2. Harmony / Deep88
B3. Tribes Of Chant Pt. (The Spirit World) (Tribes Reprise) / Anthony Nicholson presents Miquifaye


『Good Mellows For Sunrise Dreaming』ライナー(橋本徹)

2015年にリリースされた3枚『Good Mellows For Seaside Weekend』『Good Mellows For Sunset Feeling』『Good Mellows For Moonlight Rendezvous』が国内から海外まで幅広くご好評をいただき、2016年春にも単体アーティスト・コンピ第1弾となるバレアリック・レジェンドCantomaのベスト盤『Cantoma For Good Mellows』をお届けしたばかりのSuburbia Recordsの“Good Mellows”シリーズ、その最新オムニバス盤として満を持して完成したのが、この『Good Mellows For Sunrise Dreaming』だ。

まどろむような陽だまりのアンビエンスに麗しのサウンドスケープ。ピースフルな陽の光とメロウにそよぐ風、心地よく甘美にきらめく至宝が80分以上にわたって連なる、夢見心地のファンタスティックな音楽紀行。透明感あふれる優美なメロディーに柔らかな叙情あふれるアンビエント〜チルアウト・バレアリカ、幻想的でメロウ・ドリーミンなジャジー&ダビー・ビートダウン、爽快グルーヴィンな至高のハウスにアフロ・スピリチュアルなオーガニック・グルーヴから絶品のメロウ・ビーツまで、夢幻の桃源郷へと誘うプレミアムなメロウ・チルアウト・セレクションを楽しんでいただけたらと思う。

オープニングに置いたのは、ブレインフィーダーやブルーノートからのリリースも予定されているという、今をときめくアレンジャー/ヴィオラ奏者のミゲル・アトウッド・ファーガソン。個人的な出会いとなったのは、2009年のJ・ディラ追悼プロジェクト『Suite For Ma Dukes』で(トライブ・コールド・クエストへの提供曲をレクイエムとしてリメイクした収録作「Find A Way」は、今は亡き愛するアーティストたちに捧げたマイ・トリビュート・コンピ『Brother Where Are You』のオープニングにも収めた)、カルロス・ニーニョやフライング・ロータスの信頼も厚い。『Brother Where Are You』のアートワークも手がけてくれたFJDが描いた、このコンピレイションのジャケットのように穏やかな風景が浮かぶ「Intro Eternity」は、ringsから発表された初のアレンジメント・ワーク集『Library Selection』でも冒頭を飾った、さざ波や鳥のさえずりも聴こえてくるアンビエント名作で、音楽の桃源郷への入り口に相応しいだろう。当初はテリー・ライリーやスティーヴ・ライヒの影響を受けたDIYエレクトロニクスの偉人J. D. Emmanuelの「Sunrise On A Tibetan Hillside」を幕開きに考えていたが、曲目決定の直前でエントリー変更した。ドクター・ドレからレイ・チャールズまでと絡みながら、ジャズとクラシックを横断するミゲルの室内楽的作品では、カルテット・ファンタスティコ名義の2014年録音作『Music For Dreams』も推薦したい。

続く英国の宅録兄弟デュオWooは、ドゥルッティ・コラム×ペンギン・カフェ・オーケストラ×ブライアン・イーノ(あるいはクラスター)という趣きの、DIYニュー・ウェイヴ×アンビエント・フォークにしてポスト・パンク室内楽。ここに選んだ陽だまり口笛フォークトロニカ「A Little Long Way」は、1990年にマイナー・ニューエイジ・レーベルCloud Nine Musicから発表されていたカセット・オンリー・アルバムで(実際の録音は1970年代後半から1983年にかけてだという)、マニアの間では最高傑作と言われていた『Into The Heart Of Love』(タイトル曲もいい)が、カルト・リイシューを続けているEmotional Rescueから2014年に復刻された際に陽の目を見た曲で、曲数の多いCDのみに収録されていた(僕はシルクスクリーン・ジャケットに惹かれてLPも買ってしまったが)。柔らかな電子音と繊細なアコースティック楽器が紡ぎだす、彼らの世界観を象徴するようなハンドメイドの白日夢サウンドで、ゆらめくように記憶の揺らぎと優しいまどろみへと誘うドリーミン・チルアウト。ネオアコ前夜、チェリー・レッドのレーベル・サンプラーLP『Pillows & Prayers』のオープナーだったFive Or Sixの作品にもいくつか参加していたWooは、1982年のファースト『Whichever Way You Are Going, You Are Going Wrong』も2013年にEmotional Rescueから、1989年のセカンド『It's Cosy Inside』も2012年にDrag City傘下のYogaから再発されているし、2012年にはYogaからNite Jewelとのスプリット7インチ、2014年にはEmotional Rescueから未発表ヴァージョンを含む7インチ(「A Little Long Way」はこれのB面2曲目でも聴ける)も発表されているので、エレクトロニカ/ジャズ/フォーク/アンビエント/エクスペリメンタル/サイケデリック/ダブ/ニューエイジ/音響派/インディー・ポップなどがないまぜになった、その早すぎたかもしれない音楽性に触れてみてほしい。

そして次第に“Good Mellows”らしさを増していき、アコースティック・ギターのカッティングが心地よく胸に沁み入る、極上のチルアウト・バレアリカを。Coyote主宰Is It Balearic?傘下のUberレーベルより、2015年に彗星のごとく現れたドリーム・ラヴァーズの「Brasil」。“Good Mellows”シリーズにはたびたび登場しているアムステルダムMusic From MemoryのAbelがリミックスを手がけ、フォーキーなオリジナルを涼しげなメロディーとほどよいダブワイズでシーサイド・フィール漂う美しいメロウ・ナンバーに仕上げている。ケネス・ベイガーが主宰するコペンハーゲンのMusic For Dreamsやポール・マーフィー主宰Claremont 56〜Lengのバレアリック・メロウな名作群が好きなら間違いないだろう。

さらに“Good Mellows”ど真ん中という感じのバレアリック・メロウ・グルーヴが続く。デンマークの名門Music For Dreamsを代表する傑作と言えるだろう、イビサのPachaで長きにわたりレジデントを務めリヴィング・レジェンドの称号が相応しいDJ Pippiと、レーベル主宰でありアーティスト/コンパイラーとしても夏の海辺を彩る数々の名作を生みだしてきたケネス・ベイガーによる、その名も「Never Stop Dreaming」というこのコンピレイションのためにあるようなコラボレイション曲。これもまた前曲に続いて、Free Soulファンなら誰もが気に入ってしまいそうな心地よいギター・カッティングと快いミディアムのグルーヴ。ケネス・ベイガーの選曲の中でも特に好きな、夕暮れの海をテーマにしたコンピ『Sunset Sessions #3 Part 2』に収録されていた。ふたりのコンビでは、2014年にやはりMusic For Dreamsからリリースされた、タンゴをバレアリックに仕立てた「La Sereneta」も印象的だった。

続いては、1989年のラリー・ハードと1991年のイタリアン・ハウスの親密性から生まれたような、最近注目のテイストであり潮流である“ローファイ・ミスター・フィンガーズ”とでも言うべきパートへ。ミスター・フィンガーズことラリー・ハードを思わせる浮遊感あふれるアンビエンスやシンセ・ワーク、アシッド・ベースやロウなビートが特徴的な作風は、Jack J(Mood Hutレーベル)やアンドラス・フォックスにも通じている。そんな“ローファイ・ミスター・フィンガーズ”の記念碑と言える名曲が、1994年のイタリア映画『Un bacio non uccide』の映像を使ったMVもとても素晴らしい、不思議な清涼感漂うバレアリック風味のアンビエント・ハウスDeep88「Harmony」。2012年のRichie Rich「Salsa House」のカヴァーを機に頭角を現したDeep88はイタリアのAlessandro Pasiniによるプロジェクトで、彼の主宰する12recordsはこのタイプの好作の宝庫。特にDeep88 & Melchior Sultana「Yo House」のアンドラス・フォックスによるリミックスは絶品のマイ・ミッドナイト・クラシックで、2015年のレーベル・サンプラーEP『House Culture』に収められているNasty Boy「Lonely」も、大好きなこの「Harmony」に続けてよくDJプレイしている。

次のOptik「Illusions」は、そのDeep88「Harmony」のプロトタイプと言える、メロウ・フローティンで幻想的な1991年のアンビエント・ディープ・ハウスで、言わば24年の時をこえた新旧イタリア“ローファイ・ミスター・フィンガーズ”リレー。しっとり柔らかな浮遊感のシンセ・コード、ヴァイブ風シンセの美しいメロディーがまとう、洗練(クールネス)と憂愁(ウォームネス)の絶妙なバランスが素晴らしい。リリース元はアーリー・90sのイタリアン・ハウス名門MBG International Recordsで、最近になってリマスタリングが施され正規復刻が実現した12インチ「Music Harmony And Rhythm」(ブルックリン・ドリームスの同名人気ブギー・クラシックのコーラス・フレーズが入っている)のインストゥルメンタル・パートを中心にしたB面2曲目がこの「Illusions」(同12インチはもう1曲の「A Gift」もいい感じの推薦盤)。Optikはレーベルの中心アーティストとしてMBG名義でも代表作『EP One』を残しているGiorgio Canepaによるプロジェクトだ。僕はこの曲を、イタリアン・ハウスの同じく名門、DFRに残されたルーツ・オブ・ディスコ・ダブという感じの1991年作、Q Base「The Sun (Il Sol)」(Deep Mix) と並べてクラブ・プレイすることも多い。

本来はここで、普段のDJで“ローファイ・ミスター・フィンガーズ”に混ぜてかけることも多い、ウクライナの雄Vakulaが2011年に変名で発表したVedomirの「Not Classic Square」(Version)を、と考えていたが、アナログ・オンリーに留めておきたいというアーティストの意向を汲んで断念し、コンピレイションは早くもハイライトへ向けて加速していく。アメリカのカントリー・シンガーRazzy Baileyによるノーザン・ソウル・タイプのフロア・キラー「I Hate Hate」を、2012年にコペンハーゲンのヴェテラン・プロデューサーSantigaがリワークした“バレアリック・ノーザン・ソウルの最高峰”は、再びデンマークのMusic For Dreamsから。力強いビートに、優雅なストリングス、ピースフルな子供コーラス。ポジティヴな高揚感と爽快グルーヴィンな多幸感あふれる、まさしくシンガロン・クラシックだ。DJでかければ必ずオーディエンスに笑顔の花が咲く。Music For Dreamsがチルアウトだけのレーベルではないと証明してくれるこの12インチ、もう片面はアメリカのシンガー・ソングライターShelley Shortの2008年作「Coo Coo Bird」をフォーキー・バレアリカに仕立てた必携盤だ。

この特大キラー・チューンを受けるタイミングで、2015年末にイギリスのインディー・レーベルTin Angel Recordsより発表されたジャネット・ジャクソン・トリビュート・アルバム『Dear Janet』から、アメリカ「Ventura Highway」×エリック・サティ「ジムノペディ」な名曲「Someone To Call My Lover」のThe Restsによるカヴァーを収録予定だったが、ライセンス契約交渉の途中で音信不通となってしまったそうで、残念ながら今回はパスして、スコットランドのLords Of The Isleが打ち立てたウエスト・コースト・バレアリックの輝かしい金字塔「Ultraviolet」へとたたみかけることに。DJ RiteshとTony Watsonが立ち上げたアメリカ西海岸の名門Adult Contemporaryの第2弾として2011年にリリースされ、フロア沸騰〜DJ垂涎ゆえにオリジナル12インチの価格が高騰し、リプレス/リイシューが繰り返された、いわくつきの作品。グルーヴィーな抜けのいいボトムとトリップ感抜群のダビーなサウンドに夢見心地のエフェクト、うねるロウに心地よく弾けるハイトーン・キー。まさに“紫外線”の名が似合う、ひたすら気持ちいい至福のサンシャイン・ディスコ・チューンだ。ちなみに12インチB面の“The Beat Broker Ultra Dub”も最高であることも付け加えよう。

続いては少しメロウアウトして、ちょっとエリック・サティを思わせるメランコリックなピアノから、ウエスト・コースト・ジャズ〜『Miles Ahead』的なきらめきのアンサンブルで飛翔していくブッゲ&フレンズの「Breed It」。雄大な河の流れを感じさせるオーガニックな音像に多彩なパーカッションの味つけも効いている。“The New Conception Of Jazz”を掲げるフューチャー・ジャズのカリスマ的存在にしてノルウェイの至宝ピアニスト、ブッゲ・ヴェッセルトフトの新機軸であり、自ら主宰するJazzlandにおけるインターナショナルなジャズ×エレクトロニクスの結実だ。彼はヘンリク・シュワルツとのコラボ作も素晴らしかったが、今回の“フレンズ”も錚々たるメンバー。パーカッシヴなサウンドの肝は、スピリチュアル・ハウスの神様にして“Good Mellows”シリーズでもお馴染みのジョー・クラウゼル。フランスの先鋭的トランペッター、エリック・トラファズに、ワックス・ポエティックの中核をなすテナー・サックス奏者、イルハン・エルシャヒン。最近リリースされたムーディーマンによるコンピ『DJ-Kicks』に2003年の涙の名作「When My Anger Starts To Cry」が入っていて感激したビーディー・ベルは、Jazzlandを代表する女性シンガー(Beate S. Lech)&バンドの人気ユニット。やはりJazzlandからリリースを重ねているノルウェイ出身の女性ヴォーカリスト、トルン・エリクセンも集っている。

次もジョー・クラウゼルとの交流が深く、作風的にも通じるテイストが感じられる、シカゴのディープ・ハウスをロン・トレントやグレン・アンダーグラウンドと共に牽引するプロデューサー/DJ、アンソニー・ニコルソン。アフロ・ディープでスピリチュアルな彼の漆黒のサウンドは、盟友ロン・トレントとのUrban Sound Gallery(USG)でも広く知られているだろうが、彼の率いるMiquifaye名義のこの「Tribes Of Chant Pt. (The Spirit World)」は僕には特別。2005年に12インチが出た、カリンバと女声チャントが印象深いファンタスティックなアフロ・スピリチュアル・ディープ・ハウスで、特に今回収めた“Tribes Reprise”はとっておきのヴァージョン。リリースから10年以上を経た今もなお、DJ用のレコード・バッグに入り続けている(最近12インチのB面2曲目をかけることが多いのは僕だけだろうか)。Anthony Nicholson / William Kurk & The Miquifaye Allstars名義によるハービー・ハンコック「Tell Me A Bedtime Story」のアーバン・リワークも、かつてよくDJプレイしていた。

そしてここで、The Restsによるジャネット・カヴァーが抜けた代わりに、急遽エントリーすることになったデクスター・ストーリーの登場。マスタリング当日、アーティスト本人の協力もあって、たった半日の間にライセンス許可が下りたことに、心から感謝したい。アフロ・ジャズの復刻で知られるイギリスのレーベルSoundwayから2015年に発表された、ムラトゥ・アスタトゥケなどで知られるエチオピア(東アフリカ)音楽に接近した最新アルバム『Wondem』(前作に続きビルド・アン・アークのカルロス・ニーニョが共同プロデュース、ミゲル・アトウッド・ファーガソンやマーク・ド・クライヴ・ロウも参加)のリード・トラックだった「Eastern Prayer」は、アンソニー・ヴァラデスが監督したPVも良くて、スティールパンも最高な大好きな曲(2015マイ・ベスト・ソング10にも選んだ)。フィーチャーされている女性ヴォーカルは、ソロ作はもちろんディーゴやマーク・ド・クライヴ・ロウへの客演、モッキー来日公演への帯同も忘れがたいニア・アンドリュース。デクスター自身、カマシ・ワシントンなども絡むLAのエチオ・ジャズ・プロジェクトEthio Caliに関わっていることも付け加えておこう。ビルド・アン・アークへの合流やカルロス・ニーニョとのライフ・フォース・トリオなどでその名を気にするようになった彼は、フライング・ロータス/dublab/ロウ・エンド・セオリー周辺との交流も深く、豊かな西海岸の音楽的土壌に育まれた信頼できるプロデューサー/コンポーザー/マルチ・プレイヤー/シンガーで、オランダのKindred Spiritsから2012年にリリースされたファースト『Seasons』も僕の大のフェイヴァリット。ミゲル・アトウッド・ファーガソン/ドゥワイト・トリブル/ギャビー・ヘルナンデスらがゲスト参加し、ソウル〜ジャズ〜ファンクを軽やかに横断しながら彩り豊かに融合している名盤で、21世紀のチャールズ・ステップニー・サウンドと言いたくなるスティールパンの響きも心地よいコズミック・メロウ・グルーヴ「Underway (Love Is...)」を、僕はコンピ『Twilight FM 79.4』に収録させてもらっている。

続いてはドイツの重要レーベルSmallvilleより、好リリースが続く中でもひときわ光っていた、メロウ・フローティンでディープ&メランコリックなチルアウト・ハウスを。淡くくぐもった柔らかみのある夢見心地のシンセとアシッド・ベース、ジャズの風味とクール&アブストラクトな響きは、ベルリンの気鋭プロデューサーMoominことSebastian Genzの真骨頂だ。この曲の入った12インチは、セオ・パリッシュらもスピンしてきたぺヴェン・エヴェレット「I Can't Believe I Loved Her」のMoominによるオフィシャル・リミックスも収めているが、彼は『Good Mellows For Sunset Feeling』にセレクトしたジジ・マシン「Clouds」をループした「A Day And A Night」やユセフ・ラティーフ「Love Theme From “The Robe”」を使った「Loop No.1」(どちらもNujabesのサンプル・ソースでもあるのは偶然ではないだろう)を筆頭に、2011年のファースト『The Story About You』から2016年最新セカンド『A Minor Thought』に至るまで、ジャズ〜ソウルの巧みなサンプリング・ワークが冴えるエレガントなディープ・ハウス名品を数多く残している。

そしてエンディングを前に、ブリストルの伝説的サウンド・システムで、マッシヴ・アタックの前身でもある(つまりUKソウル〜グラウンド・ビート/UKヒップホップ〜アブストラクトの流れを先導している)ワイルド・バンチの要人、DJ Miloがその名を変えたDJ Natureによる、ピースフルな子供のざわめき声やキーボード/カリンバの響きに暖かくも美しいサックスの音色が溶け合うアフロセントリック・ジャジー・ビートダウンの逸品を。2010年にNYのGolf Channelから「Everyone」で鮮やかに復活を遂げた彼は、ジャズ/ソウル/ディスコ/アフロ/ダブといった“黒い音”が有機的にミックスされた、デトロイト・ビートダウン勢とも共振する漆黒のロウなグルーヴを持ち味とし、2014年に日本のJazzy Sportより、この素晴らしい「Let The Children Play」を標題としたアルバムと2枚のアナログEPを発表した。その後リリースされた12インチ2枚+ミックスCD+Tシャツのボックス・セット『DJ Nature presents GROOVOTICA - Collection 1』も迷わず買ってしまったほど、僕はワイルド・バンチ以来20年以上の時を経ても、彼のファンであり続けている。

そしてそして、いよいよ迎える大団円、『Good Mellows For Sunrise Dreaming』のラストを飾るのは、もう何も言うことはない、まさに絶品のメロウ・ビーツ、Uyama Hirotoの「End Of The Road」。今は亡きNujabesの盟友であり音楽的パートナーだった彼は、その遺志を継ぐように今も誠実な活動を続け、自身の名義でも数知れない素晴らしい音楽を生み続けているが、中でもこれは一世一代の名曲だと思う。しかも7インチ・レコード・オンリーのリリースだったので、これが初のCD化。本人はミナスの素敵なアーティストの名を挙げて、「フラヴィオ・ヴェントゥリーニへのオマージュ」と照れながら語っていたが、僕にはただただ胸が詰まる感動の大名作、としか言えない。Uyama Hirotoの奏でる音にはいつも、Nujabesの繊細な心をもとらえた、真の意味でのスピリチュアリティーが宿っている。


『Cantoma For Good Mellows』ライナー(橋本徹)

2015年秋に、僕が監修するSuburbia Recordsで、Cantomaの3作目となるニュー・アルバム『Just Landed』をリリースできないか、と打診された。前2作を愛聴していた僕は、さっそく配給のディスクユニオンに相談すると、ミーティングで彼のベスト盤としてセレクトした“Good Mellows”コンピとの連動企画なら、とゴー・サインが出た。
イギリス出身のCantomaことフィル・マイソンは、地中海に浮かぶイビサ島でバレアリックとチルアウトというジャンルが育まれた1990年代初頭から、ホセ・パディーヤらと共にその音楽スタイルを推進し続ける草分け的存在で、世界中を駆けめぐる人気DJ。もちろん同時リリースとなる新作も素晴らしいが、名盤の誉れ高い『Cantoma』(2003/Music For Dreams)と『Out Of Town』(2010/Leng)、それにリミックスや12インチのみの音源、そして未発表新曲まで、自らも多くのコンピレイションやミックスCDを手がけている彼の輝かしい全キャリアから、映像美豊かで叙情性あふれる、心地よく胸を打つ切なくも美しい絶品トラックを厳選したのが、この『Cantoma For Good Mellows』だ。
Cantomaをリリースしてきたケネス・ベイガー(ケネス・ベイユー)主宰のMusic For Dreamsとポール・マーフィー主宰のClaremont 56〜Lengは、これまでのコンピレイションのライナーでも触れてきたように、“Good Mellows”の選曲にとってなくてはならない重要レーベル。今回もかけがえのない楽曲を快くライセンスしてくれたことに、心から感謝している。おかげで“Good Mellows”シリーズ初の単体アーティスト・コンピに相応しい、究極のバレアリック・メロウ・チルアウト・セレクションを実現することができた。
特にAmbala名義で今後リリースされる予定の、ヤコブ・グレヴィッシュのギターをフィーチャーした「Sol Serra」を収録できたのは嬉しい。琴線に触れ、心のひだにまで染みわたる、このコンピレイションの象徴とも言える名作だと思う。僕がDJでヘヴィー・プレイしてきた「Bill Morgan On The Organ」や「Maja」はもちろん、オープニングに置いたピースフルな2曲「Viusu」「Trees Of Highwood」などもフェイヴァリットだ。Lexx/Mudd(ポール・マーフィー)/Cosmodelicaによる秀逸なリミックス・ワークもお楽しみいただきたい。
“Good Mellows”ならではの、FJDによる描き下ろしの素晴らしいジャケットも、この音楽の湛える優しい情感や深みのある雰囲気を麗しく表現していて、やはり彼がアートワークを手がけるNujabesやCalm(そしてジョー・クラウゼルやホセ・パディーヤなど)を好きな音楽ファンには、とりわけ聴いてほしいと思わずにいられない。バレアリック・チルアウトの歴史をひもとくように、フィル・マイソンへのインタヴューも交えて、彼の歩みを愛情あふれる文章で紹介した日高健介によるライナーも、ぜひお読みいただけたらと思う。今春Cantomaを英国から招いて行う、“Good Mellows”リリース記念DJツアーも、今から楽しみでならない。
それでは、夢幻・至福の桃源郷へと誘う、全15曲82分27秒の音楽紀行をどうぞ。このCDが皆さんの人生の一場面に素敵な彩りを添え、大切な思い出のサウンドトラックとなることを願って。

追記:
コンピCD『Cantoma For Good Mellows』の中から、その世界観を大切にしながら特にDJユースに向いた音源を選りすぐった、6曲入りのアナログEPもリリースされますので、そちらもぜひお楽しみください。
 
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